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映画・演劇のレビュー

Axle『BANANA FISH』

2009-04-15 20:58:10 | 演劇
3時間に及ぶ大作である。だが、話の展開させ方がまずくて乗り切れない。こういう中劇場(シアタードラマシティ)での公演は見せ方が難しい。客席の遠さが作品を、しいてはドラマ自体をも遠いものにしてしまう。この空間を作品の力にしなくては成立しないのだが出来ていない。ここでは今回のように動きのあまりないお話主体の芝居はしんどい。それを無理して派手に見せようとしたのだが、アクションシーンも単調になり、徐々に退屈してくる。この話なら小劇場でのロングラン公演のほうがよかったのではないか、なんて思ってしまった。そんなことを思わせた時点でこれは失敗している。

 吉田秋生の長編コミックを原作にしたミステリ仕立てのドラマだが、複雑な話を単純な構成で組み立てた。その事自体には問題はない。だが、全体のメリハリに欠けるから、何を見せたかったのかわからなくなる。ババナ・フィッシュを巡る物語が立体的に作れない。様々な人々が入り乱れて巨大な組織による陰謀に巻き込まれていくという定番をたどるのだが、そこに緊張感がない。

 谷省吾さんや坂口修一さんというような関西の小劇場ではおなじみの役者たちが頑張って場を盛り上げようとオーバーアクトに走っているのだが、全体の流れの中で空回りしている。彼らの登場で客席は確かに沸くのだが、そこでしか反応できないって、どうよ、と思う。スト-リー部分と連動し、彼らがポイント、ポイントで笑わせることで、話に緩急が付いたならいいのだが、そうはいかない。単発の笑いはこの芝居を救わない。せっかく上手い役者を呼んで来たのだから、ただのコメディーリリーフでは惜しい。そこで弾みがついてお話の核心に向って流れていくような展開の妙が必要なのだ。作、演出の古谷光太郎さんは真面目で丁寧な見せ方をしているのだが、もう少しはったりのようなものが欲しい。主人公の2人が惹かれあうのはなぜなのか、そこにしっかりしたドラマがなくては芝居は弾まない。なんとなく惹かれあうだけではドラマにはならない。ニューヨークのストリート・キッズを束ねるアッシュ(柄谷吾史)が日本から来たカメラマンのアシスタントである少年(宮下雄也)に出会うことで何が動き出したのか、アッシュの中にある『何か』をきちんと描かないことにはこの芝居は意味をなさない。内面のドラマと派手なアクションが連動して初めて芝居としてのダイナミズムが生まれる。

 ただストーリーを追いかけるだけではだめだ。そんなこと重々わかっていたはずである。膨大な話をコンパクトにまとめるだけで精一杯になってしまったのか。それにしては3時間は長すぎる。この長さが可能ならばもっといろんなことが描けたはずなのだ。表面的なお話を追いかける必要はなかったはずだ。もっと大胆に全体を構成をして欲しかった。

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1 コメント

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同感です。 (じゅんじゅん)
2009-04-21 01:23:52
はじめまして。

以前はAxleのファンだったのですが
最近はAxleらしさを見失い迷走しているように感じ
Axleが向かう方向性であれば他のお芝居を観る方が満足するので
何作か前から観劇をしていませんでした。
今回、初演を観ていた事もあり興味もありましたが
私の中ではどんなに頑張っても小劇場向けのお芝居のAxleであり
やはり、中劇場や大劇場向けの演出お芝居がまだ出来ないと感じており
チケット代に値するものを観る事が出来ないような気がしてチケット購入していなかったのですが
招待で観劇出出来る事となり、少し期待をして行ったのですが。

こちらに書かれていらっしゃる事をそのまま感じました。

一言、小劇場でのロングラン公演のほうがよかったのではないか

という事です、初演はシアタープラッツ江坂で1週間ほどの公演で
やはり劇場が小さいながらの演出で小さいゆえにスピーディーに感じ
とても印象深かったのですが。

今回せっかくのシアタードラマシティーと喜んでいるにもかかわらず
小劇場の演出をそのまま持ってきた形のようになっていてやはり中劇場は・・・

と色々感じていました。
小劇場だから伝わってくる心情もやはり会場の広さからくるのか
伝わらずで結局面白い部分しか残らずで

そんな風に感じていたのは私だけかと思っていたところにこちらの感想に深く感動しました。

上手く言葉に出来ないのですが、同感です。
ありがとうございました。

長々と失礼いたしました。
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