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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『もっと超越した所へ。』

2022-10-23 09:54:12 | 映画

コロナ禍と本格的に向き合う小説や映画がようやくどんどん出始めてきた感じがする。これもそんな1作だ。4組の男女のラブストーリー。コロナ禍の「おうち時間」が描かれる。登場人物は(ほぼ)8人のみ。根本宗子による舞台劇の映画化。しかも2人単位での会話劇。描かれるのは4つの二人芝居なのだ。それが交互に描かれていく。同時多発の4つのお話。

現在(2020年)から始まり、過去に戻り、再び現在に。彼らの暮らす狭い部屋からほとんど出ない。4人の女の部屋に男たちがやってくる、というパターン。最初のカップルがシャッフルされて別の組み合わせになる。カップルは3人単位で交錯する。それってなんだかゲームかなんかのような感じ。4組のカップルがいたけど、4人の男たちが出ていき、そこに新たに4人の男が別の女のところに転がり込むというパターンなのだ。そして、ラストで再び4人の男たちは女たちからそれぞれの部屋を追い出されていく。おひとりで十分という話だったのか、と思う。

だけど、それでは終わらない。なんとクレジットが流れ始めたラストでまさかのどんでん返しが用意されている。ここには書かないけど、怒濤の展開である。ばかばかしいといえば、これほどバカはない。だけど、これくらいしなくてはダメだと彼女たちは思う。だから現実を超越するためにこんなまさかの展開を用意する。しかも、結構しつこい。マーベル映画にいつもお約束のようにあるような、取って付けたようなエピローグではなく、堂々とワンエピソードをど~んと展開して決着をつける。だけど、あれでいいのか、と言われると心許ない。あれでは結局は受け身のダメ男たちを受け入れるだけ。こんなオチでいいのか、とも思う。

出てくる男たちが4人ともまるでダメ男。こんな奴らと付き合う女のほうもダメ女だろ、と思う。だからまるで共感できない。でも、笑いながら「バカばっか、」と思い呆れて見ている。そんなふうにして2時間彼らと付き合う。くだらない、と思うのにスクリーンから目が離せないのは、僕たちだって彼らのようにくだらないことをして日々過ごしてるかもしれないという思いがどこかにあるからかもしれない。こいつらはアホだけど、そんな彼らが現状を乗り越えなんとかしようと努力している姿は見ていてなんだか愛おしいのだ。あのラストは決してハッピーエンドなんかではないけれど、とりあえず現状を「超越」しようとした結果の選択だ。よしとしよう。


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