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映画・演劇のレビュー

『ドラゴンタトゥーの女』

2012-03-01 22:18:14 | 映画
 よくぞ2時間38分にまとめ切った。これだけのボリューム、それも、はしょったりすることなく、ちゃんとタメは作ってある。ダイジェストにはならないのだ。主人公の2人が出会うまで、それぞれのエピソードがけっこう長い。だが、それも心地よい。悠々たるタッチで慌てることなく話を紡いでいく。でも、いつになったら2人の話が接点を持つことになるのかは気になる。それを心待ちにする。その時間がいい。堂々たる映画を見ている快感に身を任せる。そしてようやくである。彼が彼女を引っ張ってきて、2人でこの事件に挑むことになる。

 ここからはもの凄くテンポがよくなる。ジェットコースターに乗るようにして、40年前の謎の失踪が解き明かされていく。そして、事件の背後にある恐ろしい現実が徐々にあらわになっていくところなんてデビット・フィンチャーの独壇場だ。

 前作『ソーシャル・ネットワーク』では消化不良だった彼が、今回は水を得た魚のように生き生きした映画を見せてくれる。『セブン』の頃から、この手の映画は彼の専売特許で、こういう変態映画を取らせたら彼の右に出るものはない。自由自在に作品をドライブしていく。これでもか、これでもか、とグイグイ押してくる。快感である。だから、見終えたときにはおなかがいっぱいになっている。ほんとに、ぐったりした。面白いけど、疲れたぁ。

 なんとなく、昔懐かしい「金田一耕助もの」の映画を思い出したりもした。おどろおどろしい連続殺人事件が旧家を舞台に繰り広げられる市川 崑監督の例の奴、ね。主人公2人が謎を追って田舎の村にやってきて、そこで滞在する中で、不可解な連続殺人の謎を解き明かしていくからかなぁ。

 堂々たる本格ミステリーである。思わず、面白かったぁ、と声をあげてしまいそうになる傑作。映画としての感動とか、そんなことはさておき、これは上質のエンタテインメントとして完璧だ。そのことをまず第一に思う。それにしても、主人公の2人が素晴らしい。特に異様な姿で登場するタイトルロール、ドラゴンタトゥーの女、ルーニー・マーラのインパクトは強烈。彼女の存在がこの映画のすべてをリードする。

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