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映画・演劇のレビュー

劇団未来『真珠の首飾り』

2013-12-02 21:52:47 | 演劇
 ジェームス三木の台本を森本景文さんが再構成して1時間40分の作品に仕立てた。ボリュームのある長編をコンパクトに整理して見やすいものにして提示するって、簡単なことではない。しかも、これだけの内容の大作である。オリジナルのエッセンスを上手く抽出しなくては、ただのダイジェストになってしまうところだ。

 しかも、この作品の持つ重量感を損なうわけにはいかない。そのへんが難しい。今回、劇団未来はそんな困難に挑戦して、見事クリアした。これは決して低いハードルではなかったはずだ。それを軽やかに乗り越える。そして、作品自体は、とてもさわやかな感動を呼ぶ舞台になった。

 日本国憲法を作るために、アメリカ占領軍総司令部が立ち上げたプロジェクト。しかも、諸事情からもう時間がない。だから短時間でそれを成し遂げる。そんな難題に取り組んだ軍部、民間人の混成チームの戦いを描く壮大なドラマだ。芝居は密室での会話だけで作られる。どうしても変化のない単調な展開にならざるを得ない。にもかかわらず、テンポよく彼らのやり取りを見せることで、緊張感のあるドラマとして、成立させることに成功した。

 大胆な舞台美術が実に効果的だ。単調になりそうな内容を空間造形が引き締める。この空間があるから、作品は立ち上がるのだ。(キュビズムを意識して作ったらしい。)役者たちも、この群像劇の本質を理解して、目立つことなく、誠実に作品に貢献する。要するに、彼らはコマだ。だが、ただのコマではない。ひとりひとりが、この草案を支える重要で忠実なコマとなる。そのことを演じる役者たちも理解している、ということだ。誰かを主人公にして話が展開するわけではない。だからこそ、アンサンブルがちゃんとなされなくては、この作品は成立しないのだ。とても健闘している。

 来週この同じ作品を、今度は劇団きづがわが上演する。そちらは、どういう作品に仕上がっていることか、今からとても楽しみだ。


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