7歳の少女が父の誕生日に行く。それだけの一日。こんなにも何もない内容。しかも淡々とした描き方。これで映画として成立するのか、と思うくらいにさりげないスケッチだけで終わる。少女は主人公のはずなのに、あまり登場しない。
肝心の父は病気で一緒にはいない。ベッドにいて、会うことも叶わない。メキシコの新鋭リラ・アビレス監督作品。大胆すぎる。わざとイジワルするように少女を無視して話はドキュメンタリーのように描かれる。カメラから彼女は外される。
父親は余命いくばくもない。これが(たぶん)最期の誕生日になる。だから彼のために一族が一堂に介して彼の誕生日会を祝う。これはそんな一日の記録映像のような映画。そこに彼女もいる。母親に送り届けられて、父の住む彼の実家に向かうシーンから始まった。母は用事があって、彼女をひとり置いて去っていく。また、後から戻ってくるらしい。親戚だらけで、寂しくはないけど、父の部屋にはなかなか入れてもらえない。
ラストの誕生日パーティの盛り上がりの中、父はやっと登場する。みんなに支えられて。彼は彼女の父さんだけど、みんなの家族でもある。この一日が彼女の心に何を残すのか。映画は何も語らない。