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映画・演劇のレビュー

小路幸也『すべての神様の十月』

2015-01-01 22:17:53 | その他
まるでタイミングを合わせたように、満月動物園の死神シリーズ第1弾『ツキカゲノモリ』の直後からこの本を読み始めた。読むまでは、これが死神の話だなんて知らなかった。だから偶然だ。でも、思いもしないナイスタイミングである。しかも、内容も微妙にリンクする。なんか、神さまってきっといるんだな、と思わされる。

 これは短編集だ。6つの話からなる。死神、貧乏神、疫病神と続く。満月動物園を見た時に気付いたことだが、戒田さんはこの話(もちろん、『ツキカゲノモリ』のことだ)を敢えて作品世界を狭くして作っているのではないか、と思った。この小説を読みながら、そんなことを考えた。そう言えば伊坂幸太郎の『死神の精度』から始まるシリーズもあった、なんてことも。

 戒田さんがしたいことは、ある種の制約の中で、ちゃんとしたラブストーリーを作ることだ。死神という制約を設けて、生きることの痛みを綴る。死神自体は仕掛けでしかない。彼女は見守ることしかできない、というのもよくあるパターンなのだが、(『ゴースト ニューヨークの幻』や『トワイライト ささらさや』なんていう映画もそうだ)それをリアルに見せるのではなく、象徴的な見せ方をする。だから前回、相内さんの映像との相性がいいと書いた。お話自体は単純なのだが、その中に込められたものこそが大切なのだ。死神自身をどうこうという話ではない。

 それに対して小路さんは死神という存在自身に力点を置く。死神から始まる6人(?)の神さまの特質を生かして、ドラマの中に盛り込む。もちろん、お話の面白さも追求するけど、僕たちが抱くそれぞれの神さまのイメージを上手く使いながら、それを微妙なライン裏切る作劇が素晴らしい。

憎たらしいくらいにお話の作り方が上手いのだ。ちゃんと仕掛け(神様、ね)を生かす。ほっこりさせる。読みやすい。3拍子揃っている。軽い読み物でしかないのだが、読んでいて安心できる。しかも、心地よい。

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