習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『Flowers』

2010-06-16 21:00:15 | 映画
 3世代にわたる女たちの姿を描く女性大作。6人の今をときめく女優たちが競演した資生堂のコマーシャルの映画化。昭和11年、昭和40年前後、平成21年、という3つの時代を背景にして、ある家族の歴史の断片が1本の映画になって綴られていくことになる。

 映画は齢90歳を越えた祖母の死から始まり、再び彼女の葬儀で終わる。その祖母がまだ10代の頃を蒼井優が演じる。結婚を明日に控えた日と当日の2日間、揺れる心が描かれる。会ったこともない男のもとに嫁いでいく不安。父との確執。それがモノクロの映像で描かれる。なんだか「いかにも」な展開である。

 そこに5人の女たちのエピソードが絡まってくる。蒼井の三人の娘を竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵が演じる。そして仲間の娘を鈴木京香と広末涼子が演じる。そして、この2世代によるドラマの方も、なんだか「いかにも」な話で、この映画は映画であることよりもなんだかパターンを作って見せただけのような印象を与える。もう少し意外性のある展開は出来ないものか、と思う。だが、できないのだ。これは観客の要請でもある。どこにでもある普通の女たちの、誰もが心当たりのあるようなドラマ。それを観客は期待している。そういう意味ではこれは成功しているのかもしれない。

 一応1本の映画としてまとめてあるが、各エピソードは独立しており、オムニバス・スタイルになる。主人公が6人いるのだから、当然のことだろう。短いエピソードの中で描けれることなんて、たかがしれている。しかも、ことさら特異な事は描けない。先にも書いたがこの映画はどこにでもある普通の女性たちの普通のお話を通して観客の共感を呼ばなくてはならないからだ。

 これは簡単なことではない。ありきたりになるのは仕方あるまい。いや、ありきたりでなくてはならないくらいだ。でも、ただのありきたりでは意味がない。それぞれのエピソードがもっと上手くつながり、ドラマ全体に大きなうねりが出来たならよかったのだが、ただのちまちましただけの話で、終わる。これではつまらない。

 この日本の美しい女性たちの群像を通して作者は何を描きたかったのか。そこがまるで伝わらないようではだめだ。この映画はまだ20代の若い小泉徳宏監督にはいささか荷が重い。風俗の表層をなでで懐かしい気分にさせるくらいでは意味がない。(まぁ、それだけでも十分に大変だっただろうけど) この命の連鎖が描くものを、しっかりと示せなくては感動は呼べない。



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