(たぶん)高校演劇の既成台本を使って、丁寧に作品世界を作りあげていく。学校を舞台にしたさりげないスケッチ。無理はしないが、台本で誠実に描かれたことを自分たちのものにして表現した。今から少し前、2000年代の地方都市の高校。島から出て本土に来ている女の子。寮で暮らしている。舞台は彼女と担任教師、さらには不登校の男子が過ごす生徒相談室。
役者はこの3人だけ。ふたりの高校2年生と担任教師。それを現役高校教師と2年生の男女が演じた。これは簡単そうに見えて、なかなかないことである。
担任を演じた佐久間先生が素晴らしい。高校演劇部の芝居で主役級を堂々と演じて初々しい。しかも目立たないけど、エッジが効いている芝居を見せてくれる。彼女が作品を引っ張っているのに自然体だから、高校生ふたりも無理なくさりげなくなった。テーマを前面に押し出してくるのではなく、彼女たちの今を淡々と見せることに徹する演出の姿勢がいい。
問題を起こして学校謹慎中の女生徒と、教室にいると腹痛を起こし授業を受けられない男子生徒。ふたりが過ごす日々が描かれる。そこに女生徒の担任教師が絡んでくる65分のドラマ。
台本のよさを忠実に再現して,自分たちの考えをゴリ押ししない。淡い問題提起に留める。こういう端正な作品がHPFで作られ上演される。ウイングフィールドという空間を理解し、ここだから可能な作品を提示する。それって素晴らしいことだ。
そう言えば、今回見た6作品はいずれも間尺に合った作品を自分たちに必要な劇場を使って提示していた。HPFの高校生たちは凄い。