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映画・演劇のレビュー

『宇宙兄弟』

2012-05-08 21:35:25 | 映画
 もうJAXAはいいよ、とさすがに食傷気味の僕です。3本も「はやぶさ」映画を見て、散々JAXAの施設見学をさせられたから、またこの映画でも出てきた瞬間、かんべんしてよ、と思った。宇宙もの、というところで気づけよ、と自分に突っ込みを入れたが、それにしても、後半、JAXAの施設から全然出ない展開には参った。 NASAのシーンもけっこうあるけど、どちらにしても同じようなものだ。

 映画は宇宙飛行士を目指す兄と、日本人として初めて月面に立つ弟とのドラマを並行して見せていきながら、やがて2人の夢がかなう瞬間までを描く感動もの。でも、正直言うと、あまりに単純な筋立て過ぎて、ちょっと拍子抜けした。青春映画なのだが、素直すぎて、しかもそれが作品の力にはなっていない。これではただ物足りないだけなのだ。映画としてのダイナミズムにも欠ける。これだけ大変な撮影をこなしたのに、たったこれだけでは、あんまりではないか。製作費も膨大なものになったのではないか。これはちょっとした大作映画のはずだ。

 もちろんビッグバジェットだから、派手な見せ場とハラハラするストーリーで、衆目の目を惹く映画を作らなくてはならないとは思わないのだが、それでも、こんなにも単純でなんの仕掛けもない映画にしなくてもいいのではないか。

 この平板なストーリーラインなら、せめて丁寧な人間ドラマとして、最終選考に残った6人のドラマを追いかけるとか、弟の兄への想いをもっと胸に迫るように見せるとか、それなりのお話に奥行きがあってもいいはずなのだ。それなのに、あまりにあっさりしていて、驚く。幼いころの夢をこんなに簡単に実現出来るのなら、幸せな話だ。でも、現実世界はこんな映画みたいに簡単ではない。そんなふうに見ている僕たちが思ってしまうのならば、もうその時点でこの映画は失敗している。だいたいこれって宇宙飛行士になる話でしょ。素人でも、宇宙飛行士になるのって、たいへんなことだと、わかります。こんな簡単なことでいいのか?

 ストーリーの表層をなぜるだけで、しかも、まるでリアルではないお話に、人は感動なんかしない。めんどくさいと思うばかりだ。あまり類を見ないタイプのスケールの大きな青春映画だと信じて、かなり期待していていただけに、久々に心からがっかりする映画だった。

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