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映画・演劇のレビュー

『ライド・オン』

2024-06-06 17:50:00 | 映画

デビューから50年を経て、2024年で70歳を迎えたジャッキー・チェンの主演作。なんと引退したスタントマンを演じる。

アクション一筋で半世紀。何度も引退を覚悟したけど、辞められなかった。演技派を目指すも叶わないし、似合わない。ジャッキーはいくつになろうとも永遠にアクションスターなのだ。自身が役には投影されている。

始まりは『ドランクモンキー酔拳』。45年前になる。東映が二本立てのおまけ映画として香港から買い付けてきた。メインの映画より面白いと評判になったから、その後旧作も買い付けた。続々とジャッキー映画が公開される。『蛇拳』はつまらない映画だったけど、それなりに受けた。

僕は2本ともダメだった。延々と野原でアチャアチャやってるだけ。つまらないと思った。だけど、『プロジェクトA』。あれを見て感動した。ここまでやるのか、と衝撃を受けた。あれからはすべての映画を見ている。自ら監督、主演した絶頂期の作品は素晴らしい。もちろんつまらない映画も多々あるし、近年の作品はいただけない。だけど結果的にアクション一筋を貫いた。

今回の映画はスタントマンを通して、結果的には引退したアクションスターの最後を描いている。自らの老いを投影した、はずだった。だが、映画はスタント馬との交流や、付き合いのなかった娘との和解とか、まるでどうでもいいようなことをダラダラと描くばかり。ジャッキーが出てなければ見ない映画だけど、ジャッキーが出ていても見ていられない愚作。

何故彼は自ら進んでこんな映画に出たのか? アクションも大味であまり意味がないし、だいたいアクション自体も少ない。まるで見せ場のない映画である。こんなダメな台本でOKをしたのはなぜか。アクションスター、ジャッキー・チェンの業績に対するリスペクトがこれだというのなら、バカにしている。過去の自分が出た往年の名作映画の数々、その歴史的名場面をTVで見るシーンも無残だ。せめてスクリーンで見て欲しい。というかあんな見せ方ってバカにしている。

馬を相棒にして、馬の添え物と化したジャッキーって何? あり得ない。もともと日の当たらない名もないスタントマンなのか、有名なアクションスターなのか、それもよくわからない曖昧な設定も酷い。撮影所のかたすみで働いている。時々エキストラの仕事を貰う。そんな老人のお話。

50年間彼がスクリーンで戦い続けたその先を刻む映画を期待した。彼の偉業を讃えたかった。それが惨めな老人の話でも構わない。だけど、こんな映画は作るべきではない。


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