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映画・演劇のレビュー

『イエスタディ』

2019-10-20 08:40:20 | 映画

 

ダニー・ボイル監督作品なのだが、実に甘い映画で、彼らしくない。『トレインスポッティング』とは言わないまでも、せめて『スラムドック$ミリオネア』くらいの甘さでとどめておいてくれたなら、よかったのだけど、今回は甘甘。でも、砂糖菓子のような映画だけど、これはこれで悪くはない。全編に流れる誰もが知っているビートルズのヒットナンバーを背景にして、とんでもない世界に迷い込んだ男が、信じられない人生を歩む姿を描くファンタジー映画。

 

自分だけがビートルズを知っている、だから、彼らの音楽を世界に知らせる。でも、そこで彼は彼らの音楽を自作として発表してしまう。狡いことは承知の上だ。でも、誰もビートルズなんて知らないのだから、彼が彼らの歌を歌えば彼のオリジナルだと思われてしまう。最初は仕方なくついた嘘がだんだん当然のこととなる。でも、だんだん自分の嘘が苦しくなる。でも、世界中にいるほんの一握りの彼と同じようにビートルズを知っている人たちに後押し(告発されるのではない)されて、この世界にビートルズナンバーを知らせるために歌う。

 

映画の前半は、彼が凄い曲を作ると、噂になり、スター街道を突き進むまでが描かれる。軽快にテンポよく見せてくれる。後半、苦しみながら、本当のことを告げたいという想いと、成功に酔う心地よさの狭間で、自分を見失いそうになる姿が描かれる。まぁ、定番の展開だろう。クライマックスも含めてお約束の定番。安心して見ていられる。

 

映画のハイライトはジョン・レノンとの出会いを描く場面だろう。死んでいなかった彼と(だって、この世界では彼はビートルズではないのだから)会って、その78年の人生を話してもらう。有名になり、お金と名誉を手にした人生と、無名のまま、充実した人生を全うすること。どちらが幸せか? そのことを年老いたジョン・レノンが語るのだから説得力がある。

 

ビートルズのヒット曲の数々がこの世界でも受け入れられるか、どうかは、もしかしたら微妙なことかも知れない。でも、そんなことも含めて、この映画は、ファンタジーという意匠の中で、考えられる最高のドラマを用意する。甘い映画だからこそ、受け入れられることもある。夢のようなお話を最後まで気持ちよく夢見させてくれる。こんな映画もたまには必要だ。

 


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