絶好調、河合優実主演の最新作。ここまでやるか、というようなある少女の転落を描くドキュメンタリータッチのドラマ。実話の映画化。入江悠監督が偶然出合った新聞記事が出発点になったらしい。ある少女の自死。映画は21歳の杏の更生への道のりを見守るヒューマンドキュメンタリー、と書くのも憚られるくらいに壮絶なドラマ。もの言わない河合優実のおどおどしたしぐさに秘められた想いが胸を引き裂く。
幼い頃からの母親による虐待。彼女は自分のことをママと呼びかけて暴力を振るってくる母に抵抗出来ない。優しい祖母を見棄てることも出来ない。12歳から母親に売春を強いられ、やがてドラッグで身体はもちろん心もボロボロになっていた彼女をある刑事が助ける。彼は仕事と同時に薬物濫用する人たちを救い出すシェルターを運営している。2020年コロナ元年に実際にあった出来事を少女と刑事、さらには彼らを見守る週刊誌の記者、3人のドラマとして描く。
少女はシェルターで保護されて，介護の仕事を得る。だが，信頼していた刑事のもうひとつの側面を知る。彼女の死があまりにあっけなく茫然とするしかない。なんとかならなかったのか、と歯噛みするのは稲垣吾郎演じる記者だけでない。心優しい刑事佐藤二朗のダークサイドをさらりと描く。あれはなんだったのだろうか。
