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映画・演劇のレビュー

柳美里『自殺の国』

2013-02-08 22:27:08 | その他
 この何の答もない小説を読みながら、ここで描かれる問題に答えを求めるほうが、無駄なのだ、とわかっていても、なんかそれってとても疲れる。じゃぁ、これを書いた作者にとって、これを書く意味って何だったのか、と問い返したくなる。柳美里が、今、この状況をどう捉え、そこからこの国はどこに向かっていけばいいと思ったのか、それが正しいとか、間違っているとか、そんなことではなく、この作業を通して、彼女がどこに行こうとしたのか、あるいは、そのモチベーションはどこにあったのか、それが知りたい。

 だが、それは普通なら読んでいけば、自然と見えてくるもの。でも、そのはずなのに、僕には全く見えなかった。突き放されたようなラストも、その直前、クライマックスであるネットで出会った見知らぬ人たちと共に自殺するシーンも、辞めて戻ってくる展開も、それはそれで話としては一応は納得いくのだが、その先が見えない。

 とても不安にさせられる。それが彼女の意図なのか。ならば、意図は達成された。だが。それで? 確かに、今ある現状を捉えることは大事だとは、思うのだが、それだけでは納得はできない。


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