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映画・演劇のレビュー

『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』

2011-05-26 19:49:14 | 映画
 久々に時間が出来たから、映画でも見に行こうと思ったのに、見たいと思える映画がない。新鋭ノ・ヨンソク監督の『昼間から呑む』が見たかったのに、冗談ではなく、昼間の2時半一回だけの上映で、断念した。単館系劇場は地味な映画ばかりだし、しかも時間設定がばらばらで、とても見に行ける状態ではない。しかたなく、今、日本の劇場の3分の1くらいの劇場で公開されているこの作品を見ることにした。これなら、いつでもどこででも見れるし、ね。

 僕のお目当ては、もちろんジョニー・デップではない。この映画をロブ・マーシャルが監督しているからだ。『シカゴ』とか『ナイン』を撮った人である。そんなミュージカルで「ぶいぶい」いわせている彼が、このアトラクション・ムービーを任され、どんな冒険を見せてくれるのか、楽しみだった。さらには、軽量化されて、視界も明るくなった(らしい)リニューアル3Dメガネ。そのかけ心地も体験するため、いざ劇場へ!

 確かに以前のごつい3Dメガネとは段違いだ。これなら、なんとか耐えられる。『アバター』の時にはもう死ぬかと思った。2時間半以上もある映画を、あの3Dメガネで最後まで見るのは拷問だった。劇場には映画を楽しむために行くのに、3Dは喜びより、苦しみの方が多い。だから、最近は極力避けていた。2D版が同時公開されていたなら、迷うことなく2Dで見る。まぁメガネは楽になったが、それで映画が面白くなったというわけではない。3Dの効果なんて、たいしたことはない。だいたい、僕らはわざわざ劇場で3D体験なんかしなくても、現実世界は3Dなのである。飛び出す映画はいらない。
 
 さて、映画である。3Dでの上映も含めて、最初から最後まで見世物映画に徹していたのはあっぱれだ。手に汗握るアクションの連続。でも、ノンストップ・アクションではなく、途中ちゃんと休憩が入る。テンポはどちらかというと、トロいくらいだ。お話もどちらかというと古典的なストーリー展開で、生命の泉を探して、しかたなく旅に出るジャック・スパロウを中心にして、さまざまなキャラクターが入り乱れての冒険が描かれる。彼らの行く手に待ち受ける苦難の数々、とか。まぁ、おきまりの展開。

 前3作では、ジャックはどちらかというと、脇に回るシーンが多かったのだが、今回は単独主演で、もう彼の独壇場。ジョニーが好き勝手している。こういう超大作娯楽映画を大スクリーンで見るのは、映画ならではの楽しみだとは、思う。こういうイベント映画は必要だし、ハリウッドにはこれからもこの手のおバカな映画を作り続けてもらいたい、のだが、正直言うと、もう少しでいいから、完成度の高い映画にしてもらえないだろうか。多くは望まない。後ほんの少し、ちゃんとした映画であれば、嬉しいのだが、なんとも惨い。

 ロブ・マーシャルに期待したのは、実はその一点だけなのだ。大味で空虚な大作映画ではなく、きちんと楽しませてくれる娯楽活劇が見たい、と思った。派手でドタバタしているだけの空しい映画は、もう飽きた。その点、この映画は、無意味な派手さはないし、ちゃんと作ってあるのだが、いかんせん単調すぎる。なんだか途中から眠くなってきて、困った。

 拡大公開のため、大ヒット上映中なのだろうが、このレベルの映画では、観客にすぐ飽きられてしまうだろう。まぁ、イベントムービーなので、この程度の出来でも観客は喜ぶのかな。

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