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映画・演劇のレビュー

万博設計『見参! リバーサイド犬』

2014-01-15 20:56:49 | 演劇
 一体この芝居はどこに着地するのだろうか、見ていて、不安にさせられる。初演のラストはもっとシンプルだった気がした。終盤、いつまでたっても終わらない。こんなはずじゃなかったのに、と思う。先が読めない。

 終演後、作、演出の橋本さんに思わず聞いてしまった。もちろん結末部分をいじっているということだった。松本ドックパークという場所に取り込まれてしまい、ここから出られなくなる男という図式が前面に出る。反対に犬のほうが自分からここから出て新しい人生(犬生?)を始めるようなラストとなる。これは新しい家族を作る話なのか、と一瞬思っただけに犬の離脱には驚く。でも、それが子犬の生活を保障するためのやむにやまれぬ決断のようなので、必ずしも彼らの望んだものとは言えないようだ。では、彼らは何を望むか。

 気持が悪い。いつまでたって終わらない。この芝居の落とし所はどこにあるのか。不安になる。実はそういうところに、この再演の意味があるようなのだ。では、この芝居は何なのか。家族の再生? そんなものじゃない。でも、男と女は、この後ふたりはここで一緒に生活するようだ。犬がふたりのキューピットになった、ようだ。だが、そんな話なのか? 絶対に違う。

 最初見たときには、犬が人間になる、という最初の部分に引きずられて、そこからこの芝居全体を見てしまったけど、今回はそこにはあまり引きずられない。彼らの関係性に方に興味はスライドされた。登場人物はたったの3人。男と犬(人になってしまったけど)。彼らがたどり着いた「松本ドックパーク」という施設の職員である女性。ここは犬のターミナルケアをする施設らしい。保健所は処分するけど、ここは安楽死させてくれる。この微妙な差を犬は大事にする。これは犬版『楢山節考』だ。

 だが、彼はここにくることで、新しい家族を作る。というか、彼はもともとひとりぼっちだった。そこにたまたま同僚の女性から犬を預けられる。2か月経つが、彼女は引き取りに来ない。

 犬がやってきて、ふたりになった。だが、彼は仕事を解雇され、犬を捨てることにする。三角州で犬を棄てる。そこで、犬が人になってしまう。人の言葉をしゃべる。情が移って棄てられない。そこから話は始まる。そしてすぐに、彼らが向かった松本ドックパークで話は展開する。

 話が前後してしまったが、見ながら、初演の先へと、どんどん芝居が進行していくことに驚く。単純な再演ではない。新しく生まれる「松本ドックパークⅢ」はどんな場所になるのか。気になる。答えが欲しいのではない。この悪夢の先がもっと見たいだけ。




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