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映画・演劇のレビュー

『カナリアンなショートプレイフェスティバル 2014』

2014-06-03 22:13:35 | 演劇
「劇場を揺るがす5つの固まり!!」とチラシにはある。まぁ、よくある宣伝文句なのだが、今回の短編集はいろんな意味で衝撃的だった。5団体が作品を3団体3作品ずつに分けて上演する。20分から40分の作品にまとめること、というのが条件だったらしい。それ以外はない。だから、何をしてもいいのだ。カナリア条約によるプロデュース公演。

僕はたまたま全作品を見ることが出来たのだが、まるで方向性の違う作品ばかりで、唖然とした。ここでは比較には何の意味もない。普通こういうフェスでは、どれが一番よかったか、と聞かれることが多いのだが、ここまで別々の方向性を示す作品ばかりではそんなことは不可能だし、意味がないということだ。いずれも初めて見る集団ばかりで、結構ベテランも多く、当然のことなのだが、世の中は広いし、いろんなことをしている人たちがいる、という当たり前のことを痛感した。そういう意味では、おもしろかった。


1本目はsecret7『世界が終るコロニー』。このタイトルはシャレなのか? 『コロニー』は『頃に』とかけてあるのなら、くだらないけど、そういう冗談のような部分を大事にしたダークなコメディーなのである。ふたりの男が意味のないことをしゃべっているだけ。だが、ここは世界の終りで、彼ら以外にもう誰もいない。よくあるパターンだ。そこに、へんな宇宙人がやってくる。でも、本人が宇宙人と言うばかりで、ただの人間にしか見えない。だから、頭のおかしな男だ、と思えばいい。しかし、ここにはもうほかに誰もいないのだから、彼の存在は大きいはずなのだが。
意味がないことを目指したのなら、成功しているかもしれないが、その無意味さに先にまで、作品は向かって欲しい。

アノマリーズ「datebaseanimals」。ネットワークに守られて孤独を楽しむ人々を描く。ふざけたような意匠のダンスに象徴されたネットを通して、ダイエットに勤しむ人たち。その個々の姿と、彼らの関わりが描かれる。5人の役者たちの個性が際立つ。なんだか、へんな人たちばかりで、見ていて不安にさせられる。

殺陣パフォーマンス集団『斬!』のチャンバラコントは、大道芸のノリを劇場で見せてくれる。観客参加型イベント。見ていて楽しい。それだけ。でも、こういうのは、それだけ、というのがきっと大事なのだ。今回の5作品の中では特に異質。

四次元STEGE『ショート・ショート★3編?』は文字通り3話からなる。最初の靴下の話が笑える。巨大な着ぐるみの靴下が登場してぼやく。次はなんと落語。そして、最後は普通の一人芝居。確かに3話だった。

劇団どうする?企画『同窓会プレイ』は、今回唯一安心して見せてもらえた。まず、お話としてよくできていて、ショートプレイとしての完成度が高い。久々に集まった同窓生たち、のはずだったのだが、話が、噛み合わない。ひとりが彼らに「おかしい」ということで、記憶と現実の境目で、事実が発覚していく。オチも上手いし、まとまりがいい。良質の短編を見せてもらったという安心が残る。

5作品を見て、本当に世の中にはいろんな人たちがいるものだ、と改めて思った。ウェルメイドの芝居では感じられない歪さがここにはある。それくらいに、今回の5作品は不思議で、へんてこな作品ばかりなのだ。全体のバランスなんてまるで考えていなくて、とても居心地悪くできている。わざとそういうものを狙ったわけではあるまいが、このアンバランスな取り合わせは感じ方にもよるけど、なかなかにスリリングだった。


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