習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『3人のアンヌ』

2014-06-03 22:23:01 | 映画
ホン・サンスくらい、いつもいつも同じことを映画にする作家はいない。しかも、最近ではそれがますますエスカレートして、まるで内容が何もないような映画を平気で作る。ただ、ぐちゃぐちゃしゃべっているだけ。無意味な会話を。

しかも、まるで風光明媚ではないような場所で(きれいだね、とか主人公たちは言うけど、僕にはまるでそうは見えない)無味乾燥な風景に立ち、ただ、食べて飲んで、実りのない会話をするだけ。こんな映画のどこがおもしろいのか、と思う、こともできる。しかし、それなのに、それを見てしまう。ついつい見てしまう。

今回なんか3話からなるオムニバス・スタイルだ。しかも、3つとも、ほぼ同じ話。ほぼ同じキャスト。もちろん、同じ場所。それって意味ないじゃん、と思うくらいに、それぞれのエピソードには違いがない。フランスからとある女性が韓国にやってきて、このリゾート地で過ごす。海岸でライフセーバーと出会う。セリフまで同じ部分がたくさんある。もちろん、そんなこと確信犯的行為なのだが、そうすることに何の意味もない。でも、やっちゃう。イザベル・ユペールが主人公の女アンヌを演じた。みんなホン・サンスが大好きだから、彼の映画に出演してしまう。わざわざイゼベル・ユペールを呼んできてまで撮るような映画には見えない。でも、彼女は嬉々としてこんな無意味にしか見えない役を演じた。

こんなにも無意味にしか見えない映画にでも、僕たちはなぜか心惹かれる。ここには何もない。だが、だからこそ、ここにはすべてがある。そんな気にさせられるのだ。もちろん、それは思いすごしでしかないのかもしれない。それくらいにここで描かれることには意味が感じられないからだ。僕たちはホン・サンスのマジックに愚弄される。でも、それがなぜか心地よい。不思議だが、それが事実だ。どこにでもあるようで、どこにもない、そんな場所に彼は連れて行ってくれる。


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