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映画・演劇のレビュー

KUTO-10『ストレッチポリマーインターフェース』

2014-05-30 21:14:03 | 演劇
今回の工藤さんは林慎一郎に脚本を依頼した。それをなんと内藤裕敬の演出で見せようとする。水と油のようにも思える両者のカップリングは見事だ。理屈で林作品をねじ伏せるなんて不可能だ。内藤さんは当然本能の赴くままこの世界を自由自在にドライブする。わかるか、わからないか、なんて気にしない。そんなことに拘っていたなら、取り残される。大体これはもともとが理屈ではないからだ。

わけのわからない世界に取り込まれてしまった主人公(工藤俊作)は、その世界のルールなんか、考えずにただ、流されるままそこに向かう。イオンで紙おむつを買ってくるだけのことだったのに、妻に言われてのお使いだったのに、大の大人が、まさか迷子になる。いつまでたってもイオンにはたどり着けない。大体イオンではなく、いつのまにかアイオーンになってるし。彼もそれを受け入れる。

これは林板の『不思議の国のアリス』だと思えばいい。内藤さんは台本に書かれたまま、何の疑いもなく、この世界を見せていく。見事なまでに潔い。わけのわからない旅館に入ると、そこはキャバレーで、女たちは紙おむつをしている。男は、ただ流されるまま、この世界を漂う。イオンは遠い。従来の林演出でなら、もっと混沌としたものになったはずだ。だが内藤演出はそうはしない。びっくりするくらいにさらりと描かれていくから、観客である僕たちもまた、悩まない。そのまま、受け止めて、受け入れていく。そうすると、ちゃんと出口にたどり着ける。

なんと爽快な芝居だろうか。不条理な世界と向き合い、どこかにたどり着くためには、これくらいの素直さが必要なのだ、とでも言うのか。よくわからないけど、面白かった、とここではそれだけ言っておく。

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