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映画・演劇のレビュー

劇団息吹『泰山木の木の下で』

2014-06-03 22:29:02 | 演劇
 今から50年以上前に書かれた台本を劇団息吹が取り上げた。劇団としては3度目の公演になるということだ。とても古臭い芝居だ。ドラマの作り方、演出方法も含めて。だが、そんな作品を見ながら、なんだか、とても新鮮だった。この新鮮さは何なのだろうか、と思う。ずっと昔に見た古い映画に再会した気分とでも言おうか。当然これは今の感覚ではない。原爆に対する感じ方や、考え方、ドラマ作りに対する取り組み方。すべてにおいて古色蒼然としたスタイルが貫かれている。

 当然テンポは遅いし、くどい。被害者意識も濃厚で、自分たちがどれだけ苦しんだのかを、声高に叫ぶ。ストレート過ぎて、それが胸に痛い。敢えて、こういう作り方をしたのだろう。原爆による被害が色濃く残る50年代を舞台にして、過去のこととしてではなく、今現在のこととして被爆による傷跡があちこちにあり、そんなのは当たり前の現実の中で、この物語は展開していく。瀬戸内海に浮かぶ小さな島。泰山木のある家で、ひとり暮らす老婆。彼女のもとを訪れる中年男。ふたりののんびりとしたやり取りからお芝居はスタートする。

 そんなハナばあさんと、彼女を逮捕する木下刑事とのやりとりを中心にした序盤の後、舞台は島から本土へ、警察の取り調べ室に移す。人助けのための行為が、堕胎幇助の罪となる。ここで取り調べを受け、でも、ひょうひょうと過ごすハナばあさんと、彼女に共感しながらも職務を全うするために彼女と向き合う生真面目な木下。お話はこの2人のそれぞれの事情を描きながら、背景にある広島で被爆したたくさんの人たちの姿を通して、あの時の日本を描く。

 久々にオーソドックスな芝居を見た。昔見た芝居って、こんな感じの作品が多かったなぁ、となんだか懐かしい。でも、その昔っていつだ? たぶん僕は高校や中学のころ、学校行事で見た芝居を思い出しているようだ。


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