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映画・演劇のレビュー

『パプリカ』

2006-12-13 23:18:32 | 映画
 人の夢の中に入って治療を施す装置を巡る物語。まだ、未完成なその装置を誰かが奪った。それを探し出すうちに、研究所の理事長の陰謀が発覚していく、なんていうお話自体は特別たいした事はない。

 それよりも、夢の世界のビジュアル。イマジネーションの百花繚乱。カーニバルとグロテスク。あっと驚くスペクタクルの連続技。目も眩むような煌びやかな世界と、身も凍るような展開が、様々な人々の交錯する内面世界の具象として描かれる。凄いとしか言いようがない。

 『千年女優』に続く今敏ワールド全開の豪華絢爛の絵巻物である。一瞬たりともスクリーンから目が離せない。息をするのさえ忘れさせる。

 前作『東京ゴッドファーザーズ』やデビュー作『パーフェクトブルー』で見せてくれた要素もしっかり投入して、ただハードなだけでなく、とてもハートフルな映画になっている。サイバーパンクなのに、おとぎ話のような優しさがある映画になっている。

 パプリカと千葉という2人がひとりの中に同居するという大前提が、この映画の作品世界を広げることに成功した。この2人の違いがラストで一つに重なっていくことでこの映画は完成する。とても分かりやすいのに、奥行きのある映画に仕上がった。

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