習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ハリエット』

2020-06-11 20:05:51 | 映画

2ヵ月ぶりの映画館だ。ミニシアターに続いてTOHOシネマズも上映を再開した。4月公開予定だったいくつかの作品が先陣を切って公開された。うれしい。当たり前の話だけど、映画は映画館で見るに限る。TVだとかスマホなんかで見てもそんなのは映画じゃない。(この2ヵ月散々お世話になったくせに!)暗いところで、視界一杯に広がる世界と対峙する。ひとりスクリーンと向き合う。自分と映画だけの世界だ。映画の中に没入する。すべてを忘れて、2時間ほど、別の人生を生きる。そんな時間が好きだ。実人生より、映画のほうが楽しい。

さて、『ハリエット』だ。暗くて重い映画かもしれないと、危惧した。だから二の足を踏んだ。せっかくの映画との再会である。その第1歩は楽しい映画がいい、かも、と。だけど、僕はどちらかというと娯楽映画より人間ドラマのほうが好きだし、今回は少し冒険してみた。大正解だった。実に面白い。ハラハラドキドキの連続。驚きと感動の2時間5分だった。実在の人物の(アメリカでは有名)の伝記ドラマなのだけど、彼女の凄まじい生き方には驚きを禁じ得ない。そんなことが可能なのか、と思うくらいに波乱万丈。奴隷として苦渋の生活を送っていた彼女が逃亡し、やがて黒人奴隷解放の先陣に立つ。

映画は彼女の人生を冒険活劇のようなタッチで描いていくから、重くも暗くもならない。お話自身は重いし暗い時代を背景にしている。黒人奴隷が辛酸をなめてきた歴史を背景にしている。というか、背景ではなくそれが前面に押し出される映画だ。だが、彼女はどんな苦境に立たされても神の導きにより、死なない。こんな風に書くとなんだか少し不謹慎かもしれないけど、そこが痛快だ。ラストの対決シーンだって、相手を殺さないけど、胸がすく。勧善懲悪というわけではないけど、なんだか西部劇でも見ている感じなのだ。

過酷な日々を送り、戦い続けた女性の人生ドラマ、というようなパッケージングにも括れる映画なのに、まるで娯楽映画を見たような爽快さ。戦う女の気高さ、崇高さ、なんていう言い方はしない。ましてやヒーロー物、でもない。この映画は極端な映画ではないし、掟破りでもない。どちらかというと正統派だ。なのに、こんなにも映画的興奮に満ちている。これが映画だ、という気分にさせられた。それは僕が映画に飢えていたからそう思うのではない。この映画の姿勢が新鮮で、素晴らしいから、そう思えれるのだろう。いい映画を見た。いい再スタートだ。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ROMA ローマ』 | トップ | 「デッド・ドント・ダイ」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。