妄想癖のある中学2年生の依子が主人公。クラスに馴染めず、現実より妄想世界で生きている。死んでしまった愛犬トトと今も心の中で喋っている。宇宙人から世界を救うために戦っているなんていう妄想世界が、心の救い。現実世界では人とうまく付き合っていけない。いつもおどおどしている。
だから中学生は嫌なんだ、と改めて思う。めんどくさい。子どもなのにつまらないところが大人みたいで、ひとりでは何もできないから、いつもイライラしている。彼女の昔親友だったさきは、嘘つき。陸上部の伊藤さんは誰とでも仲良くしていて依子にも優しい。この小説は依子が主人公の4つのエピソードに、さきと伊藤さんを主人公にする2つのエピソードを挟み込む6つの短編連作。
中学という狭い世界であっぷあっぷして暮らしている彼女たちの姿を俯瞰的に描く。彼女たちに寄り添って、ではなく。その微妙な距離感がいい。わかる、ではなく、わからなくていい、というくらいの立ち位置から描かれる。
タイトルにあるゴルディロックスゾーンの意味は生存可能領域ということらしい。逃れられない中学の教室で生きなくてはならない子どもたち。彼女たちのそれぞれの傷みが丁寧に描かれる。簡単に癒されることはない。
私たちのことなんてわかるわけがない。と、彼女たちは思うだろう。もちろんわからない。だけど、あなたたちに寄り添いたい。だってそれはかつての僕たち自身なのだから。