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映画・演劇のレビュー

神原組 特別公演『スケッチ 夜の客人』

2021-09-22 09:11:20 | 演劇

とても胸に痛い作品だ。神原さんの覚悟が伝わってくる。でも、それはいつも熱い(暑苦しいくらいに!)神原さんなのに、なんだかとても体温が低い。だから反対に彼女の熱い想いは伝わるのだ。

敢えて1時間弱の作品にして、「スケッチ」と入れた。力作ではないよ、というサインだ。この小さな劇場に、さわやかな夜風が吹く。そんな芝居である。短かすぎるエピソードの連鎖だ。たった5つのエピソードである。ささやかすぎて物足りなく思えるくらいだ。でも、それがいい、それでいい。終わった後は自分自身が夜の公演にでも行って誰かと出会えばいいからだ。それが6つ目のエピソードになる。ひとりのところに、誰かがやってくて、少しことばを交わし、去っていく。それだけのことだ。

ただ、唯一、二つ目のエピソード(「火の見櫓の向こうから」)だけは、そうじゃない。もちろんわざとそうしている。幼いころからの仲間たちが夏の初めの夜になぜか、集まってきて、死んでしまった友だちと再会する。原っぱは神原ワールドの原点だ。ここをはずすわけにはいかない。しかも、そこにはいつも仲間たちが集まってきて楽しい時間を過ごす。それはお約束だ。いつものメンバーに今回初出演となる新人栗山拓がセンターで絡むことになる。(このエピソードだけ少し長い。)

今回は神原さんの出番はない。それでいい。彼女がちゃんと舞台袖で、みんなを見守る。この世界はこんなふうに美しい。春から冬へと季節は廻り、1年が過ぎていく。今回、レギュラーキャストに、一部だけど、敢えて初めての人たちを絡ませて、新しい布陣で挑んだ。全体のバランスもいい。次のステップに向けて準備は万端だ。


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