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映画・演劇のレビュー

『フィギュアなあなた』

2014-02-28 22:50:06 | 映画

 石井隆監督の新作である。『甘い鞭』と2本セットで制作されたうちの1作。劇場で見たかったのだけれど、関西ではローカルな劇場でしか上映されず(布施ラインシネマ)見ることができないまま上映が終わった。DVDになって、すぐに借りるつもりだったのに、TUTAYAの店頭には並んでなかったので、おかしいなぁ、と思いつつ、今日まで時が経った。なぜ、見ることが出来たのかは、簡単な理由だ。この映画がポルノの棚にあったからである。そうか、これは成人指定だから、アダルトコーナーにしかなかったのだ。そんな単純なことにも気づかないまま、今日の日を迎えたのであった。

 昨年は石井作品を2本も見られて幸せだったとマニアの人たちが大喜びして、キネマ旬報のベストテンでも11位、12位と高い評価を得てきた。2本が並んで、ベストテン圏外というのも笑える。1本ならきっと票が集まってテンにランクインしたのではないか。それくらいに評論家諸氏の評価が高い石井隆である。もちろん、すでに僕たちはこれまでの数々の彼の傑作を見てきたわけで、僕も異論はない。ただ、今回、初めて、これは違うのではないか、と思ったもの事実だ。今までの石井作品のように手放しで評価しきれない。(もちろん『花と蛇』のようにまるでつまらない映画もあるにはあったが、僕の中では基本あの2本だけ)

 これはファンタジー映画である。もちろん、そんな言い方をすれば、彼の今までの映画は全部ファンタジーではないか、と言われそうだが、石井ワールド全開なのに、それがこんなにもただただ優しくて甘い映画になるのが解せない。図式があまりに単純すぎる。しかも、主人公の妄想として、単純に解釈できるというのも、なんだかなぁ、と思う。複雑な構造のなかで、主人公が身悶えすることで初めて石井ワールドは花開くのだ。なのに、こんなにも心地よい妄想に浸っていいのか。

 ラストの結婚式とか、その直前の彼女が空を飛ぶとか、もう気恥ずかしい。柄本佑は独り芝居を熱演するが、正直言うと、あれは見ていて、きつい。(物として、そこに存在し、ほとんど動くことすらなく、スクリーンに映る佐々木心音もつらかったと思うけど)これでは単純すぎて、話がまるで展開していかないのだ。同じ所で、ずっとぐるぐる回っている感じ。それだけで快感だ、というディープなファンならいいのだろうけど、普通なら映画作品として、これでは納得しない。当然のようなオチもいまさら、としか思えない。


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