こんなタイトルで小説を書くなんて、なんだかとても勇気がある。TVドラマならありそうだが、これ普通に大人向け小説だし。
でも敢えて、それだからこそこの気恥ずかしいタイトルをつけた。クビというニュアンスが大事だった。本心ではない。だけど、ここでしっかり決別しなくてはならないというのも事実。さらには小柳先輩の失踪、死は10年後の自分だけど。それは惨めなことではなく、悲しくて。彼からのメッセージを受け止めて、青春に見切りをつける。これは敗北だが、終わりではない。
大学に残って研究を続けることの困難は彼が文学部だからではない。夢を追い続けることは誰にとっても困難なことなのだ。どこで諦めるか。35歳が区切りではない。雇い止めにあい、大学で非常勤講師の仕事を失うからでもない。もちろんそれはきっかけにはなったけど、あくまでも自分の気持ちが第一にある。
古事記の研究だけで一生を生きていけたならいい。大学で常勤講師になり、教授になって安定した暮らしが出来たならよかった。だけど現実は厳しい。
友人の紹介でレンタル・フレンドのバイトをして、そこでさまざまな人と出会う。みんなさまざまな困難を抱えている。そんな当たり前のことを知る。
5話からなる。小柳さんの失踪から始まり、2話からは4話の3人の話を挟んで、小柳さんの死まで。こんなにも傷ましい現実の中でこれからの人たちは生きなくてはならないのか、と改めて思う。もちろんクビだなって終わりではない。これが新しいスタートだ。青春ではないほんとうの人生をここから生きる。人生に幸あれ。