吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

スティーヴン・キング原作『ドクター・スリープ』2019年アメリカ

2019-12-03 05:53:00 | 映画・ドラマを観て考えよう

 映画『シャイニング』の40年後を描いた作品・・・というと、あのオーヴァールック・ホテルの怪異を解明する物語かと思うと、思わぬ展開に肩透かしを喰らってしまう・・・そんな映画でした。

 映画『シャイニング』は同じスティーヴン・キング原作の作品でしたが、やはり監督スタンリー・キューブリックの個性が強く出た映画だったのです。恐ろしい惨劇を断片的な映像によって観る者に想像させる点がとても優れていたのだと思います。

 この『ドクター・スリープ』は極めて分かり易く描いた映画で、そこが賛否両論、分かれるところです。

※スティーヴン・キング原作『ドクター・スリープ』2019年アメリカ

 物語は、オーヴァールック・ホテルの惨劇から40年、可愛かったダニー少年も立派な『おっさん』になっています。

 惨劇の後、ハロランさん(↓脚註1)に習った方法で、ホテルに憑りついた悪霊たちを『箱(↓脚註2)』に閉じ込めて悪夢から逃れることができたダニーですが、特異な能力と味わった惨劇の後遺症でマトモな職に就けるはずもなく、アメリカ各地を転々とする日々を送り、今や立派なアル中です。ああ、虐待やアル中は親子連鎖するのです。

 ふとしたきっかけでからバスから降り立ったダニーは、その街のホスピスに介護職として勤務するようになり、老人たちの末期を看取ることになります。ダニーは自分の持つ『能力(↓脚註3)』を使って患者に話し掛けて死の恐怖を和らげ、いつしか『ドクター・スリープ』と呼ばれるようになるのです。

※ダニーは自分と同じ『能力』を持った少女アブラと友達になる。

 このダニーの『能力』に感応した少女アブラと友達になるのですが、この少女が自分の『能力』を使って『殺人を目撃した』とダニーに訴えます。実はこの国には『能力』を持った子供を襲い、その生気を食べて生きる一種の『吸血鬼みたいな集団(↓脚註4)』がいるのです。

 この集団が、カルト集団っぽい様相でチャールズ・マンソン一味を思わせる風体をしているのが面白い。

※謎のカルト集団の一員、ロ-ズ・ザ・ハットを演じるレベッカ・ファーガソン

 『能力』を持った子供を襲い続けないと生きられない集団なのですが、近ごろネットの普及で誰も『能力』を使わないのでナカナカ見つけられないのだとか・・・『吸血鬼』もラクじゃないです。戸籍を偽って生き続けると、普通の社会生活を送ることができず、結局住所不定共同生活のカルト集団に堕ちてしまうのです。『食べ物』が減った結果、この吸血鬼モドキの集団からも、とうとう死者が出てしまいます。『吸血鬼』は死ぬと煙と灰になり、死体も残りません。永く生きている彼らは死ぬことを極端に恐れます。やはり人間、永く生きるより、生きている間に何をしたかの方が大事なのです。

 当然のことながら、この集団は強い『能力』を持つこの少女を狙って動き出します。

 ダニーは友人と協力してこの吸血鬼モドキの集団と対決し、少女を救おうと決心するのです。

※友人ビリー(クリフ・カーティス)はダニーの言葉を信じて『吸血鬼』たちと戦う決心をする。

 ここで映画は吸血鬼映画やゾンビ映画の方向へ大きく振れることになります。

 怪異や悪霊から一転してアクションものに変わってしまいます。ダニーが戦う手段に選んだのは『』です。友人と狩猟用ライフルで待ち伏せてカルト集団を撃ちまくります。アメリカの銃至上主義は人々の心からなかなか消えないのです。

 吸血鬼たちも拳銃で撃ち返してきますが、ライフルの敵ではありません。バタバタと倒れていきます。ダニーの友人も『吸血鬼』たちを次々と撃って倒していくのですが、気を抜いた拍子に『吸血鬼』のひとりに強力な暗示を掛けられて自殺させられてしまいます。ああ、この友達って全くの死に損です。ダニーを庇い(断酒サークルまで紹介してくれます!)借家の保証人にもなってくれたとってもイイ人なのに、とても常識では理解できないような争いに巻き込まれて死ぬって、いったいこの人に何の罪があるというのでしょう。

 アブラの誘拐をやっとのことで阻止したダニーですが、復讐を誓う『吸血鬼』たちのラスボスとなった『ローズ・ザ・ハット』を迎え撃つにあたって、かつての惨劇の地、廃墟となったオーヴァールック・ホテルに舞台を移すことにします。「『能力者』にとって危険な場所は『吸血鬼』にとっても危険なはずだ」というのです。

※かつてオーヴァールック・ホテルで惨殺された双子の姉妹の幽霊・・・キョワイ!

 オーヴァールック・ホテル(の悪霊)を『目覚めさせる』ダニー・・・武器はかつて父親も使った斧()が一振り。

 ダニーは『吸血鬼』のラスボスを倒し、アマラを救うことができるのか!?

※『シャイニング』でも使用された消防用の斧

 前作のことはいったん忘れて楽しめばイイと思います。

  

 

※脚註1)ハロランさんは『能力(シャイニング)』を持った大人で、オーヴァールック・ホテルの惨劇で既に死んでいるのですが、死んでからもジェダイ・マスターのように現れてダニー少年に話し掛け、導いてくれるのです。

※脚註2)『箱』とは心の中に箱を思い描いて、現れた悪霊たちを捕らえて閉じ込めることができるスキルなのです。・・・ダニー少年の心の中はオーヴァールック・ホテルの悪霊たちの棺で今や満ち満ちています。

※脚註3)この『能力』のことを作中では『シャイニング』と呼んでいます。

※脚註3)トビー・フーパー監督『スペースヴァンパイア』みたいな存在と思ってください。血を吸うのではなく、人体の生命力を吸い取って寿命を永らえさせている存在です。

 

 

 



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2 コメント

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今晩は☆彡 (mezzotint)
2019-12-06 00:03:13
コメント、ありがとうございました。
やはり前作をもう一度観て、復習する方が
良かったかもしれませんね。
確かに、観なくても楽しめましたが・・・。
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Re>今晩は☆彡 (管理人)
2019-12-06 08:57:33
やっぱ、前作とは別物ですね。
同じスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』に対する続篇ピーター・ハイアムズ監督『2010年』と同じような感覚を受けました。
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