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映画・演劇のレビュー

かのうとおっさん『青春再来我愛ニィ』

2012-08-27 19:51:55 | 演劇
 このバカバカしさは半端ではない。この2人のあほらしさは、今まで数々のコントで見て、誰もが認知しているはずだが、今回短編連作というスタイルを踏みながらも、気分は完全長編作品という偉業を為し遂げる。永遠のモチーフである「青春」をテーマにして、情熱的な熱いドラマが繰り広げられるのだ。ここにはなんと、ちょっとした感動がある。

 とてもバカバカしい。なのに、笑ってしまう。口当たりがよくって、さわやかで、テンポがよくて、楽しい。2,3、5話は、完全に話がつながっている。でも、主人公は違う。1,4話は独立した話なのだが、全体の中にすっぽりと収まっている。ちゃんと5つの話が一つの流れを作っているのだ。しかも、作為的ではない。様々な局面から「青春ってなんだ!」に答える。それは思いこみと、熱意だ。多少の勘違いなんか、ものともしない。

 1,4話はどう見てもパッケージングは「青春もの」ではない。だが、それがこの『青春再来我愛你』という作品にこんなにも違和感なく自然に収まる奇跡が、この作品の凄さだろう。こどもたちの冒険もの、とミステリーである。お化け屋敷の探検に行く小学生の男女。勇気の証明のため2人は誰もが足を踏み入れない場所に行く。かのうとおっさんによる導入となるこのエピソードは、青春の入り口で、「えい、やぁ!」と、一気に踏み出す瞬間を思わせる。そして、本編に突入だ。

 タイトルロールの『青春再来我愛你』は、やる気のない高校教師の勘違い、その後のすべてのエピソードがこのパターンに終始する。3話目のイケイケギャルも、4話目の思い込みだけで突っ走る探偵も、5話目の宇宙飛行士を夢見るモテモテ大学生(ニュートラルの大沢秋生さんが演じる!)も、どいつもこいつも、凄すぎる。行け行けGO,GOで、怖いもの知らずだ。そんなふうに言うと、1話目の小学生だって同じだ。彼らを突き動かすのが、青春ってものだぜ。だから、それが僕等の胸を熱くする。出て来る奴らはどいつもこいつも熱すぎる。自分の情熱に突き動かされて、がむしゃらに突き進む熱血野郎ばかりである。

 このあきれるほどにアホらしい話がこんなにも楽しいのは、彼らのストレートな心情に納得させられるからだ。だから、彼らのバカさを応援したくなる。とてもくだらない話ばかりだ。そんなこと、作り手が一番よく心得ている。百も承知で暴走する。どうしようもない。とまらない。それが青春なんだ。

 絶妙な距離感で、自分たちを冷静にみつめ、コントロールしていく。実はとてもクールなのだ。だからどこまで悪乗りしても、すれすれの所で則を超えない。そのへんのバランス感覚は「お見事!」としか言いようがない。

 

 

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