こういうタイプの独りよがりでわがままな芝居は好きではない。だけど、そこに確固とした強い意志が感じられたなら、それはそれで納得のいく芝居になる。いちばんたちが悪いのは「観客であるあなたたちに判断を委ねます」とかいうふうに逃げる芝居だ。自分に表現力がないから、そうなる。(だいたい「自由に読め」なんて言われなくても、観客は自由に読むしかないし。)作り手はある種の方向性をストーリーででも演出でもいいから、 . . . 本文を読む
こんなにも後味の悪い映画だとは思いもしなかった。終盤の朝子の突然の行為だ。この映画を見た誰もがそれには驚いたはず。その後の展開もまさかの、まさかだ。ラストシーンまで一気に。河を眺めるふたりの姿を捉えたあのなんともいいようのない幕切れを見た後、暗転してエンドタイトルが流れても、これで終わりなのか、という暗澹たる想いが胸を支配する。ほんとうにこれでこの映画は終わるのか、信じられない気分のまま、席を立つ . . . 本文を読む
こんな芝居があっていいのか、と驚く。でも、これはドラカンなのだから、何をしても驚くに値しない、と言い切ってもいいのだけど、でも、いつもながらの大胆さだ。ギリギリのバランスで作品が作られてある。これはギリギリでアウトである。だが、そこも狙い通りで筒井さんはわざとそういうところで、バランスを取っている。バランスを崩すところで保つということだ。
死体だから動かない。ずっ . . . 本文を読む
8月から10月にかけてDVDで見た映画は、23本。玉石混淆だが、いずれも見逃したままで終わらせたくない映画を選んだ。でも、時間がなくて、まったく感想も書いていない。
一番面白かったのは、トム・フォードの『ノクターナル・アニマルズ』だ。この緊張感はただごとではない。2位はハネケの『ハッピーエンド』。あの衝撃のラストにはのけぞる。3位はオゾンの『婚約者の友人』。最後までどうなるか、先 . . . 本文を読む
8月から10月にかけて読んだ本は、42冊。一部は感想を書いたけど、そのほとんどは何も書かないまま、忘れ去られようとしている。
一番面白かったのは、井上荒野『その話は今日はやめておきましょう』。これはキツい。近未来の自分を描いたような小説。70代の夫婦のところに、ひとりの青年がやってくることで、彼らの平穏だった老後の日々が壊れていく。2位は吉野万里子『南西の風、やや強く』これは少し . . . 本文を読む
こういうエンタメ作品は普通ならもっと大きな劇場を選ぶはずなのだ。だが、敢えてこの狭い空間(in→dependent theatre 1st)で、しかも限定した少ないキャストで演じるという冒険に打って出た。岡田以蔵を主人公にして切ない恋心を描く。お話としては、あくまでアクション主体であることは当然なのだが、以蔵の恋心をそれと同じくらいの比重で描くことで、ただのアクションもの . . . 本文を読む