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映画・演劇のレビュー

dracom『ソコナイ図』

2018-10-13 11:05:51 | 演劇

 

こんな芝居があっていいのか、と驚く。でも、これはドラカンなのだから、何をしても驚くに値しない、と言い切ってもいいのだけど、でも、いつもながらの大胆さだ。ギリギリのバランスで作品が作られてある。これはギリギリでアウトである。だが、そこも狙い通りで筒井さんはわざとそういうところで、バランスを取っている。バランスを崩すところで保つということだ。

 

死体だから動かない。ずっと動かないまま倒れている。冒頭の何もないままの長いシーンは耐えられない限界まで引っ張る。そして、その後、さらりとしゃべり出す。だけど、会話はない。すべて、モノローグだ。役者たちが向き合う場面でも、言葉はキャッチボールにはならない。死んでしまった後の、孤独が描かれる、だなんて言わないけど、お話としては、この芝居を組み立てない。何度となく、同じことが繰り返されていく。大晦日から元旦へと移る時間。餓死してしまう姉妹。マンションの一室で秘やかに朽ちていく。死んでいるのか、死んでいないのか、そんなこと、わからない。

 

お話を見せるのではない。こいう風景を提示するばかりだ。損なわれたのは彼女たちなのか。そこにはもう底はないのか。110分間。長いか、短いか。面白いか、つまらないか。そんなことすらよくわからない。凄い芝居だ、と断言できないところが、魅力だと、敢えて言おう。

 


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