ロシアの新鋭、アンドレイ・クラフチューク監督によるとても小さな映画である。自分を棄てた母を求めて孤児院を脱走した6歳の少年ワーニャの切ない旅が描かれていく。2005年の作品なのだが、なんだか昔のロシア映画を見ている気分だ。お話自体も実に古色蒼然としたものでとても現代の映画とは思えない。
冒頭の車が極寒のロシアを行く場面がいい。途中でガス切れで車が止まる。するとガイドの女性が携帯で連絡を取る。 . . . 本文を読む
これは凄い。平野啓一郎はあまり好きではないのだが、今回はちょっといつもとは違う。まだ「上」を読み終えたところなので、詳細は書けないが、事件が起こるまでのここまででも充分この作品の凄さは伝わってくる。
冒頭の弟の帰郷から鷲摑みにされる。なんでもない描写なのかもしれない。だが、何かが起こる予感がする。家族が集まる。父親はなんだか鬱状態にあり、母親はどうしたらいいのか、心痛めている。 . . . 本文を読む
こんなにも心に痛い映画はない。ただ優しいだけの映画にはならない。だが、ただ悲しいだけの映画にもならない。子供を主人公にした映画の陥る甘えはここにはない。だがただ厳しい現実を突きつけるようなものでもない。
ここには痛みと優しさがきちんと同居している。アミールとハッサン。2人の少年たちが生きた時間。それが壊れていくさまが痛々しい。悪いのはアミールではない。だが、彼は自分のせいでハッサンという生涯 . . . 本文を読む
長澤雅彦監督の映画は全部劇場で見ている。特に『青空のゆくえ』が大好きだ。前作『夜のピクニック』も原作とは違うけど、もうひとつの長澤ワールドを展開していて大好きだ。スピン・オフ作品の『ピクニックの準備』も含めてひとつの世界が出来ていて、そんな世界にすっぽり嵌り心地よい時間が過ごせた。
彼のよさはそんな世界作りがしっかりなされているところにある。『青空のゆくえ』の子供たちの成長を見守る連作を作る . . . 本文を読む