ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第4節FC東京vs柏レイソル@味スタ20160717

2016-07-18 21:42:17 | FC東京

晴天の福岡から、空路東京へ。

夏休みの締めくくりはだいたいいつも強行軍で、旅の地から一気に東京に帰ります。なんだか遠方からホームにやってくるような感覚です。例年は長距離ドライブでしたけど、今年は空路なので楽です。

夏休み最後のイベントは、またJ1リーグに戻って、今日は柏です。先週クリスティアーノが抜けた甲府と闘ったばかりで、今度はクリスティアーノが帰還した柏です。結局クリスティアーノと同時期に対戦するのですから、なんだか因果ですね。本日のYou'll Never Walk Alone♪

イニシアチブを取りにきた柏を完全封鎖して逆にオーガナイズできた東京でしたけど、ワンミスに泣きました。

東京はオリンピック代表壮行メンバーです。シフトは4-4-2。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBはオリンピック代表の室屋と徳永。ボランチはヨネと秀人。メイヤは右に今日は拳人左にオリンピック代表の翔哉。2トップはバーンズとムリキです。

柏は前節大谷が戻ってベストメンバーです。シフトは4-2-3-1。GKはオリンピック代表の航輔。CBは進之介と雄太。SBは右に湯澤左に輪湖。ボランチは大谷と栗澤。WGは右にIJ左にクリスティアーノ。トップ下は中川。1トップはディエゴ・オリヴェイラです。

朝日さんが「もう何が良くないのか分からない。困った」という主旨のことをツイートされてましたけど、まったく同意です。良いサッカーをしているのに、もはやついてないとしか思えないほど、結果だけが伴いません。大國魂神社にもう一回行って、お祓いをしたほうがいいんじゃないかな。

ひさびさに観た下平柏は進化しています。達磨柏への回帰からスタートした下平体制でしたけど、その真髄である変態ちっくな中盤の逆三角形のイメージは残しつつ、よりトレンドを取り入れたかたちにアジャストしてきています。下平さんがホントにやりたいサッカーに近づいているのかもしれません。

柏はキックオフからラッシュを仕掛けます。おそらくイニシアチブを握るための、いわゆるかましだろうと思います。柏の闘いかたを考えると、ボールを保持して攻撃権を持ち続けることで試合を優位に進めるという、横綱相撲的な志向ですので、先制するととても安定的に試合を進められるのだろうと思います。なので先制点の意味が、他のチームに比べると比重が高いと思います。今のトレンドは、リードするとリトリートして相手の攻撃を壊しつつ、試合を安定させることです。それに対し下平柏はとても個性的で、逆にポゼッションを高めて見た目にも主導権を持ち続けようとします。なので、序盤のラッシュは先制を狙った色気も多分に含んでいたと思います。柏の狙いはボール回しのパスミスです。とくにバックパス。中盤のボールホルダーにプレスをかけつつ、受け手を狙います。なまじなクオリティのチームだったら、たしかに一度くらいはミスをするかもしれません。そこのところは東京です。守備的な選手全員が、プレスに対してまったく動じず、秋元を含め、悠々とセーフティにボールを進めます。

ところがこれが柏のラッシュのホントの狙いです。東京が安定思考になって、ボールとともにリトリート傾向になること。そして柏は全体を押し上げます。その上で、東京のクリアボールを受け、ポゼッションをはじめます。柏モードのスタートはここからです。

柏のシフトはベースはおそらく4-4-2なのでしょう。守備モードのときは、IJが右クリスティアーノが左のメイヤに入り、4+4の綺麗な2ラインを敷きますので、これが基本シフトなのでしょう。でも攻撃に入ると、達磨柏の名残りがちょこっと顔を出します。CBが左右に開き加減になります。これでSBを中盤まで押し上げます。ボランチのどちらかがCBの間に入ります。ですので、攻撃時には3バックのようなかたちになります。マリノスと同じ考え方ですね。今日は栗澤が下がることのほうが多かったです。中川がトップ下の位置に下りてきます。大谷が栗澤と中川の中間に入ります。前線は3トップの並びになります。IJは右クリスティアーノは左のラインに張り付きます。オリヴェイラが真ん中に残ります。ちょうど大谷と中川を中に入れた大きな円を作ったようなかたちに見えます。

ボールの出し手は後ろの三人、進之介、栗澤(大谷)、雄太です。このかたちのメリットは、全方位的に攻撃ルートを作ることができることです。なので柏には決まった攻撃パターンのようなものが無いのだと思います。相手との力関係とその時の状況で、優位性を持てた局面がそのままチャンスになるのだと思います。ゆえに柏の攻撃はゆっくりとパスを回しながらも隙を伺い続けます。どこかしら、柔和な顔をして懐にあいくちを飲んでいる市井の渡世人のような風情があります。

当然のことながら、デメリットがあります。達磨体制から続くことです。柏自身が選択していることなので、問題点というよりかは覚悟だと思っていいでしょう。パスを回すこと、すなわちパスの出し手と受け手の距離感を大切にすることを優先しますので、アグレッシブな動き、たとえばラインの裏のスペースを狙って走り込むとか、ダイナミックなポジションチェンジとか、ダイアゴナルなランニングとか、そういった類のプレーがほとんどと言っていいほど見られません。このため柏の攻撃は、パスをひたすら回し続ける消極的なものに一見すると見えます。好みの問題ですけど、一般的に日本人はシンプルでダイナミックなカウンターサッカーを好む傾向にありますから、場合によっては90分間ひたすらパス回しを見させられることに対し、イライラする人もいるかもしれません。ところが柏サポはこの優雅なサッカーを受け入れているのですから、サッカーに対する多様性が、もしかするとJのなかで突出してあるのかもしれません。少し引いて考えてみると、この闘いかたは攻撃のバリエーションが豊富ですから、観戦しながら攻略法を考えられるおもしろさがあるので、思考的なサポには向いていると思います。今年は真逆なスタイルに取り組む方向性で入りましたけど、はやばや下平体制への変更を選択しました。もはや柏のDNAとして、このサッカーが染みついていると言って良いと思います。柏のこの変態な個性をこのまま続けて欲しいと願います。

東京は柏対策を仕込んで臨みます。ポイントは秀人です。柏のパス回しは広島に似ています。大谷が円の中央に入って、後方とパスを交換することでリズムを生み出します。つまり、大谷が柏の鼓動の心臓部に当たります。東京はまず、このリズムを崩すことを試みます。90分通じて、大谷にちょっかいを出します。それが秀人。通常東京は4+4の2ラインを維持しますけど、今日は柏に攻撃権が渡ると、秀人だけ大谷にプレスを仕掛けます。もちろんトランジションを図ったものではなく、リズムを壊すとともに、柏の攻撃ルートから中央を断ち、かつ左右どちらかに誘う効果を狙っていたのだと思います。

さらに今日秀人を起用した意味は、中川対策だと思います。柏がのらりくらいの変態ポゼッションスタイルですから、中盤でのハイプレスは却って柏に弄ばれるリスクがあります。なので、文字通りアンカーのようにどっしりと危険の芽を断てる秀人を真ん中に置いたほうがメリットが高いのでしょう。柏の中央の攻撃ルートは中川だと思います。サイズのことを言うと中川に怒られるかもしれませんけど、秀人と中川の中盤でのマッチアップはさすがにミスマッチ感が見た目にもあります。中川だけでなく、オリヴェイラが中盤に下がってパスを受けるシーンも時々ありますけど、秀人であればパワー負けする心配がありません。今日は秀人が中盤の守備に君臨します。

そのため柏は、中川を経由して、より高い位置で攻撃を仕掛けることができません。オリヴェイラにつけても、そこには代表CBが待ち構えていますので、ポストが安定しません。必然的に柏の攻撃はサイドに流れていくことになります。右は湯澤を基点にIJを奥に走らせるパターンです。左はよりマルチになっていて、輪湖から前のクリスティアーノか、直接クリスティアーノにつけて仕掛け、もしくは輪湖のオーバーラップを引き出してクロスもあります。なので、右の場合は、湯澤とIJに中川を含めたコンビネーションが整っていることが優位性の条件になります。左はクリスティアーノのコンディションにつきるでしょう。

左右で攻撃の特性が異なる柏ですけど、東京は十分にゾーンで対応します。左では、翔哉が湯澤の選択肢を断ち、徳永がIJの攻撃ルートを消します。右はクリスティアーノの関係で、左よりもマンマークの要素が高くなります。クリスティアーノに対しては、中盤では拳人、ディフェンシブサードでは室屋がしっかりケアし、結局クリスティアーノらしい独力の仕掛けは完封しました。柏の特長のひとつはサイドプレイヤーのクロスの精度ですけど、今日は有効なクロスがほとんど無かった印象です。結果的に柏はチャレンジングなプレーがまったくと言っていいほどありません。CKが1本に終わったスタッツが柏の内容の薄さ、チャレンジの無さを如実に表していると思います。

こうして東京は、柏をただパスを回させるだけの消極的なサッカーに封じ込めることに成功します。そして攻撃に転じます。今日は翔哉を使ったので、てっきり翔哉システムにしてくるのかなと思いましたけど、攻撃方法は基本的に変えません。今日の攻撃は、いくつか見せた攻撃パターンのうち、1stの終盤のかたちに近いものを選択します。東京の狙いはSBの背後のスペースです。そこにバーンズとムリキ、あるいは室屋と徳永を走りこませ、アタッキングサードに侵入する狙いです。なので、中盤のサイドで基点が必要になります。拳人と翔哉が担います。

拳人にしろ翔哉にしろ、もちろん基点のタスクを十分にこなせると思いますけど、個性はアタッカーですから、二人とも物足りなさはあったかもしれませんね。とくに翔哉は、独力で仕掛けることで能動的にアクシデントを作り出すスタイルですので、いっそうプレーして無い感があったかもしれません。結局翔哉が翔哉らしく仕掛けるシーンは一度も見られませんでした。翔哉は試合に出続けて技術とリズムを身につけるタイプのような気がするので、ただでさえ試合に出られない状況でチームを離れるのは、長い目で見たときにプロとしてちょっとリスクなんじゃないかなと心配です。もちろんブラジルで絶対的なプレーを見せたらむしろビッグチャンスになるのでしょうけど。

とはいえ、この東京の攻撃は機能します。もともと柏が攻撃権を持ち続けることを志向するのは、ようするに守備をしたくないわけで、つまるところ守備力がそれほど強くはないと推測することができます。SBは、左右どちらかはCBタイプを置くことが多く、今日の湯澤と増嶋もその考えに沿ったものだと思います。これは守備の強化を意識したものだろうと思いますけど、実態が伴いません。東京はおもしろいように柏の背後を取ることができていました。

なので東京はアタッキングサードに入ることは、いつになく容易です。サイドアタック基調といっても単純なクロスの放り込みではなく、ペナルティエリアに入って仕掛けます。今日もバーンズが独力でゴリゴリと行きます。そろそろバーンズ先生と呼びたくなりました。これでゴールを量産してくれたら東京初の大先生の称号を贈ることも考えるのですけど。さらに中盤からヨネと秀人も上がって、厚みをかけた攻撃を展開します。最終盤で息切れするまでは、攻撃の時に柏のクリアボールを拾い続け、多重攻撃を仕掛けることができていました。しっかりと攻撃をシュートで終えることも出来ていました。

というわけで東京は、ホントに素晴らしいサッカーを展開します。それでもゴールが決まらない。冒頭にも言いましたけど、何が悪いのかホントに分からなくなってきました。あえて言うと、ゴールに対峙しているのにパスを選択するシーンが何度かあります。これは東京の伝統芸でもあるので今にはじまったことではないのですけど、結果が伴わない状況のなか、目立って見えます。それから今日に関しては、柏がポゼッションスタイルなので、得点確度の高いカウンターのかたちに持ち込むことができなかったことも要因だと思います。なので、チャンスであっても完全にフリーになる選手がありませんでした。その点では、柏の意図のひとつに封じられたのかもしれません。前半はスコアレスのまま終了。

後半から、柏が少しアジャストします。全体的な闘いかたに変化はないのですけど、局面でのコンタクトが見えるようになります。なのでにわかに試合が激しくなったように感じました。とくにオリヴェイラがモリゲとまるに対して積極的にコンタクトするようになります。このこと事態にどんな効果を期待したのかわからないけど、さすがに前半の出来は、下平さんは温く感じたのかもしれません。

それから、IJとクリスティアーノをターゲットにした長めのボールが混ぜられるようになります。これは縦への推進力を作りだす意図だと思います。それとともに、東京に攻撃権が渡る時間が長くなってきていたので、もう一度柏のリズムを取り戻すことも狙っていたと思います。そして、そのアジャストがはまります。

58分。輪湖のスローインから。輪湖から受けた進之介は雄太に渡します。雄太はルックアップ。この時最前線では、ラインに張り付いていたオリヴェイラとクリスティアーノが、ポストを受けるかたちで下がる動きをします。東京はこれに合わせてラインを上げます。でもこれはフェイクです。オリヴェイラとクリスティアーノは反転、裏に抜けようとスタートを切ります。これを見た雄太はクリスティアーノにフィード。室屋はフェイクにつられてクリスティアーノにつけません。クリスティアーノはフリーで内にフリック。落下点にはオリヴェイラにモリゲとまる。フリックはまるがカットしてオリヴェイラには届かず、さらにモリゲが拾います。モリゲはおそらく徳永に渡そうとしたのだと思いますけど、これがショートします。この時徳永の背後からIJがペナルティエリアに上がっていました。ボールを見ていた徳永はIJに気付かず。IJはコロコロ転がるボールを拾って右足でたたき込みます。東京0-1柏。

つくづくサッカーはミスのスポーツですね。オリヴェイラの対応までは十分でした。イーブンボールを拾ったモリゲの体勢が不十分だったのでパスがショートするのですけど、モリゲらしくなく、ちょっと急ぎ過ぎたかもしれません。そこにいることが十分予測されるIJを意識していなかった徳永のミスでもあるのですけど、モリゲのパスが通常通りに来ていたら、逆に徳永はフリーで攻撃に転じられるわけですから。おそらく徳永はそう考えていたのでしょう。

ちょっとさすがに、今日もまたか感が否めませんね。内容では柏の意図を完全に封じていたので、柏にゴールの匂いはまったくしていませんでした。なので失点は想像もしていません。むしろ攻撃の作戦がはまっていたので、時間の問題かなと思っていました。その矢先の縦ポンからの失点で、脱力感がありました。ホントにお祓いに行ったほうがいいんじゃないかな。ヒロシが動きます。徳永に代えて広貴を右メイヤに投入します。拳人が右SBに下がります。前線にダイナミックな動きを加えたかったのだと思います。攻撃はパワー勝負を挑んでいましたので、攻撃ルートは比較的シンプルだったのですけど、それでは最終局面で崩しきれないので、ダイアゴナルな動きができる広貴でひっかき回そうということだと思います。

ゴールといえば、頼みの綱のひとつはセットプレーです。今日の柏は対策を施してきました。セットプレーに対し、珍しいフルゾーンで守ります。東京対策なのか普段から柏はこの考え方なのか分かりません。いずれにしろ、東京が得意とする二列縦陣のセットプレーに対し、ゴール前をひと垣で固める作戦は有効でした。東京はショートコーナーを多用して打開しようとしますけど、ひと垣を潜り抜けることはついにできませんでした。

直後に下平さんが動きます。湯澤に代えて増嶋を同じく右SBに投入します。ちょっと意図がわからなかったのですけど、もしかしたらアクシデントで、湯澤がどこか違和感があったのかもしれません。守備の強化も考えてのことだろうと思います。

この時間帯に一気にベンチワークが慌ただしくなります。ヒロシが動きます。翔哉に代えて相太をトップに投入します。バーンズが左メイヤに回ります。バーンズをフリーにするために、ひとつ下げる意図だと思います。それから、ターゲットマンを前線において、より高い位置で基点を作ることも含んでいると思います。

下平さんが動きます。輪湖に代えて山中を同じく左SBに投入します。これも意図がよくわかりませんけど、SBを両方とも代えたということは、今の柏の闘いかたはSBの負担が大きいのかもしれません。連戦ですからコンディションを考慮したのだろうと思います。

さらに下平さんが続けます。大谷に代えて祐介を同じくボランチに投入します。これは復帰したばかりの大谷のコンディションを考慮したのだと思います。

ヒロシも続きます。バーンズに代えて慶悟を同じく左メイヤに投入します。これもバーンズのコンディションを考慮したのでしょう。バーンズは今、東京の攻撃の最重要キーマンですので、できれば長くプレーしてほしいのですけど、連戦ですからそうもいかず。しかも日本のこの湿気ですから。

バーンズが下がったことで、ムリキにボールを集めて突破を試みます。柏が守備を意識したこともあって、最終盤は東京が攻撃権を持ちますけど、リトリートした相手を崩すほどのクオリティがありません。さらに、中盤のボールへのアプローチも遅れ勝ちになってきて、こぼれ球を拾えなくなります。なので多重攻撃ができず、柏に攻撃権を渡し時間を使われるようになります。

最後は柏のコントロール下に置かれ、むしろ時間を追うごとに得点の匂いが薄まっていきます。そしてこのまま試合終了。東京0-1柏。

基本的にポジティブであろうと思いますし、勝敗に対して鷹揚なほうなのですけど、さすがに似たような敗戦が続くとしんどいです。明確な問題点があっての敗戦であれば、課題が見えますからまだ楽というか、受け取りかたが容易なのですけど、今はサッカーそのものが悪いわけではないので、がんばっている選手とスタッフのことを想うと、いっそう切ないですし、辛いです。ただでさえACLのせいで編成過多というリスクがあるなか、チームに迷いが出なければいいのですけど。

見方を変えると、ほんのちょっとしたきっかけで流れが変わると思います。守備の不運やミスはつきものとして、総失点数も悪い数字ではないですから、やっぱりゴールですね。アテンプトが無いわけではないので、もうそのうち決まりはじめることを信じてシュートを打ち続けるしかないでしょう。今たしかに、誰にシュートを打たせるのかが決まってなく、シュートに持ち込む最終局面のパターンができていません。何かのきっかけで見つかるかもしれないので、とにかく信じてやり続けるのみだと思います。

リオオリンピックの日本代表は今日で遠征前最後の試合になりました。翔哉、室屋、航輔には力いっぱい頑張ってきてほしいと思います。いっぱい宝物を身につけて、大きくなって帰ってきてほしいと思います。

夏休みの最初と最後がどんよりな結果になってしまったけど、心配された雨にも合わず、楽しい九州旅でした。夏休みはあっという間だなあ。次はルヴァンで9月。行く夏を想って、今度は勝ってウキウキ帰りたいものです。


2016J2リーグ第23節ギラヴァンツ北九州vs松本山雅@本城20160716

2016-07-18 14:32:59 | サッカー

あいかわらずまとわりつくような湿気が九州北部にただよいます。案外嫌いではないのですけど。

夏休みの九州旅で最後に訪れたのは、北九州は小倉。

小倉は祭りのシーズン。祇園太鼓です。

街中にお囃子の音が響いていました。

小倉城の競演会場。

初めての小倉城です。

小倉城大手門付近の石垣は、良しが大きくてびっくりしました。

小倉城は虎。とらっちゃです。

祇園太鼓の熱気溢れる小倉を離れ、主目的は今シーズンがラストイヤーとなる本城陸上競技場です。

本日は北九州vs山雅。来てから気づいたのですけど、そういえば先月松本で観た組み合わせのリターンマッチを偶然観ることになりました。祇園太鼓♪中央線♪

暑さゆえか低調な山雅でしたけど、粘り強くリードを守り切る強さを見せました。

北九州は刀根が戻ってベストメンバーです。シフトは中盤スクエアの4-4-2。GKは阿部。CBは刀根と寺岡。SBは右にJリーグ100試合出場の星原左に石神。ボランチは宏希と新井。メイヤは右に小手川左に川島。2トップは一樹と池元です。

山雅は喜山が不在ですけどどうしたのかな?。喜山以外はベストメンバーです。シフトは3-4-2-1。GKはシュミット・ダニエル。3CBは右から後藤、飯田、安川。ボランチは岩間と宮阪。WBは右に飯尾左にあんじゃん。2シャドウは右に浩平左に石原。1トップは高崎です。

北九州はトレンドに沿ったオーソドックスなサッカーを展開します。守備は4+4の2ラインで作る守備網で、ゾーンで網目にかける守りかたです。ラインの位置は高めですので、中盤でトランジションしてショートカウンターにつなげる狙いでしょう。極端なフォアチェックはなく、ショートカウンター期待と言っても運動量に起因する慌ただしいサッカーではありません。むしろ気品すら感じます。

北九州の攻撃はサイド偏重です。小手川、川島とも独力突破型のウインガータイプではなく、ボールを保持して時間を作るチャンスメーカーです。ですので北九州のサイドアタックは、メイヤを一次基点にして、その奥をアタッカーに狙わせる作戦だと思います。

アタッキングサードのサイドを狙うパターンは二つ。ひとつはSBのオーバーラップです。北九州のサイドアタックは、左右に偏ることはなく、シンメトリーでバランスが取れています。守りかたもまた然りなのですけど、幸一さんのサッカーのキーワードはバランスなのかもしれませんね。もしかしたら地位や嗜好性に偏ることのない、普遍的なサッカーをすることで、これからサッカー文化を育てようという地域に、サッカーの基礎を宿らせようとしているのかもしれません。そう感じさせるほど、北九州のサッカーはクセがなく、綺麗です。

言い方を変えると、コクがないサッカーとも言えます。実際のところはチームの個性を生むほどの編成ではないからなのでしょう。個で勝負できないならコレクティブに行こう、というところなのかなと思います。それに、北九州の地位で個性に依存することは、メリットもありますけどデメリットのほうが大きいでしょう。例えば大分はヨーロッパやJ1でも活躍するタレントを多く輩出してきましたけど、彼らが大分を去るとチームが方向性を見失います。セレッソもまた然り。もちろんタレントがいる間がビジネス上のビッグチャンスではありますけど、今稼ぐことに忙しく、未来のために行動する余力は北九州にはないだろうと思います。

雨予報とは言え、本城の観客は3,125人です。相手が山雅なのでアウェイ席が比較的入っていたけど、相手によってはもっと厳しい状況でしょう。来年はJリーグ最高の環境が整った北九州スタジアムに移りますからハードは十分です。肝心のソフトを豊かにするためには、花火的な個性ではなく、しっかりとサッカー文化そのものを根付かせる必要があるのでしょう。幸一さんのサッカーとギラヴァンツスタッフさんの高いホスピタリティに接して、そんな風に感じました。

そんなオーソドックスな北九州に対して、山雅は2016仕様の山雅サッカーで臨みます。アルウィンで衝撃を受けた2016仕様は、四連勝中のリーグ2位という成果が示す通り、すっかりチームに根ざしているのだと思います。それだけでなく、十分コンペティティブなクオリティを持ちます。

山雅も中盤でトランジションすることを意図した守りかたを基調としますけど、北九州とは志向がまったく異なります。まず山雅はショートカウンターを基本プランとしていません。ビルドアップスタイルです。

後述しますけど、今日の山雅はおそらく絶不調でした。もしくは高湿の悪環境が続く連戦ですので、意図的に省エネにしたかもしれません。対する北九州はむしろ調子が良かったのでしょう。中盤の出足も最後まで衰えなかったので、コンディションは維持できていたと思います。そんなチーム状況のなか、結果的にギリギリ山雅が上回った主因は、宮阪と宏希の差だと思います。90分トータルではむしろ宏希のパフォーマンスのほうが良かったと思いますけど、22分までの宮阪は神がかっていました。

山雅の守りかたは、守備網を維持するゾーンディフェンスが幅を利かせている昨今の風潮に逆らって、三角形のスモールフィールドによるゾーンです。北九州がサイドアタックを志向するので、主戦場はサイドです。シャドウとボランチとWBで三角形を作り、ボールの受け手を囲います。山雅が巧妙なのは、ゾーンにボールを呼び込む追い込み漁を仕掛けることです。パスの出し手に細かなプレッシャーを仕掛け、パスコースを限定しつつ、一本だけ開けます。そうして後方の選手がインターセプトを狙います。宮阪と岩間は受け手の前にすっと入るタイミングがとても良く、面白いようにインターセプトを成功させます。

トランジションした山雅は攻撃を焦らず、宮阪にボールを集めます。山雅も基本的にはサイドアタックを志向しますけど、むしろ宮阪が選択したコースが攻撃ルートと言っていいと思います。ザ宮阪システム。山雅のサッカーが変質したのは、もちろん反町さん自身がチャレンジしたかったのでしょうけど、宮阪の加入が大きいと思います。山形での宮阪は、どちらかというと石さんのサッカーにはまり込んだプレーをしていましたので、プレースキッカーとしてはともかく、それほどコンダクターとして能力を見せていた記憶がありません。岩上の後継はむしろ浩平のほうで、宮阪はこれまでの山雅に無い、異質なプレイヤーです。反町さんが最初から今のサッカーをしようとして宮阪に期待したのか、宮阪が思ったよりも高いクオリティだったので今のサッカーになったのか、いずれ外様の身なので分かりませんけど、結果は宮阪もサッカーも大正解だったでしょう。

この役ができる選手は総じてサッカー感が似ています。基本は中央、無理ならサイド。それを成し得るには、状況察知の視野と攻撃ルートの未来予想図、体内リズム、そして足元の技術精度が全て備わってなくてはならず、なおかつプロレベルでの遂行力が無いと実効性がありません。ようするに宮阪は堅剛クラスに成り得る選手だということです。堅剛もJ2でプロのレベルを実感し、クオリティを身につけた経歴だと思います。宮阪の特長は、いわゆるゲームメーカーのなかでは突出してサイドチェンジのパス精度が高いことでしょう。ただ高精度なだけでなく、タイミングとコースがとても良いので、相手を左右に揺さぶるだけの威力を持ちます。そんなサイドチェンジから先制ゴールが生まれます。

10分。後藤から右ライン際にはっている宮阪へ。右足で持ち替えた宮阪はルックアップ。この時北九州は4+4の2ラインが綺麗に揃ってます。山雅は宮阪の前方ライン際に浩平。右寄りのバイタルエリアに高崎。中央に岩間。ラインの左側に石原が張り付いています。大外にあんじゅんがいて、北九州がラインをボールサイドに絞っているので、フリー。通常ですと選択肢がないので後ろに戻すのですけど、宮阪には未来予想図が描けていたのでしょう。宮阪は大外のあんじゅんにクロスオーバーのミラクルサイドチェンジを送ります。これで山雅は前に、北九州は下がって受けるかたちに一瞬で状況が変化します。トラップしたあんじゅんはルックアップ。ニアに石原、ファアに高崎が入ってきてます。あんじゅんの選択は高崎でした。高崎はマッチアップする刀根が下がり加減の難しい対応だったのをつき、先にジャンプします。フリーで翔んだ高崎が頭で合わせました。北九州0-1山雅。

この時の宮阪の視界と認識を再現できるものなら、ぜひ観てみたいものです。たしかにあんじゅんはどフリーだったのだけど、なまはんかなサイドチェンジでは、もとよりコンパクトさが信条の北九州の守備網は、すぐに右サイドに寄せて、簡単に対処したことでしょう。あんじゅんが選択肢を持ち、なおかつゴール前に緊迫感を生む、そんな威力あるサイドチェンジはなかなか観られるものではありません。あの宮阪のパス一本で、山雅サポのみならず、今日本城にいらしてた、北九州サポ以外のお客さんは十分満足できると思います。そして、山雅が一気に突き放します。

22分。あんじゅんのスローインから。あんじゅんは、前線で石原が左に流れるのに寺岡がついていて、刀根と寺岡の間にスペースができているのを見て、ロングスローをそこに送ります。寺岡の反応は石原より良く、かつボール寄りをとっていたのですけど、石原はスプリントの初動が速いのか、スルスルっと寺岡の背後から前に出ます。寺岡はバウンドに合わせようとしたのかもしれませんね。ボールを拾ったのは石原でした。石原は阿部の動きを見て、左足で流し込みました。北九州0-2山雅。

2点リードした山雅はBプランに移行します。てか、もともと今日のAプランはここからのサッカーだったかもしれません。なにしろ五連戦を経験した直後ですから、コンディションの問題は、これは双方に言えることですけど、少なからずあると思います。山雅は省エネモードに入ります。とくに、ここまで大絶賛した宮阪がどろんと消えます。攻撃面で、示唆に富んだ知的で高精度なチャンスメークプレーが、急にばったりと見られなくなります。宮阪のプレーもさることながら、宮阪のイメージを具現化するアタッカーにも、コンディション面で負担がかかっているのかもしれません。山雅はリトリートします。

山雅が下がったことで、つっかえ棒が外れたように、北九州に攻撃権が渡ります。ただ、いきなり攻撃権をもらえたので、北九州はスムーズに本来の攻撃モードに移ることができません。サイドで基点を作ったビルドアップというよりかは、散発なアタックを繰り返します。ところがその流れのなかで、一発のミラクルパスがチャンスを生みます。

40分。ボールを持って上がろうとする新井を高崎がプレス。新井はたまらず小手川にパス。フリーの小手川は中央に寄っていき、川島にパス。フリーの川島はルックアップ。ラインを越すイメージのフィードを送ります。これが絶妙でした。飯田がジャンプしますけどギリギリ触れず、ちょうどシュミットとラインの間に落ちます。そこに走り込んでいたのは池元でした。池元はシュミットの動きを見て、冷静に右足で流し込みました。北九州1-2山雅。

競技場内のDJのアナウンスでもありましたけど、前半のうちに1点返せたことは、後半に向けて期待を生み出すことができたと思います。山雅のリトリートもあって、一気に北九州が押し返す雰囲気ができました。前半は山雅リードで終了。

後半に入っても山雅の守備モードは変わりません。北九州はハーフタイムで攻撃の基本プランを再確認したのでしょう。本来の北九州の攻撃ができるようになります。まず中盤を支配するようになります。ちょうど22分までの山雅のように、中盤でトランジションできるようになります。山雅のホスピタルな、なにげないバイタルエリアへのパスを狙って、宏希と新井がインターセプトします。

中盤でトランジションできるようになったので、より高い位置で攻撃ができるようになります。必然、小手川と川島も高い位置で基点を作れるようになります。北九州は、星原と石神を含め、人数をかけた攻撃を見せます。残り45分間ありますので、一気に北九州が追い抜くこともあり得たと思います。

ここで山雅にアクシデントが起きます。高崎が負傷して退場します。代わって大貴が同じくトップに入ります。ただアクシデントといってもトップが入れ替わっただけですので、大勢には影響はありません。

ポゼッションが高まったことを受け、幸一さんが動きます。さらに攻撃に出ます。川島に代えて本山を同じく左メイヤに投入します。ボールを持てる本山を基点に全体を押し上げることと、本山自身のゴールを期待した作戦だと思います。

さらに幸一さんが続きます。池元に代えて塁を同じくトップに投入します。前線にアジリティではなく高さを持ってきて、明確なターゲットを作る意図だと思います。クロスを入れられることも想定して、空中戦での優位性を持ちたかったのだと思います。

さて反町さんが動きます。宮阪に代えてパウリーニョを同じくボランチに投入します。序盤神がかっていた宮阪ですけど、前半途中から音をたてるように消えました。宮阪の確変は長くは続かないのでしょう。むしろ確変を起こせるようなクオリティになってきたことのほうがすごいと思います。とは言え、連戦の疲れもあると思いますので、コンディションを考慮したのでしょう。さらに守備を強化する意図を含め、安定感を優先する作戦だと思います。

幸一さんがなお続きます。小手川に代えて井上を左メイヤに投入します。本山が右に回ります。比較的左右シンメトリーだったバランスを少しアジャストして、右でチャンスメークして左で仕掛けるかたちに徹する意図だと思います。

反町さんが動きます。安川に代えて那須川を同じく左CBに投入します。この意図はよくわからなかったですけど、本山対策かもしれません。もしくは安川のコンディションを考慮したのでしょう。

結局、山雅は耐え抜きます。闘いかたがお洒落に変わってきたとしても、山雅の真骨頂はやはり守備です。その山雅の守備のコアは、なんと言っても主峰飯田を中心としたアルプスのごとくどっしりとした5バックの安定感でしょう。山雅の、ちょっと懐かしさもあるスモールフィールドベースのゾーンは、リトリートモードの時に少しリスクがあるような気がします。スモールフィールドを作るには、持ち場を離れる必要があるのですけど、それはそのまま別のスペースを自ら作ることになります。つまり、例えば相手にボールホールド力がとても高い選手がいて、山雅のスモールフィールドゾーンを逆手にとる作戦をとられたら危険かもしれません。

とはいえ山雅の守りかたは長年積み重ねたものなので、リスクマネジメントはしっかりしていると思います。今日は極端に守備を意識したモードになったので十分にアジャストし切れていなかったのかもしれません。ディフェンシブサードに入る手前の守備がちょっとバタバタしたように見えました。今後の課題かもしれません。

後半はほぼ一方的に北九州に攻められましたけど、耐え抜きました。北九州1-2山雅。アルプス一万尺♪

五連勝。これこそが、強さを身に着けた山雅の底力の証明なのかもしれません。悪いなら悪いなりに、一番自信があって安定的なやり方を選択し、しっかりと遂行する。山雅はそんなコンペティティブなプレーをチームとしてできるようになっています。

さらに、取れるときにきっちり得点できるようになっているのも強さの秘訣でしょう。その意味では、チームも個人もチェンジ・オブ・ペースができていて、今日はそれが顕著な試合だったのかもしれませんね。札幌独走かと思いましたけど、頂上決戦を山雅が征してから、一気に三強対決の流れになってきました。最終的には安定感を見せたほうが戴冠するような気がします。セレッソは先日熊本で強さを観ることができたので、ぜひ札幌の現在地も観てみたい。次節はいよいよ、その札幌と山雅が頂上対決です。今年のJ2のベストマッチが表裏ともミッドウィークなのは残念ですけど、ぜひ多くのお客さんにドームに足をはこんでもらいたいと思います。楽しみです。

九州旅のイベントはこれにておしまいです。最終日は最後のイベント。東京に帰ってJ1です。