ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第5節川崎フロンターレvsFC東京@等々力20160723

2016-07-24 16:55:41 | FC東京

大丈夫。俺たちの東京は大丈夫だ。これからも俺たちは東京を支えるのみ。

突然の城福監督の解任に無念の想いがします。一度大きな挫折を経験したかたの再挑戦はJリーグでは前例がないだけに、失敗を糧にがんばるひとの目標になると思って期待していたのですけど。いずれにしろ、ぼくらは東京を見守り、応援するのみです。城福さんラストマッチとなった川崎戦を、希望を持って振り返ります。

 

今月の中旬から冷夏が東京にやってきています。梅雨明け前の最後の前線の粘りなのか、どんより雲が切れません。過ごし易いけど、夏はやっぱり暑くないとね。

今日は恒例の多摩川クラシコの2ndレグ。アウェイのクラシコはあまり良い想い出がないので、珍しく勝てる気がしません(^^;。なにより心配なのは、イベント大好き川崎にしてイベント要らずのクラシコのはずが、シン・ゴジラとタイアップしていたことです。しかも、試合前の演出にクラシコ感がほとんどなく、たとえば選手紹介のときも恒例のクラシコBGMがありませんでした。なにげにヒロシダービーでもあるのに、むしろゴジラにフィーチャーしていて、川崎がクラシコを見限った感があります。実際の数字は分からないけど、アウェイゴール裏が珍しく完売していないところを見ると、川崎というより東京サポに要因があるような気がします。

間近で長谷川博己さんを観られたお得感はありましたけど(((o(*゚▽゚*)o)))。本日のYou'll Never Walk Alone♪

川崎の雨あられのシュートに耐えましたけど、スミイチに沈みました。これでリーグ三連敗。クラシコ三連敗。等々力では2012年以来勝ちがありません。

東京は室屋がリオオリンピック代表で抜けます。それ以外はベストメンバー。シフトは4-4-2。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは徳永と諒也。ボランチはヨネと拳人。メイヤは右に広貴左に慶悟。2トップはバーンズとムリキです。

川崎は俺たち小金井の星憲剛がはやくも戻ってきました。靭帯を痛めて4週間の離脱と聞いて心配していたのですけど、思ったよりもはやい復帰で嬉しかったです。なにしろ憲剛がいるといないとでは川崎はぜんぜん違いますから。川崎も大島がリオオリンピック代表で不在。シフトはここのところスタンダードになってきている4-2-3-1。GKはチョン・ソンリョン。CBは谷口と井川。SBは右にエウシーニョ左に車屋。ボランチは憲剛とエドゥアルド・ネット。WGは右に悠左に晃司。トップ下は大塚。1トップは大エース嘉人です。

攻撃に時間と人数をかける変わりに守備のかたちがついになかったポポさんに二年。ロジカルな守備を構築する変わりに攻撃のかたちがついにできなかったフィッカデンティさんに二年。振り子のように振られた四年を経て、安定感のある守備力の延長に攻撃を加えることを志向した2016年ヒロシ東京です。プロセスは真逆でも、志向そのものは、五年間の相違を経て、東京と川崎は交わり合います。

つまり、東京と川崎はアプローチこそ違えど、志向するものが似てきていると思います。こと攻撃に関して、フィッカデンティ体制では川崎の攻撃に対し完全に受けに回っていたのが、今年はイーブンにポゼッションすることを目指します。いちおう、目指してはいます。

結果的には、川崎の完成度の高さの前に東京は屈します。この違いは何か?。フィッカデンティさんのおかげで、ぼくらは守備のロジックを学ぶことができました。今度は、攻撃のロジックを学びたいという欲求が当然出てきます。フィッカデンティさんはついに教示してはくれませんでした。ヒロシも、抽象的で印象的なことばが先行して、就任以来7か月、依然として具体的なかたちを見せてくれていません。ヒロシのことばは分かり易いのだけど、具体性がないので誤解を生みます。けしてヒロシはことば使いが上手いほうではないと思うので、割り引いて見てあげる必要があると思います。

7か月という時間が長いか短いか。第一次体制のヒロシとは、編成もヒロシ自身が表現するサッカーも異なっていますし、安間さんをはじめとするサポートスタッフがいるといないとでは表現するサッカーのディテールが違ってくると思います。あくまでも第二次はリストアではなくリボーンと見たほうが良いと思います。もちろんヒロシが責任を持つのでしょうけど独裁ではなく、今は前例が無い、篠田さん、安間さんとの合議制と見たほうが良いでしょう。試合中に篠田さんが指示を出すシーンも多いですし。とすると、7ヶ月はやはり、まだ7か月と言ったほうが妥当だろうと思います。結果が伴わないのでサポーターが焦るのは必然だとは思いますけど、J1で十分に闘えるクオリティになるためには、まだまだ積み重ねるべきものがあるということだと思います。

2016年7月時点での東京と川崎のクオリティの差は、何に寄って生まれているのか。答えは誰が考えても同じだろうと思います。継続性と選手の質。結果だけを問うのであれば、八宏川崎は5年目にしてノータイトル。比較的安定した闘いをしているのですけど、5年間で三連敗は三度経験しています。昨年までは華麗な攻撃に重点を置き過ぎるあまり、守備の致命的なもろさも合わせ持ち、強さを感じさせない印象がありました。今年変質した川崎は、八宏さんのエキセントリックなロマンチシズムに依存することなく、それに加えて現場の選手自身とサポートスタッフがリアリスティックなサッカーを味付けする取り組みをしてきたのだと思います。編成も、八宏さんと選手が目指すサッカーを具現化できるよう、とくに守備面の強化を目指したと思います。それが見事にはまり、1stステージの躍進につながったと思います。

なんとなく仮説で感じているのは、守備の構築はプロレベルでは案外容易なんじゃないかということです。コレクティブな守備のやりかたは、ある程度は教本のようなものがあり、スタンダード化しているのだと思っています。ディシプリンやモチベーションさえあれば、ある程度守り抜くことは、選手のクオリティ差があってもそれなりに出来るのではないかと思います。川崎が、俺たち守ったら強いんじゃね?と取り組みはじめてすぐに結果が出たことで、自分のなかで確信になっています。優勝した頃の柏とガンバも然り。広島は真髄。見方を変えると、攻撃の構築は、より多くの時間がかかるということではないかと思います。東京は二年間それをサボってきましたし、それ以前もボール回しは巧みでもゴールハント力は無かったですから、今年ようやく取り組みはじめた初年度と言っていいでしょう。一方八宏川崎は、こと攻撃に関しては、柱はブレることなく5年目を迎えます。初年度と5年目の継続性の差は、今日の平場での闘いで目に見えて実感します。

もうひとつは選手のクオリティです。もちろん個々の選手は東京も川崎とまったく遜色無いばかりか、場合によっては東京のほうが高い質を持っています。ただ、東京には憲剛も嘉人もエウシーニョもいません。この三人がいることを前提とした攻撃プランを継続することで、川崎は現在のクオリティを持ち得たと思います。もし単純に今監督を入れ替えたとしても、八宏さんが東京で今の川崎と同じサッカーを築けるとは到底思えません。八宏さんのロマンチックなサッカーの実現に憲剛と嘉人とエウシーニョがジャストフィットだった偶然性によってチームプランのビジョンが決まり、編成が追随したというのが実際のところだろうと思います。その点では、川崎は奇跡のチームだろうと思います。

川崎の攻撃を見る前に、今年の川崎の進化要因である守備の特長を見ていきます。守備網の維持を優先する昨今のトレンドに対し、川崎の守りかたは個性的です。サイド基調の東京しかベンチマークの対象がないので川崎の基本的な守備プランを知りようがないのですけど、川崎はサイドに人数をかけた守備をしかけます。東京がサイドにボールを出すと、川崎はボールホルダーのケアだけでなく、周囲のパススペースに人数を配置します。なので、守備網を俯瞰すると、ボールサイドに偏ったかたちになります。ただし、東京が攻撃をリセットした場合であっても、守備陣形の変態から状態への移行がとてもスムーズではやく、サイド偏重な守りかたでもリスクはありません。この一点豪華主義的な守りかたと基本主義陣形への戻りという形状記憶力が、今年の川崎を支える要因なんだろうなと思います。

もう一つ今日の川崎の守備を安定させていたのは、圧倒的な制空権です。担っていたのはネットです。ネットはことごとく空中戦を征します。ただ高さがあるだけでなく、落下点への入りかたや体の使いかたが巧みなので、東京のアタッカーはネットより先に飛ぶことすらできません。さらにネットは、積極的にセカンドアタッカーの役の担って、攻撃参加します。春先に見たネットは川崎独特の変態な動きにはまらず不協和音の要因になっていましたけど、いつの間にか川崎に強さをもたらす最重要な選手になっている気がします。なので、川崎に心配された大島ロスの影響はとても小さいようです。もっとも、川崎サポさんがいつものネットじゃないって仰っていたので、今日は確変だったのかもしれません。

というところで、東京と川崎の攻撃の違いを見てみたいと思います。抽象的なところから入ると、川崎の攻撃は余裕があります。もっとも顕著なのは嘉人です。嘉人は意図的に消えることができます。嘉人のポジショニングパターンは大きく分けて二つ。前線にはるかバイタルエリアに下がるか。バイタルエリアに下がった嘉人は、もちろんパス回しのハブ役として位置しているのでしょうけど、あえてパスが来そうにない時に下がっていることもあります。これはつまり、隠れているのだと思います。言い換えると川崎は嘉人を消す余裕があるということです。嘉人が中盤で消えている分をフォローするのは大塚と晃司の役割です。とくに大塚が嘉人に変わって前線にはります。あるいは中盤を動き回って積極的にボールに触ります。つまり大塚と晃司が運動量とボールへの関与を高めることで二人に視線が集まり、その分嘉人をチームとして消しているのです。東京はこれができません。川崎が嘉人を消すのは、言い換えると嘉人に点を取らせたいからです。最終的なエースシューターを定めていることは、コレクティブな攻撃を構築するための大前提だろうと思います。もちろんいろんな選手がゴールできるほうが攻撃方法の幅を広げることができるのですけど、それはあくまでも主流があるなかでの話。

まず東京の攻撃の問題は、誰にゴールさせるのかが決まっていないことにあります。なので東京は、嘉人のように消えている選手がありません。おそらく現在の編成ではバーンズがチャンスメーカーでムリキがシューターと位置付けるのが自然だろうと思いますけど、ムリキもバーンズ同様積極的にビルドアップに絡みますから、東京は攻撃時に手持ちの駒を常にフル活用する状態になります。これでは守備側が東京の手の内をすべて見えているので、とても守り易いでしょう。もちろん、それでもバーンズとムリキは、相手が分かっていてもチャンスメークできるのですからその点では凄いのです。さらに東京は、広貴と慶悟がダイナミックにダイアゴナルな動きをすることで、相手の守備バランスを混乱させようとしています。それでもゴールに結びつかない以上、バーンズとムリキをもっと活かすかたちを模索する必要はあると思います。

もうひとつの川崎の特長は、状況判断のはやさです。川崎のアタッカーは迷うことなく次々と縦パスをはなってきます。これは、パスを狙いたいスペースに必ず味方の選手が入って来るから出来ることだと思います。これこそ継続性によって得た最大の成果だろうと思います。そしてヒロシが描く攻撃のイメージも、ヒロシのことばから推測すると八宏川崎の攻撃に近いのだろうと思います。ヒロシにこのイメージの構築に向けた実行力があるのかは分かりません。なにしろ第一次体制でも甲府でも見せていませんから。かと言って無理だというのも尚早だと思います。なにしろ東京には、八宏川崎をしてこの攻撃を実現せしめた憲剛と嘉人がいませんから。川崎のアタッカーは、全員が躊躇なくポンポンとリズムの良い縦パスを入れてくるのですけど、動きとリズムには基準があるのだろうと思います。観ていると、リズムを作っているのはやはり憲剛です。憲剛が縦にパスを入れると、観ているこちら側でも容易にシュートまでのアプローチが想像できるビッグチャンスに直結します。そういう状況は、おそらく意図的に作っているというよりかは、嘉人、大塚、悠、晃司が連動して動くことによって偶発的に生まれているのではないかと思います。意図的に作ってもやがてパターン化しますから、攻撃のやり方として普遍性がありません。つまり川崎の凄さは、偶発的に生まれ続けるチャンスを見逃さない状況判断を、チームとして瞬時に行っていることにあります。

もの凄く難しいことをやっているように思えますけど、たぶん現場はシンプルなのでしょう。シューターはようするに常にシュートだけを狙っていて、パサーは常にパスコースを狙っている。これが連鎖することで、攻撃の有効性が生まれているのでしょう。このような状況は、長年継続しないことにはけして生まれるものではありません。テイストは違いますけど、鹿島と浦和の攻撃特性にも同じことが言えます。何度も言いますけど、攻撃方法の構築に関しては、東京はまだ一年生なのですから、長い目で見てあげるべきです。もちろん、現体制でそれが実現できるのかを見定める必要はありますけど、それは基本的に受容する立場の無責任なサポーターがする仕事ではありません。サポーターの民意で監督やスタッフを変えてそれでも上手くいかなかった場合、我々はどう責任を取りますか?。

川崎の凄さはもうひとつあります。それは、川崎がひと度攻撃すると、常に多重攻撃になることです。よく攻撃をシュートで終えるといいますけど、川崎はその上を行きます。結果が見えるまでシュートを狙い続けます。大事なことはセカンドアタッカーの役割だと思います。多くのチームは、ファーストアタックでシュートに結びつける狙いに集中するあまり、その後の攻撃の流れを予測して選手を配置することはありません。もしかすると、これが出来るチームこそ得点力が高いチームなのかもしれません。鹿島や浦和にも同様のイメージがあります。ただ川崎がこれらの上位チームと違うのは、チームとして意図的にやっている感があることです。川崎がシュート状況に入るときは、かならずニア、中央、ファアに選手が分散配置されています。もちろんセカンドアタックのチャンスがどこにどういうかたちで起こるかは分かりませんから、すべての可能性に対し準備しておくことが川崎らしさなのでしょう。これを実現するためにはアタッカーだけでは足りません。ここにこそ、エウシーニョの存在が大きく影響していると思います。エウシーニョはクロスを上げることもできればドリブルで仕掛けることもできます。それだけでなくいつの間にか最前線でシュートに備えていたりします。川崎が攻撃モードに入ったときは、ただでさえどこから攻めてくるか予測がつかないし、多重攻撃なのでプレーが切れるまで安心できないのですけど、エウシーニョが攻撃に絡んでくると、さらに混沌とした状態になって、恐ろしいことこの上もありません。

以上のことから、川崎の攻撃のクオリティのほうが圧倒的に勝っていますから、川崎がシュートを雨のように降らせることになるのですけど、東京ももちろん川崎の攻撃力が分かっていますから準備を怠りません。データを見たわけではないのですけど、川崎の20本のシュートの大部分は、ペナルティエリアの外から打っていた印象があります。それだけシュート意識が高いということなのでしょう。悠や晃司や嘉人がバーに当てるシーンも数回ありましたから、東京の守備プランとして完璧かどうかはわかりませんけど、最善ではあったと思います。川崎と言えど結果的にペナルティエリア外からのゴールは無かったですから、やはり精度と威力が落ちるのだと思います。川崎に攻撃権を渡した際、4+4の守備網をコンパクトに保ち、ゴール前を固めます。これで左右中央どこから来られてもペナルティエリアに侵入することを防ぎます。川崎は判断のはやさを信条としますので、攻撃をスタックさせることなくシュートをどんどん打ってきます。川崎サポの気分になってみるとストレスは無いですけど、結果が伴わないのもまた事実。

攻撃に関しては、東京はまだ川崎のような高度なコレクティブネスを見せられませんから、あくまで現時点でのベターで臨みます。バーンズとムリキの個人に依存した攻撃です。今日もバーンズとムリキは守備側に囲まれてもものともせずボールを保持します。でもいつもと少し違うのは、バーンズにしろムリキにしろ、中央でのプレーが多かったことです。これはどちらかというと川崎の作戦にはまった感があります。川崎は前述の通りサイドを厚くした守りかたをします。必然的に東京の攻撃はサイドから中央に寄ります。このためバーンズもムリキも、普段はサイドに流れることが多いのですけど、中央寄り基調になったのでしょう。

それでもバーンズもムリキもボールを保持できます。川崎の守備陣をボールに寄せておいてサイドに展開する意図なのだと思います。今日はここが難点でした。せっかくバーンズとムリキが一次基点を作ることに成功し、サイドプレイヤーの位置を押し上げることができても、肝心のサイドで川崎の厚い守備網を突破することができません。サイドに出してはトランジションされるシーンが繰り返されます。

というわけで、予想通りに川崎に攻めれらる試合展開になりましたけど、東京の守備プランがはまったことと、完成とは言えないまでも東京にチャンスメークのかたちがそれなりにあるので、ここ数戦のクラシコとは違って四つに組んだガチの闘いに持ち込むことができました。川崎も、川崎基準で見るとけして調子が良いとは言えなかったと思います。いつのもようにリズム良く攻めていたしシュート打てていたけど、キレがないので一発で決まる感がありませんでした。それよりもシュートを打ち続ける攻撃意欲の持続性のほうに期待していくようになった気がします。

ここで東京にアクシデントが襲います。ヨネが右膝を痛めて退場します。嘉人のポストに寄せようとした時に右足で踏ん張り、全体重が右膝にかかってしまったようです。靭帯を痛めている古傷ですけど、不自然に曲がった感じはないので、大事で無いことを祈ります。代わって秀人が同じくボランチに入ります。

高いレベルでかみ合っていた展開だけに、突然秀人が入って守備網のリズムが狂わないか心配しました。でもさすがにそこは東京ですね。前半の残りが少なかったこともあって、守備バランスを保つことを優先します。秀人が入ってむしろ改善したことがあります。ネット対策です。ネットが攻撃参加する際に秀人がケアします。サイズで劣ることがありませんから、川崎の驚異をひとつ消すことができていました。前半はスコアレスのまま終了。

後半も両チームとも闘いかたに変化はありません。互いに高いレベルで作戦遂行しているということだと思います。良い組み合いが続いていたので、ヒロシ、八宏さんとも、なかなか動かなかったことに想いが現れていたと思います。

先に動いたのは八宏さんでした。大塚に代えてエドゥアルドをCBに投入します。谷口が一枚上がってボランチ、憲剛が一枚上がってトップ下に入ります。大塚は十分に機能していたのですけど、チームとしてペナルティエリアに入っていくことができていなかったので、守備網に囲まれた狭いスペースでもチャンスメークできる憲剛を、寄り高い位置で攻撃に絡ませようという意図だと思います。

ところがこれが裏目に出ます。直接的な因果関係は分かりませんけど、この交代を境に一気に東京に攻撃権が渡ります。もしかすると憲剛が中盤にいなくなってボールを持てなくなったとともに、ネットと谷口の守備のバランスが微妙に整わなかったのかもしれません。東京が、拘束具がはずれたようにアタッキングサードに入っていきます。この流れのなかで、秀人からのロングスルーでムリキが抜け出すスーパービッグチャンスが生まれます。結果的に川崎が今年守備力を大きく増したもう一つの主因であるソンリョンがムリキのシュート力に勝ることになりますけど、タラレバを言うのがサポの特権ですから、なによりも残念なシーンでした。八宏川崎の作戦面のミスをつく一点にもなりましたから、もしかすると決まっていたら結果は真逆になったかもしれません。

そこで八宏さんが再調整します。シフトを3-4-2-1に変更します。3CBは右から井川、エドゥアルド、谷口。憲剛がふたたびボランチに入ります。2シャドウは右に悠左に晃司。守備時に5+4のかたちになりましたので、中央とサイドの両方を抑える守備強化の意図もあるかなと思いましたけど、どちらかというと、中央のアタッカーの人数を増やすことと、エウシーニョと車屋の攻撃時の位置を高くする意図のほうが勝っていたと思います。

これが機能します。川崎はふたたび攻撃権を取り戻します。こういうアジャスト力も、五年間の積み重ねの成果のひとつなんでしょうね。軌道修正の目的に対し、方法がきっちりと用意されているのは、試合展開の様相を選ばない柔軟性につながっていると思います。そして、ついに川崎がゴールをこじ開けます。

81分。ペナルティエリア外のゴール正面の晃司のFK。これは壁に当たります。さらに跳ね返りをエドゥアルドがシュートしますけど、これも壁に当たります。こぼれたボールを憲剛が拾います。憲剛は左サイドでフリーになっている車屋に絶妙スルー。車屋は流れのままに余裕をもってルックアップ。すでにペナルティエリア内の攻防です。細かいですけど、こういう丁寧さが憲剛の真髄でしょう。この時ゴール前は、川崎が四枚単横陣で並びます。ニアから晃司、嘉人、悠、ネット。やや遅れてエウシーニョが入ります。対する東京は七枚。数的には7on5の優位です。ただし、実質は車屋に二人ケアに入っているので、5on5のイーブン。さらに大外ネットには誰もついていません。車屋の狙いはもしかしてそのネットだったかもしれません。でもクロスはややショートして、悠とモリゲのマッチアップに向かいます。モリゲは悠の前をとっていたのですけど、そこにエウシーニョが被ってきたので、飛ぶタイミングが一瞬ずれます。結果、悠のほうが高さが勝り、そこにちょうど車屋のクロスが合いました。悠はおそらく狙ってはなく、頭に当てたら入ったという感覚だと思います。川崎1-0東京。

直後に八宏さんが動きます。FKの時点で既に用意していたことですけど、晃司に代えて武岡を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。武岡は右SBに入ります。谷口が左SBに回ります。エウシーニョと車屋がそれぞれ一枚上がってメイヤに入ります。2トップは嘉人と悠。結果的にリードした状況で武岡を入れたので、もともとの意図はわからないのですけど、もしゴールが決まっていなくてもシフトを変えたのではないかと思います。狙いはもちろん、エウシーニョと車屋の攻撃力をさらに活かすためだと思います。ところがリードしたので、イケイケになるというよりかは、エウシーニョと車屋をジャブのような役割で使うようになります。

同時にヒロシが動きます。やはりFKの時点で用意していました。慶悟に代えて草民を右メイヤに投入します。広貴が左に回ります。ヒロシのほうはよりシンプルな作戦で、フレッシュな草民に攻守の運動量を期待して、どんどん仕掛けさせようという意図だと思います。

おそらくヒロシのほうは、リードされた時点でさらに+αの打ち手が必要と感じたのだと思います。広貴に代えて相太をトップに投入します。バーンズが右メイヤ、草民が左メイヤにそれぞれ回ります。前線にターゲットマンを置いて、寄り高い位置で基点を作る意図だと思います。

東京がシンプルに縦に急ぐ攻撃に移行したため、最終盤は東京に攻撃権が渡ります。八宏さんが最初に動いた時間帯に続いてアタッキングサードに入ることができるようになります。でも、残念ながら時が足りませんでした。このまま試合終了。川崎1-0東京。

これがヒロシのラストマッチになってしまいました。リーグ戦三連敗。過去も、それこそ第一次ヒロシ体制や第二次ヒロミ体制、ガーロ体制など、しんどい時期がありましたけど、今回のはちょっと様相が違います。あの時のような、どうしようもなく後手後手になって迷走するといったことはまったくなく、やりたいサッカーは、少なくとも組み立てまではできていますし、それをブレることなく続けています。おそらく、結果が伴わない違和感はありながらも、チーム内に迷いは無いのだろうと思います。変に精神論を持ち出して、不協和音につながるような雰囲気になってほしくないです。やっていることがブレなければ、身の丈以上になることはないけど、少なくとも来年の躍進につながる底力を身につけることは必ずできると思いますから。

東京にとっては、今日は良いベンチマークになったと思います。鳥栖や福岡戦のようなエクスキューズはなく、柏のような変態な相手でも無かったので。それ以上に、東京が目指す未来の姿が今日の等々力にありました。批判は、チームをよどませることなく活性化するために大切なことです。むしろ好調時にこそ批判があって良いと思います。今は、とにかくチーム全体が同じイメージを持ち、目標を共有することが大切です。チームが一体化することを後押ししてこそのサポーターだと思います。人それぞれですからいろんな想いがあることはとても良いことだけど、サポーターは利己的な存在ではなくチームの一部であるべきだと思いますから、無配慮に想いを吐露するのではなく、チームにとって最善は何かを考えて行動すべきだと思います。勝てないチームを見たいお客さんはいないのはもちろんだけど、サポーターの雰囲気が良くないスタジアムに来たいって思うお客さんもいないですよね。

体制は変わるし、どんなかたちになるか、どんなサッカーになるかわからないけど、あくまでもポジティブに見守っていきます。毎年調子が上がる真夏のリベンジを期待しましょう。