ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第6節ヴァンフォーレ甲府vs浦和レッズ@山中スタ20160730 -真夏の夜の加賀さん-

2016-07-31 17:29:01 | 加賀さん

スタンバイ。

レギュラー選手が試合に臨むスタンバイ。出場機会がある控え選手が出番の前に準備するスタンバイ。いつ訪れるか分からないけどチームを助けられるその日のためのスタンバイ。もしかすると、一番最後のスタンバイがいちばん難しいかもしれません。

2016年シーズンの加賀さんは、まさにそんなポジションです。今年の加賀さんは、ご自身の立場をきっちりと受け止めしっかりと準備されています。粛々と。そして、日々の積み重ねが、大原でのプレーに現れてきているのかもしれません。いつの間にか、オプションのディフェンダーとしては那須さんに次ぐ選択肢になってきているようです。加賀さん自身は意識していないかもしれないけど、もはやベテランの域にいるし、もともとアニキ肌ですから、加賀さんの地味だけど真摯な日々の姿を、レッズの若い選手は見ているかもしれません。加賀さんのような立場にいるベテラン選手が粛々と過ごすことは、チームが一体になるための重要な要素のような気がします。

航さんがリオオリンピック代表でチームを離れた前節、ひさびさに加賀さんがスコッド入りしました。出場機会は、その日はなかったけど、もうすぐそこまで来てます。少なくとも、出場できるかもしれない機会がもらえるようになりました。今はまだ、加賀さんが出場するときはスクランブルでしょうけど、ガンバ戦で見せた安定感とクレバーなバランス感覚は、きっとミシャに強くインプレッションされていると思います。

ぼくはひさしぶりに加賀さんに会いに行きます。メンバーにいるかどうか分からない宙ぶらりんな気持ちでスタジアムに向かうのと、メンバー入りする期待が十分にある日とでは、アクセスの時間の楽しさがぜんぜん違います。ドキドキワクワクで甲府の街をぶらぶらしながらメンバー発表を待ちました。

加賀さんメンバー入り!(((o(*゚▽゚*)o)))。

まぎれもなく、スコッドに加賀さんの名前があります。

最近の加賀さんの話題は、ベレー帽みたいなかわいい髪型とランニングフォームですよね。ぽっこりして最初は見慣れなかったベレー帽だけど、ちょっとボリュームが出てきて可愛く見えてきました。夏はわりと短くするイメージがあるけど、ベレー帽はいつまでかぶってるのかな。

なんとなく、太ももとふくらはぎがひと回り分厚くなっているような気がします。試合前のアップでも入念にスプリントを繰り返していました。試合前にお散歩する時間が短くなってる気がします。大原でも時間をとって地道に続けているのでしょうね。その太ももとふくらはぎの威力は、まさにガンバ戦で今ちゃんとアデちゃん相手に見せた通りです。普通だとちょっと無理っぽい距離にいる相手に一瞬で追いついてしまう、サバンナのハンターそのもの。ディフェンダーで強さや粘りやクレバーなポジショニングで魅了する選手は数多あれど、圧倒的なスピードですげーって思わせる選手は、J全体を見渡しても加賀さんだけです。そんな加賀さんならではなハイライトシーンを、少しでも多く浦和サポの加賀さんファンに観ていただけたら良いのですけど。

それにしても、そうとうボリュームのあるがっちりした脚なんだけど、全体的にすっきりスリムに見える加賀さんのシルエットは、いつも不思議に思います。脚が長いからかな。顔が小さいからかな。

今日は、予想はしていたけど、残念ながらやっぱり加賀さんに出場機会がありませんでした。でも、加賀さんには迷いはないでしょう。とにかく日々、一歩ずつ積み重ねる。ガンバ戦の時もそうでしたけど、出場機会はそんな日々の努力の向こうに絶対待っています。加賀さんの強く明るい目を遠くから見つめながら、そう願っていました。

それでは、加賀さんが出場しなかったので、甲府戦を通常モードで振り返ってみたいと思います。花火

ある意味での大の苦手甲府をパーフェクトに封じ込めた、浦和の完勝です。甲府戦をぜんぶ観たわけではないのですけど、もしかすると浦和の対甲府戦史上最高の試合だったかもしれません。

浦和は慎三と航がリオオリンピック代表で不在。メンバーが比較的固定的な浦和のなかで、サポートメンバーにとってアピールの為所でもあります。シフトはおなじみミシャの3-4-2-1。GKは周作。3CBは右からモリ、那須、槙野。ボランチは勇樹と陽介。WBは右にタカ左に宇賀神。2シャドウは今日は右にムトゥ左にトシ。1トップは忠成です。ムトゥが右に入ったことが、今日の甲府対策の最大のポイントです。

甲府はマルキーニョス・パラナが四度目の甲府復帰です。これぞまさに助っ人。電話一本で甲府のために駆けつける、いざ鎌倉な関東武者。ドゥドゥがスタメンに入るようになりましたけど、まだポスト・クリスティアーノ編成の模索中だと思います。今日は大黒柱の英臣とバウルが不在。シフトは書くと浦和とおなじ3-4-2-1。GKは河田。今日の3CBは右から橋爪、涼平、畑尾。ボランチはパラナと黒木。WBは右に佑昌左に松橋。2シャドウは右に稲垣左に河本。1トップはドゥドゥです。

甲府は基本的にリトリート&カウンタースタイルに徹するチームですけど、相手によって闘いかたを変えているようです。東京との試合で対戦するときは、とくにホームではひきこもる印象はなく、むしろ積極的なフォアチェックとロングフィードで果敢に裏を狙ってくるイメージがあります。ところが対浦和戦は、極端なまでにリトリートします。なのでどうしても渋い試合になってしまいます。もしかすると佐久間さんのなかには、リアリスティックなシーズンの計算があって、対浦和は勝点1で十分という算段なのかもしれません。甲府のクラブサイズで、指揮官が違っても4年続けてJ1に留まり続けるには、生半可な挑みかたではできないことだと思います。甲府は、したたかに生き残るサバイバル技術を備えているのだろうと思います。そしてそれが、少なくともチーム内に浸透しているのが最大の強みではないかと思います。

というわけで、甲府のシフトは正しくは、攻撃時は3-4-2-1、守備時は5-4-1というダブルスタンダードを採用していると見たほうが良いでしょう。そして甲府は、その時間の大半を甲府城内で過ごします。この試合は、恒例の甲府城攻城戦へと入っていきます。

今日の浦和は、攻城戦対策を四つ用意していました。まずはカウンター対策です。といっても、取り立てて特別な守りかたをしたわけではなく、今年浦和が取り組んできた守備の基本プランを、チームとしてしっかりと遂行します。盆地特有の蒸し暑さのなか、90分間個々のディシプリンを続けることは易しいことではないと思います。意欲と体力と作戦の浸透があってこそ、今日の浦和のパーフェクトマッチは実現できたと思います。まずカウンターの実行者である三人のアタッカーに対して、モリ、那須、槙野の三人がしっかりとマークをし続けます。甲府が誇るアジリティを体現する河本と稲垣に対し、モリと槙野が粘り強くタイトマークするので、時折ドリブルで抜け出すことはあっても、甲府らしいアタッカーの連動性をついに見せることができませんでした。

これにはドゥドゥとの局地戦を優位にする必要があります。ドゥドゥは中央左右とポジション、つまり1on1を挑む相手を変える工夫を見せますけど、那須もモリも槙野もドゥドゥのパワーに屈することはありません。ドゥドゥはあの手この手を繰り出し、ついにはFKの機会を作ることも視野にプレーします。浦和は、浦和に倍する計22本のFKを許しますけど、射程距離内のシュートチャンスは一度も無かったと思います。

今年とくに重点を置いて取り組んできた中盤でのはやめのチェックは、今日はとてもよく機能していました。カウンターの起点に対し、シャドウ、ボランチ、WBがクイックに寄せて、ピンチの芽を未然に防ぎます。さらにネガティブ・トランジション直後の中盤のチェックをクイックかつタイトにすることで、より高い位置から二次攻撃を仕掛ける起点にもなっています。結局90分間プレーすることになったトシが試合後に座り込んでしまうほど、浦和の中盤は、見た目以上によく動いていたし、神経も使ったと思います。ダラダラと動き続けるというよりかは、ここで動くとチャンスになるとかここで動かないとピンチを招くといったピンポイントのタイミングでのダッシュを繰り返していましたので、蒸し暑いなか、相当エネルギーを消費していたでしょう。このことは、とくに頭が下がる想いです。

こうして甲府のカウンターのみならずセットプレーの機会も予防することに成功した浦和は、いよいよ攻城戦に挑みます。浦和が攻城戦のために用意していた秘策は三つ。一つ目は、前述した今日の布陣にあります。普段左に入ることが多いムトゥを今日は右に持ってきました。浦和の攻撃は、メンバーを固定して練度を上げるほどに、左右がアシンメトリーになってきていると思います。攻撃の基点は左シャドウに入るムトゥが担うことが多くなっています。このため、左で作って右で仕掛けるパターンになっています。必然的に、左右のWBの役割も違っていて、宇賀神は周囲の選手との絡みを意識したバランスを取ったプレーが多いのに対し、タカはフリーランニングで一気にアタッキングサードに仕掛ける、矢の役割を担います。

その攻撃の軸であるムトゥを右に持ってくるということは、長年積み重ねてきた浦和全体の攻撃のバランスを左右反転させることになりますので、机上で考えるほど易しい取り組みではないと思います。もしかすると甲府対策というよりかは、慎三がいない間を利用して、ニュー浦和のチャレンジをミシャはしているのかもしれません。試合全体を通じてみると、少なくともシャドウに関しては、役割を左右シンメトリーにしていたような気がします。

とは言え、試合のリズムを作る序盤の段階は、やはりムトゥにボールを集めます。ここに秘策がありました。ムトゥは通常、上下の動きが多い印象があるのですけど、今日は縦の幅を狭め、変わりに左右の動きを加えています。さながら香車ではなく金のような動きです。それは、甲府の5+4の守備陣形のなかのエアポケットのようなスペースを見つけるためです。見つけるというよりかは、能動的に作るイメージかもしれません。おそらくそこに、甲府の守備の特長を逆手に取る作戦があったと思います。ムトゥの動きはじめは、かならず最前線です。最前線にはることで、マーカーである畑尾にムトゥマークを意識させます。これによって、甲府をしてマンマークの守りかたを取らせることになります。

結論を言うと、今日の甲府の敗因は作戦にあると思います。たぶん佐久間さんも悔やんだろうと思います。英臣とバウルがいないエクスキューズとは言え、アジリティの高い浦和の2シャドウのマーカーとして畑尾を使うことになったことは、試合を左右する大きなポイントになったと思います。しかも畑尾の側にムトゥが来たことも大誤算だったでしょうし、畑尾にとっても切ない状況です。序盤の攻防の局面は、ムトウvs畑尾につきます。

甲府の守りかたの特長としてマンマークのほかにもう一つ、ボランチの動きがあります。リトリートではあるのですけど、中央に入るボランチが、浦和のボール回しに対しチェックをかけにきます。つまり、ボランチの背後のバイタルエリアはCBはケアするというのが甲府の考え方なのだと思います。攻撃の開始時にシャドウが最前線にはりつくことで、必然的にバイタルエリアにスペースができ易い状況を作り出すことができます。ムトゥはそこを狙います。左ボランチに入るパラナと左WBの松橋の動きを見て、ムトゥは前後左右に微妙にポジションを変え続けます。ムトゥがフリーになることで、浦和の攻撃ルートができあがります。

さらにムトゥを右に持ってきた意図がもう一つあります。タカの使いかたです。ムトゥが畑尾を連れてバイタルエリアに下がると、タカがムトゥと入れ替わるように畑尾の背後に入ってきます。左サイドのムトゥと宇賀神の関係とおなじような構造を右でも作るという意図です。タカは初速が速いので、ムトゥとのクロスオーバーにキレがあります。この、通常見られない浦和の右サイドの組み立てに、甲府は明らかに混乱していました。

甲府対策の三つ目は、サイドチェンジの多用です。序盤ムトゥを多用することは、右で作って左で仕掛ける意図を含んでいます。なので勝負ところは宇賀神のサイド。つまり、序盤の浦和は、ムトゥのポストやムトゥとタカのクロスオーバーなど、一見すると右で崩すことを狙っていたかのように見えますけど、ホントの狙いは左サイドにあったと思います。ムトゥを基点とした攻撃で甲府にムトゥを意識させます。通常の浦和のサイドチェンジは、最終ラインを経由するのですけど、今日はムトゥからの戻しをモリがダイレクトで一気に宇賀神に渡します。このことで、コレクティブな守備を誇る甲府が守るサイドを変える時間を与えず、甲府を左右に揺さぶることができていました。そして宇賀神とトシがアタッキングサードに仕掛けます。浦和が右で作るという意図には、モリの正確で速いロングフィードを活かすことも含まれています。航がいない今の編成を考えると、とても合理的な布陣だと思います。

最後の甲府対策は、ワンタッチのアウトサイドロブの多用です。シャドウがポストを受けるのではなく、裏に出る忠成を目標に、テクニカルなロブを上げます。これはもちろん忠成をターゲットにしているのですけど、真の意図は多重攻撃にあると思います。意表を突くパスに対する甲府守備陣の反応は、クリア優先になります。そこにカウンターへの意図が含まれませんから、クリアはイーブンなものになります。さらに前方にロブを上げることで、甲府の守備網全体に後ろへ下がるイメージを持たせます。ですから中盤に上がったイーブンなクリアは、実は浦和は拾い易いホスピタルなパスになります。これによって、浦和が連続攻撃を仕掛け易い状況を生み出すことができていました。これぞ、攻撃は最大の防御也を体現する、ミシャ浦和の真骨頂だと思います。

序盤こそ、ドゥドゥ、河本、稲垣の単独ドリブル突破が見られましたけど、次第に浦和の巧妙な攻城戦対策がじわりじわりと効いてきます。先鋒主力ムトゥ隊と支援のタカ独立機動部隊によって甲府城大手をジリジリと攻め立てている間に、搦手に宇賀神隊とトシ隊が忍びより、モリ攻城砲隊の援護を受け、やにわに搦手攻撃を開始する、そんな浦和の攻城大作戦が、はやばや結果を見せます。

14分。タカのスローインから、一度モリがサイドチェンジを試みます。勇樹とトシが絡んだ攻撃は、勇樹が転んだので不発になり、浦和がすぐに攻撃をリセットします。槙野から那須を経由してもう一度右に。モリからバイタルエリアでパスを受けたムトゥですけど、松橋と河本のチェックでコントロールを失います。でも河本がチェックに入ったため、こぼれ球をモリがなんなく拾います。ボールを拾う前にモリはルックアップ。この時逆サイドでは、宇賀神がすでにアタッキングサードに入っていてフリー。モリはダイレクトで、一気にサイドを変えるフィードを宇賀神の足元につけます。このフィードが、顔に似合わずビューティフルかつエクセレントでした。浦和の攻撃モードに移ります。宇賀神には佑昌が一枚だけ。ゴール前は中央に忠成、ニアにトシ、ファアにムトゥがそれぞれペナルティエリアに入ってます。甲府の3CBは揃っているので数的にはイーブン。これを見た宇賀神は、スピードアップすることでゴール前の状況を変えることを選択します。宇賀神は縦に大きく仕掛けます。これで佑昌を振り切ります。さらに甲府CB陣を下げさせることにも成功します。このワンプレーで勝負あり。ゴール前では、忠成があえてサイズのある畑尾を狙って競ります。やや遅れてファアから入ってきたムトゥは、松橋と距離を置いていたので松橋がケアできていません。宇賀神の狙いは、忠成の頭を越えてムトゥに渡すことでした。そして完璧なコントロールド・クロスがムトゥに届きます。どフリーのムトゥは頭でたたき込みます。甲府0-1浦和。

甲府の最終ラインが、肝心なところで5バックをコンパクトにできなかった、松橋のミスでもあるのですけど、それ以上に、浦和が作戦通りにやりたいサッカーを実行できた、コレクティブな意味での、至上のゴラッソです。ムトゥの基点、サイドチェンジ、多重攻撃。そして今日の仕掛け役である宇賀神の極上の技術。それらすべてが噛み合ったこのゴールは、甲府戦の歴史から難しい試合になる覚悟をしていた浦和に、大きな勇気を与えただろうと思います。

作戦ミスを挽回するために佐久間さんがアジャストします。左右のCBとWBのセットをそっくり入れ替えます。畑尾と松橋が右、橋爪と佑昌が左に回ります。浦和の攻撃のアシンメトリー構造が左右逆になったと見たのでしょう。ポストのケアとしては橋爪と佑昌のセットのほうが良いのかもしれません。

ところが、ここからが今日の浦和のAプランです。前述の通り、今日のシャドウはシンメトリーです。甲府のアジャストを見たためか、もしくは先制アタックのミッションをクリアできたためか、トシもムトゥ同様の動きでポストを担うようになります。これで、左右どちらからでも攻撃できるかたちが完成します。つづめて言うと、浦和の攻城戦秘策は、コンパクトでコレクティブな甲府の守りかたを逆手にとって、左右に揺さぶることで突破口を見つけるというものです。シャドウの役割をシンメトリー構造にすることで、ますますその威力が増してきます。

こうして、ポゼッション志向の浦和をしても、これほどのオーガナイズは滅多に見られないだろうというほど、完璧に試合の趨勢を掌の上で転がすことができる状況を作ることができました。そして、それをさらに裏付ける追加点が生まれます。

45分。甲府のGKからのアタックをいなし、勇樹が自陣でドゥドゥからターンオーバーしたところから。例によって浦和はヌルヌルとパスを回し、チャンスを伺います。甲府が自陣に下がって守備網を整えたのを見て、ボールを持った那須が甲府陣に入ります。那須は槙野にパス。槙野はさらに宇賀神につけます。宇賀神はキープ。まだミッドサードです。宇賀神は松橋を引き付けながら時間を作ります。狙ったのは、やはり畑尾。トシvs畑尾のアジリティ面のミスマッチをつきます。トシを走らせるイメージのスルーを畑尾の背後に送ります。これが成功してトシが抜けだし、ペナルティエリアに入ります。一気に攻撃モードに切り替わります。このときゴール前でも、宇賀神のスルーで局面がガラッと変わっています。涼平も橋爪も揃っていますけど、宇賀神のスルーに反応したのは忠成だけでした。ボールに追いついたトシがルックアップしたときは、ゴール前に忠成がどフリーです。忠成は、やや内側に入り加減のトシのクロスを、得意の左足ジャンピングダイレクトボレーで豪快に仕留めました。ゴラッソ。甲府0-2浦和。

また忠成がインパクトのフェーシングを自画自賛しそうな(^^;、忠成にしかできない美しいジャンピングボレーを観られて、至高の時間でした。攻撃権を持ってからゴールが決まるまで、実に16本のパスをつなげました。宇賀神の一瞬の判断で局面を一気に攻撃モードに変える、とても浦和らしい攻撃です。今日のMVPは、宇賀神で間違いないでしょう。プレーの質も精度も冴え渡っていました。

完璧な浦和のオーガナイズのまま、前半は浦和リードで終了。

後半頭から佐久間さんが動きます。二枚同時代えです。畑尾に代えて福田、黒木に代えて保坂を投入します。松橋が左CBに入ります。福田は左WBです。保坂はそのままボランチに入ります。

これで、涼平の両脇をアジリティの高いバックスで固めることができます。佐久間さんは、もしかするとズィライオの可能性を考えて畑尾をスタートから使ったのかもしれませんね。そうだとするとミシャは正攻法で裏をかいたことになるので、作戦面でもミシャが上回りました。

甲府のアジャストがあっても、浦和のオーガナイズは変わりません。というよりも前半以上に完全性が高まります。甲府が守備のアジリティを高めたことが裏目に出ます。甲府は浦和の2シャドウのポジショニングでボランチとCBのマークの受け渡しをするゾーンなのですけど、ムトゥとトシのポジショニングが絶妙で、左右変わるがわるのポジションの出し入れができるようになって、ますますバイタルエリアの優位性が増します。これは、前半に比べてトシがフィットするようになったためです。浦和はこれができるようになると、ムトゥの得点も上がるようになると思うので、より攻撃力が増すと思います。ムトゥの得点が昨年より減っているのは、ビルドアップ時のムトゥの重要性が増したからだと思うのですけど、ムトゥの負担が減ることで、また一段、浦和の攻撃のレベルが上がるような気がします。

やること成すことすべてネガティブに振れる今日の佐久間さんは、ちょっと信玄公をお詣りしたい心境だったかもしれません。ミシャの打ち手が基本プランも含めロジカルで、それにはまった佐久間さんの読み負けでもあるのですけど、運の無さもたぶんにありましたから。こうなったら守備のアジャストを捨て、攻撃一本にする腹くくりをしたのでしょう。ホームですし。河本に代えて晃太を同じく左シャドウに投入します。前線をフレッシュにするとともに、ドリブルでの状況打開に期待したのだと思います。

浦和が、次なるモードに入ります。すっかりオーガナイズして、アタッキングサードのスペースというスペースを完全に掌握できました。ここで三点目を遮二無二とりに行く選択もあったのですけど、浦和はリトリートします。状況が違えば攻めに行くかもしれないのですけど、なにしろ今日のこの蒸し暑さですから、省エネを考えてのリトリートだと思います。攻撃で思い通りにスペースメイクできてはいたのですけど、それは攻撃陣の絶え間ない運動量の成果でもあるので、甲府の攻撃力をはかったときに、総合的には二点を守りにいくほうが合理性が高いと踏んだのだと思います。浦和サポにとっても、たまにはビールでも飲みながらゆっくりのんびり安心して観戦できる機会になるわけですから、一石二鳥。高度な意味で、浦和のやりたい放題な試合になりました。

そんな浦和に少しアクシデントです。陽介が腰を気にするしぐさをします。それが要因かはわからないのですけど、ミシャが動きます。陽介に代えて、最近好調のカピが入ります。浦和のシャドウのスペースメイクを前提としたポゼッションは、陽介が黒子になることで成立しています。陽介の絶妙なポジショニングで、主役をはるシャドウとは違うもうひとつのパスルートを作るため、守る側は守備の選択肢を増やされているのだと思います。今日は攻撃参加も一回であまり目立たなかったけど、陽介が目立たないほうが浦和の攻撃は全体的に機能していると言えるのかもしれません。

以前のカピは、少し後ろ目に位置してパスをさばくイメージだったのですけど、今日見たカピはよりアグレッシブになっています。中央にどっかり座るスタイルは、陽介とはテイストが少し違う浦和の攻撃スタイルをかたち作る軸になってきている気がします。カピが入ると、カピにボールが集まるので目立ちます。試合をコントロールするモードに入ったときは、カピのスタイルは有効かもしれません。

ミシャが続けます。ムトゥに代えて石原を同じく右シャドウに投入します。ムトゥのコンディションを考慮したのだと思います。それに、石原のはやいフィットを期待していると思います。今日のプレーを見てトシがようやくフィットしてきたように感じました。やはり浦和のシャドウはフィットに時間がかかるのでしょう。出場機会と比例すると思うので、梅崎、駒井を含め、慎三がいない間にできるだけ長くプレー機会を作るべきだろうと思います。

そしてミシャが〆ます。忠成に代えてズィライオを同じくトップに投入します。これも忠成のコンディションを考慮したのでしょう。結果的に、一番フィジカルに難がありそうなトシに90分間働かせることになります。これもミシャの願いなのかもしれません。

カウンターに特化して攻撃プランを作っている甲府は、甲府のミラーのように5+4の守備網で堅く籠城する浦和を攻略する術を、おそらくまったく持ち合わせていないでしょう。たしかにロングフィードは甲府の十八番なのですけど、それはリトリートされた状況を打開するものではなくあくまでもカウンターですから。甲府は、浦和にボールを持たされて、持て余してしまったかのようにパスを回しては、中盤で取り込まれることが続きます。夏の夜のうだるような暑気のなか、甲府サポにスカッと爽やかを届けることはついにできませんでした。このまま試合終了。甲府0-2浦和。

加賀さんの加入以来、浦和の試合を多く観るようになりましたけど、これほど完璧な、作戦もプレーもなにもかも上手くいった試合は観たことがありません。今日の内容こそ、ミシャが目指している浦和サッカーのような気がします。もちろんサッカーは相手がある相対的なスポーツですから、甲府の特性も今日の結果を生んだ要素だろうと思います。なので、これからも今日のようなパーフェクトを見せられるとは思いません。でも、強くなってきているのは確か。例年夏から秋にかけて失速する浦和ですけど、今年はひと味違うかもしれませんね。

正直、出場は期待していなかったのですけど、前半の圧倒的なオーガナイズを見て、もしかしてゴレアーダになったら出してくれるかもって、ちょっとドキドキしてました。でも、陽介が下がって、繊細な試合運びが必要になったので、あきらめました。

残念だったけど、試合後の選手を労う加賀さんの表情を観て、安心しました。素直に勝利を喜び、仲間を誇る柔らかな笑顔に包まれていましたから。浦和に来て、とくに今年は、良い意味で大人になってきていると思います。ツンデレギラギラがトレードマークでしたけど、ファン対応を除き、柔らかさが増してきているのかもしれません。

とにもかくにも、自分がやりたいこと、やるべきことがきちんと整理されてて、しかも日々、しっかりと積み重ねられているからこそ、周囲に気をくばれる柔らかさが生まれているのでしょう。もちろん試合に出て欲しいけど、現実として今、この状況だからこそ得られるものはきっとあるはず。どうやら加賀さん自身がそれを見つけ、迷いなく日々を過ごせているんじゃないかって様子が伺えて、ただ会えた喜びだけじゃなく、前向きな気持ちにも触れられたような気がして嬉しかったです。

これからもひっそり応援します。