ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016ACLラウンド161stレグFC東京vs上海上港@東スタ20160517

2016-05-18 22:52:44 | FC東京

五月雨で少し肌寒く感じた一日でしたけど、夕方には雨もやみました。

雨を吸った草の匂いが、少し離れたところまで伝わります。まもなく梅雨時。

東京は5年ぶりに出場したACLで、これまた5年ぶりにラウンド16に進出です。個人的には、今年のACLはぜんぜん観戦できなかったので、やっぱり5年ぶりです。あの頃は加賀さんがいたなぁと遠い目をしたりなんかりして。

ラウンド16の相手は上海上港です。

1stレグはホーム、今日は東京スタジアムです。You'll Never Walk Alone♪アジアの純真♪ドロンパのACL未遂

攻守の展開が速い慌ただしい試合は、再度突き放して先勝です。

東京はまるがサスペンションで不在。前線はターンオーバーです。シフトは今日も4-3-2-1。GKは秋元。CBは今日のモリゲの相棒はカズ。今日のSBは右に拳人左に徳永。3CHは右から羽生、秀人、ヨネ。今日のWGは右に宏太左に慶悟。1トップは遼一です。

上港はアサモア・ギャンが怪我のため不在。シフトは4-2-1-3。GKはイエン・ジュンリン。CBはキム・ジュヨンとシー・クー。SBは右にフー・フアン左にワン・シェンチャオ。ボランチはユー・ハイとツァイ・フイカン。トップ下はダリオ・コンカ。WGは右にウー・レイ左にルー・ウェンジュン。1トップはエウケソンです。

中国のチームを観るのはこれが3回目です。過去はいずれもなぜか北京国安。体が大きく高さと強さで勝負してくる印象がありました。ところがエリクソンさんの上港は、同じくフィジカル主体ですけど、強さというよりかはスピードをストロングポイントとしているようです。

上港はなにしろハイテンションで、攻守に速い仕掛けを挑んできます。なので、試合展開が非常に慌ただしく感じました。Jリーグもブラジルから直接来日した選手の話で展開が速いということをよく耳にするのですけど、その比ではないですね。江蘇蘇寧の試合をテレビでも見ていないので過去に見た北京国安しか知りませんけど、国安には慌ただしさを感じた記憶がないので、上港の特長なのでしょう。ユーロの第一線で活躍されたエリクソンさんが率いているのでどうしてもユーロスタンダードとして観てしまうのですけど、ヨーロッパの最新のトレンドはこんなにハイテンションなのでしょうか。

上港の基本プランは、縦に急ぐサッカーです。まず守備は、とても高い最終ラインを基盤に、前線がタイトにフォアチェックを仕掛けてきます。ボールホルダーに対する寄せが、スクランブルかのごとくクイック、かつタイトです。とくにボランチの選手のサイズがデカく(デブく?)、スピードに乗って寄せてくるので、コンタクトはタイトです。でもあんまりダーティーな印象はありませんでした。どちらかというと、太くて急には止まれない感じ。いずれ、タイトなチェックで、東京が前線にチャレンジする機会を封じ自陣に押し込めて、イニシアチブを握ろうという意図だと思います。トランジションポイントは、なので中盤です。中盤にデカい選手を置いているのは、空中戦を含めて優位に立とうということだろうと思います。ただ、後述しますけど、今日に関しては裏目に出ます。

イニシアチブを握ったのちの攻撃は、とにかくダリオ・コンカ大作戦です。コンカはポジションフリーです。Jリーグのなかでは俊輔の役割のイメージに近いですね。普段日本で目にするトップ下は、前線と中盤の間を取り持つハブとしての機能を担うイメージがあるのですけど、コンカの行動範囲はとても広く、中盤全体です。あくまでも攻撃を志向していて、守備時のファーストチェッカー、あるいは方向付けする役割はまったく感じません。守備のほうは、見た目安定感のあるボランチと、スピードを活かしたタイトチェックを担うWGに任せることで十分であろうということだろうと思います。

それに余りあるほどの、コンカの存在感です。この上港の基本プランを見てちょっと安心しました。普段ユーロのサッカーをまったく見ないのですけど、なんとなく最先端のサッカーはとてもコレクティブなイメージがあります。たとえスーパースターであっても、プレーの自由を得られるのはフィニッシュの局面だけで、少なくとも組み立てでは、コーチのプランを実現することを第一義として求められるんだろうなと思っていました。ところが今日、目の前で展開される上港のサッカーは、完全なコンカ大作戦です。ユーロの最前線で活躍したコーチでも、状況によってはスター選手に依存したサッカーを選択するんだなと思いました。やっぱりサッカーはどんなに作戦が進化しても、基本的には選手あってのスポーツなんだなと実感しました。

ただもちろん、それに足るだけのクオリティがコンカにあります。コンカがもう少しコンディションがよくスーペルだったら、コンカひとりにしてやられる状況もあり得たかもしれません。トゥやヒールを多用するアクロバティックなプレーですけど、アイデアに威力を持たせる筋力の強さが印象的です。サイズはそれほど大きくないのですけど、繰り出すキックが、モーションが小さく、あるいは体勢が整っていなくても強さを感じました。今日はパスはともかくシュート精度はそれほどではなかったようです。つまり今日の上港は、シュートプロセスはしっかり組み立てられていましたけど、フィニッシュに至ることができていませんでした。

上港の攻撃パターンは、基本的にはサイドアタックしかありません。しかも右サイドに偏重していました。もちろんギャンがいる場合はもっとマルチなのだと思います。上港の攻撃パターンを形成するストロングポイントは、ウーとルーの左右の香車です。ともに稀有なスプリンターですけど、テイストが少し違います。ウーは典型的なサイドアタッカーで、とにかくスピードを活かすのみ。ルーはテクニックがあるようです。なので、最終的にウーに渡すために、コンカとの間のハブをルーが担っていました。なので、ルーは頻繁に中央に移動します。

サイドアタックはもう1パターンあって、フーとワンをクロッサーとして使うかたちを持っています。相手がリトリート気味になった場合の攻略法として、3トップを中央に絞らせSBを最前線まで上げる5トップのかたちを使います。一見特異ではあるのですけど、東京にとっては5トップは浦和と広島で慣れていますので、まったく混乱させられることはなかったでしょう。それに結局、コンペティティブな攻撃を生み出せるプレークオリティを持っているのはコンカだけなので、コンカのパスコースをケアしさえすれば脅威ではありません。

上港はガンバ戦でもギャン不在の試合があった気がするので、おそらく東京は、ギャンがいない場合のスカウティングができていたのでしょう。今日の守備面での工夫は、マンマーク気味にしたことです。今まで一度も名を出さなかったくらい存在感が希薄だったエウケソンですけど、その理由は秀人にあります。エウケソンに対しては、中盤からラインの辺りまでのエリアを秀人がタイトマークします。これでエウケソンの自由はほぼ消えました。エウケソン以上にフィジカルとテクニックに優れたアタッカーはJにも居ますから、秀人にとっては十分対応範囲だったでしょう。

上港の左右の矢は、前述のとおり内に絞るポジショニングもあります。なのでマークは受け渡しをすることになります。ライン際ではSB、内に入るとCBがケアします。ウーは徳永とモリゲ、ルーは拳人とカズ。拳人をSBで起用した理由は、ルーに対してスピード負けしないことと、フィジカルで優位に立とうということでしょう。それに増して徳永を左に持ってきたことはウーをとても警戒してのことだと思います。結果的にコンカとルーとウーのトリオで1失点喫しますけど、そのワンミスだけですので、今日は守備の成果は十分だと思います。

もうひとつ守備で工夫があった気がします。今日はレフリーのジャッジが厳しめだった印象です。とくに東京がペナルティをもらうシーンのほうが多かったと思います。でもなんとなく、ある程度のペナルティは想定してたんじゃないかと思います。東京は結局最後まで射程圏内のペナルティを被ることはありませんでした。これは意図していたと思います。コンカにしろルーにしろ、見るからにFKがありそうですから。東京はペナルティを覚悟ではやめに上港のチャンスを消すことで、スピードに乗せることを防ぐだけでなく、直接FKの脅威を予防してたんじゃないかと思います。

さて、東京は攻撃面でも上港をしっかり研究し、対策を練ってきていました。今日の試合展開がとてもハイテンションになったきっかけを作ったのは上港です。でも実行したのは東京です。東京にはおそらく二つの選択があったと思います。インファイトでどつきあいを挑むか、あるいはアウトボックスで臨むか。つまり、上港が作るスピーディな展開に乗っかって東京もプレースピードを上げるか、それとも相手を受けて遅攻に持ち込むか。東京の選択は、なのでインファイトです。

その意味で、今日の東京は今年の普段着とは違う余所行きの装いでした。縦に急ぐサッカーを繰り出します。まず上港のフォアチェックに対しては、ダイレクトパスを散らして相手のクリッピングポイントをいなします。そうして後方から前線に、どんどん長いボールを送ります。左右のバランスはシンメトリー。ロングフィードは2パターンで、裏に飛ばしてWGを走らせるパターンと、WGの足元に送って中盤サイドで基点を作るパターンです。後者の場合は、SBがタイミングよくWGに絡み、攻撃参加します。

アタッキングサードに入ると、迷わずクロスをどんどんゴール前に送ります。ここでも工夫がありました。上港は個に依存するサッカーをする割には守備があまり強くはありません。中国のチームにしては最終ラインに高さがないので、クロスに対するケアが絶対的ではありません。さらに、高いラインを敷く割には守備陣にスピードがありません。もうひとつ、前述のとおりサイズのあるボランチを二人並べている弊害で、アジリティに難があります。なので、ダイアゴナルにボランチとCBの間を取ると、とても簡単にスペースメイクできていました。おそらく東京は、この上港の守備のウィークポイントを前提に、インファイトを臨んだのでしょう。J2上位でもこれほど緩い守備をあまり見ないので、中国リーグの総合的な実力が良く分からなくなりました。

それはともかく、東京が余所行きな超高速サッカーを実行できた背景には、アタッカー陣の確かなテクニックがベースにあります。展開の速いパス回しをミスなくつなぐことができていましたし、強めのロングフィードを前線の選手が確実に足元にトラップできます。なんだか、普段のリズムよりも今日みたいな超高速のリズムのほうが東京のクオリティの高さを如実に表現できるような気がします。観ていて目と脳が追いつかないので疲れますけど。

こうして東京の上港対策が見事にはまり、序盤の上港のアグレッシブなハイスピードバトルに真っ向勝負を挑み、力で押し切った東京が次第にイニシアチブを握ります。過去、さんざJクラブが辛酸をなめてきた中国チームに対しインファイトで上回るのって、なんだか爽快です。そして、爽快さを実質的なものにする、スカッと爽やかなゴールをスカッと爽やかなあの男がもたらします。

43分。拳人のシュートをエウケソンがハンドリング。ペナルティエリア内でしたけど、結果的にドラマチックになったからまあいっか。中央やや左寄りのFKを宏太が直接決めました。壁に入った秀人の股間を抜く、ゴラッソ。実は秀人の左足に当たってコースが変わってました(^^;。東京1-0上港。

なんとなく雰囲気がありました。正直モリゲが蹴るかなと思っていたので、あって思いました。でも宏太にすれば期する想いがあったでしょうね。なかなかスターターのチャンスがありませんから。前半はリードのまま終了。

後半開始も両チームとも動きはありません。エリクソンさんは、少なくとも今日はコンカ大作戦で臨んでいましたので、アジャストするにしても打ち手が無かったのかもしれません。この辺りは個に完全依存する弊害でしょう。上港は結局最後までスターターを代え無かったですから、理由は良くわからないけど、コンカ次第という雰囲気があったのは確かだと思います。

東京守備陣が時間を追うごとにコンカのパスチョイスを対応できるようになって、安定感が増していきます。まだ時間はたっぷりあったけど、これはクリーンシートもあるかもなどと思っていたら、コンカのテクニックとウー・ルーコンビのスピードがやっぱり特別であることを見せつけます。

55分。徳永のクリアを東京陣でフーが拾って、ダイレクトで前線のルーに渡します。これを見た、中盤の底にいたコンカがスルスルっと上がります。この時ルーのマーカーのモリゲは、ルーが一度右に流れたため、ついていってます。ルーが丁寧に落としたパスを受けたコンカは、ワントラップしてルックアップ。さらにエウケソンがルーと入れ替わるように右に流れます。秀人がこれにつきます。ウーを見ているカズはステイ。このため、モリゲ、秀人とカズの間にスペースができます。拳人が一枚余っていたので、カズは絞るべきでした。そこに、パス&ゴーで反転していたルーが走り込みます。ルーはラインの位置にきていったんペースダウン。マークしてきた羽生がコンカに意識を向けた瞬間、ふたたびギアを上げます。コンカがこの瞬間を逃しません。右足でスルー。抜け出したルーの左足シュートは秋元がはじき返しますけど、そこにウーが詰めてました。東京1-1上港。

これを受け、ヒロシが動きます。慶悟に代えて拓馬を同じく左WGに投入します。慶悟のコンディションを考慮したのだと思います。最近出場機会がない慶悟ですので、フルはちょっと難しいでしょう。そして、ヒロシこの作戦がさっそくはまります。

64分。上港がクリアしたボールを上港陣で秀人が拾い、前方の羽生にフリック。羽生はさらに前方の拓馬に渡し、拓馬は前線の遼一にパス。遼一は中央を上がっていたヨネに渡します。ヨネはひと呼吸おいて、左サイドを上がる徳永にスルー。パスを受けるとき徳永は、フーがマークに来ているのを見て、ダイレクトクロスを止め、右足でキープします。この時上港はラインが四枚揃っていて、ボランチも戻っています。東京はゴール正面のニアに羽生、ファアに拓馬。やや遅れて遼一が入ってきます。この9人全員、さらにはイエンも、徳永を見ています。その徳永だけが、大外右サイドを宏太と拳人がフリーで上がってきているのを見ていました。徳永は右足のロブでワンの頭上を越えるクロスを送ります。ボールウォッチャーになっていた10人は全員びっくりぽんだったでしょう。落下点に入った宏太は、らんらんらん♪と右足ダイレクトで合わせました。東京2-1上港。

このあたりから、上港の運動量が目に見えて落ちます。落としたのか落ちたのかはわかりませんけど、いずれにしろコンカを活かすための周囲の動きが停滞すると、コンカがいくらトリッキーにプレーしても効果はありません。前半のハイテンションは、実は案外コンディション不良を隠すブラフだったのかもしれませんね。昨夜大きな地震があったので、眠れなかった選手もいるかもしれません。

守備の安定感は十分に思えたのですけど、ここでヒロシが動きます。宏太に代えて草民を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。草民は右メイヤ。左に羽生が回ります。マンマークが完全に機能していたのでゾーンに変えることはリスクがあると思ってました。このあたりはフィッカデンティ東京との微細な差異です。昨年の東京は3CHでもゾーンでしたので、中盤の構成を変えても違和感はありませんでした。それ以上にサイドのケアを厚くする作戦としてとても有効でした。今日の東京も同様にサイドをケアする意図だと思うのですけど、それによってコンカのみならず、なにより不発だったエウケソンをにわかに蘇らせたりしないか、ちょっと心配でした。

でも杞憂でした。守備のやり方を変えても柔軟に対応できるところが、秀人とヨネのコンビの特長ですね。中盤の守備のエースは誰が見てもヨネであることに異論はないと思いますけど、そのヨネが一番気持ち良さそうにのびのびプレーできるように見えるのが秀人と組んだときです。一度ヨネに聞いてみたいところです。

上港がなんとなくあがこうとしているように見えましたけど、すべて東京の掌の上の悟空。東京が安定感を保ったまま試合終了。東京2-1上港。眠らない街♪宏太とドロンパのハイタッチ宏太のシュワッチ

近年の広州広大や上海申花のアジアでの成績を考えて、ちょっと中国チームには畏敬の念があったのですけど、今日の試合を見て吹っ飛びました。もちろん上海上港がスタンダードではないですけど、中国リーグに参加している以上、そのパラダイムにあることは間違いありません。そうしてみると中国リーグは、2、3のスーペルなタレントを活かすサッカーをすれば勝てちゃうのかもしれませんね。その意味では、今日の上港にとってはギャンの不在は致命的だったのでしょう。

そのエクスキューズは認めるとしても、長くサポートする対象としては、正直つまんないですね。スアレスやネイマールのような大先生クラスがいるならともかく。著名な選手を2、3人買えばファンは満足するでしょって言われている気がして。サポーターはクラブに属するのすべての選手に思い入れするもんだし、いろんな選手のプレーを話題にアフターマッチトークを咲かせたいもんですから。

というわけで、作戦とプレーの違いでワンマン大作戦を凌駕しました。Jリーグのクオリティを見せつけられた気がして、少し誇らしいです。

とはいえ、まだ1stレグが終わっただけです。アウェイゴールルールもちょっと気になります。半歩のアドバンテージに過ぎません。ラウンド8目指して、来週も頑張ってほしいです。