ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2015Jリーグチャンピオンシップ準決勝浦和レッズvsガンバ大阪@埼スタ20151128

2015-11-29 16:43:07 | 加賀さん

この週末を越えると、いよいよ今年も師走。今週から急に気温が下がって、冬の到来を感じさせます。季節の変わり目ですので、みなさんくれぐれも体調に気をつけてください。

師走をまたずして、先週わが東京はリーグ戦を終戦してしまいました。さらにマッシモ・フィッカデンティ監督の退任も発表されました。ミステルへの感謝状と今シーズンの振り返りは後々のこととして、世間的にはにぎやかな12月だというのに、いささか寂しさを感じています。

今年は、新たなチャレンジとして、てか必然として取り組んできた東京と加賀さんの両方を追う、俗な言い方をすると二股が、シーズン最終盤に来て、もうちょっとだけJリーグを楽しませてくれることになりました。東京の天皇杯まで一ヶ月近くあるので、残りのJ1リーグ期間中は加賀さん一本に絞ります。

本日は、Jリーグチャンピオンシップの初戦でございます。ややこしいレギュレーションの果に、CSに残ったのは実質的な年間王者の広島と1stステージを取った浦和、そして年間3位のガンバです。CSのトーナメントにはいろんなパターンがあるようなんですけど、結局広島がアドバンテージ?を持って、まずは浦和とガンバが激突です。

本題に入る前に。浦和、ガンバ双方の公式で声明がありましたので。自分もすべての差別に反対します。差別の原因は、他者理解の欠如、もっと言うと他者という存在への興味の無さだと思っています。自分がサッカーブログを公表している理由のひとつは、少しでも多くのかたに、相手の目線で見ることの意義を問いたいからです。パトリックさんとご家族のこころの傷が、少しでもはやく癒えることを願います。

CSの価値云々はさておき、浦和とガンバの対戦は、外様なので正しくはないかもしれないけど、おそらく互いに強者として認め合った、リスペクトのなかでの相対だと思っています。その意味で、Jリーグのなかでとても興味深く、一度現地観戦してみたかった一戦です。ガンバのJ1復帰以降、2勝2敗。ゴール数も浦和目線で3-4と僅差。しかも互いにホームで1勝1敗。ただ、いずれも春に浦和が勝って、肝心なシーズン終盤の秋にガンバが完勝する印象が強いです。浦和とガンバの特長の象徴のような結果です。

個人的に今日最大の悲劇は、加賀さんに会いに来たのに叶わなかったことです。那須さんとモリの復帰で、オプションとしての加賀さんのポジションが3番目になりました。いや3番目に上がったとポジティブに捉えてもいいかもしれません。川崎戦前からの好調で2試合2勝、しかもゴレアーダに貢献していました。実際には観られてはいないのですけど、加賀さんファンの皆さんからいただいた感想では、レッズでの課題だった攻撃面での貢献に成果があったようですし、コメントを読んでも、課題をしっかりと捉えて前向きに取り組む気持ちがよく伝わってきました。

話はそれますが、レッズ公式のコメントはとても良いですね。加賀さん以外のコメントは読んでないので気のせいかもしれないけど、変に抽象化したり誇張したりせず、かなりストレートに、選手の個性をしっかりと感じられるようなコメントアウトをしてくれています。文字を追うだけで、加賀さんらしいなって感じられますもの。それから、公式フォトグラファーさんの目がハートマークになってんじゃないかってくらい、公式に加賀さんの色っぽい写真が毎週上がっていて、いろいろ辛いシーズンだったけど、その点で幸せな一年でした。これまでのプロ生活では有り得ないくらい、笑顔を届けてくれましたから。

3番目なのは、純粋な序列というより総合的なチーム事情で、致し方ないなと思ってました。今年はもう出場機会がないかと思っていたのだけど、すごい短期間だったけど、モリの離脱をきっかけとした競争に勝って、右CBのオプションとしてミシャにも認められたと確信してます。もしかしたら、もうちょっと時間があったらモリをドキドキさせるくらいになれたかもしれません。モリ自身もフィットするまでずいぶん時間がかかりましたし。その意味では、この一ヶ月強の期間は、ファンとしての感情の浮き沈み、望みと怒りと喜びが混ざった激動期だったけど、プロサッカー選手を応援してる楽しさをひさびさに感じさせてくれた大切な時間になりました。レッズでそんな時間ができたことが、嬉しいです。

残念ながら、なので今日は欠席。なんとなく予感はあって、自分が観に来ると出られないジンクスもあって、今日は無理かなと思っていました。なので、偶然加賀さんシートの近くの席になって、ドキドキしながら待ってました。でも今日は、CSということでVIPのお客さんが多かったようで、選手は上層にいたようです。試合前の挨拶のときにレッズの選手が上に向かって手を振ってたので、その時は気付かなかったけど、あとで聞いてわかりました。加賀さんを応援する期間のつもりが、加賀さんの気配すら感じられず。。。

というわけで、純粋にCS準決勝を辿ってみたいと思います。

延長に突入する、ノックアウトらしい激闘は、ミステリアスな4分間の末に、ガンバがものにしました。ガンバ大阪がCS決勝進出です。

浦和は、怪我で離脱していた那須とモリが間に合いました。慎三は以前不在。シフトはおなじみ3-4-2-1。GKは周作。3CBは右からモリ、那須、槙野。ボランチは勇樹と陽介。WBは右にタカ左に宇賀神。2シャドウは右に梅崎左にムトゥ。今日の1トップは忠成です。

ガンバは日替わり布陣です。パトリックがサスペンションから戻ります。シフトは2015シーズンの基本シフトとなった4-2-3-1。GKは東口。CBは今日の丹羽の相棒は西野。今日のSBは右にオ・ジェソク左に藤春。ヤットは今日はボランチに入って今野と組みます。今日のWGは右に浩之右に大森。宇佐美は今日はトップ下。1トップはパトリックです。

尊敬する、東京ユースサポの先駆者のひとりでいらっしゃるロゴスさんが、かつて「サッカーはミスのスポーツ」と定義されてました。長らくその真の意味を理解できなかったのだけど、最近ようやく分かるようになってきました。今日はミスが試合の流れを作ります。全般的に見ると浦和は、致命的なものだけでなく試合を通じてミスが目立ちました。一方ガンバはほとんど大きなミスがなかったのですけど、さいごの最後に丹羽ちゃんのファンタスティックなミスがありました。それでも幸運を呼んだのは、東口のほぼノーミスの神がかった堅実さと、もしかするとそこまでの丹羽ちゃんのがんばりがサッカーの神様に届いたのかもしれません。

浦和とガンバの基本プランは、これまでさんざ観てきましたので詳細には省きます。ミシャ浦和は攻撃時の4-1-5が特長です。健太ガンバは、あのガンバをして堅実でコンサバティブなサッカーをします。4+4の綺麗な2ラインでの守備網が特長。そして攻撃はカウンタースタイル。なので、一般的なガンバのイメージに反して、Jリーグのコアファンは既知のことですけど、攻める浦和をいなすガンバという構図が予想されました。

さて、なのでキックオフ時点からすでに、キャスティングボードを握る権利を持っていたのは浦和です。そして浦和はネガティブにそれを行使します。浦和はとてもコンサバティブな入りかたをします。顕著なのはモリと槙野の位置です。3CBはワイドオープンなのですけど、モリも槙野もそれほど高くは上がりません。この影響は、当然攻撃時のパス回しの基点、ノードが少なくなることを意味します。ポゼッションの仕方も、とても浦和的にオーソドックス。梅崎とムトゥがバイタルエリアに下がってポストを受けます。そこからの展開が、ガンバの守備力によって閉塞に追い込まれます。

まずイメージしたいのは、本来浦和がやりたい攻撃パターンです。今年の浦和は、大雑把に言うとカウンターです。バイタルエリアで基点を作って、サイドを縦にはやくえぐり、相手に陣形を整えさせる余裕を与えず一気に攻撃を加速、アジリティの高い両WBと両シャドウがかき回して、そこにトップも絡んで間髪いれずシュートまで持っていくという流れを思考します。もっとシンプルに言うと、ワンタッチで縦に急ぐ攻撃です。

これが機能するのは、守備網が少なからずマンマークの要素があることです。それが浦和のショートパスと後方からの攻撃参加で、守備網がコンフューズする原因です。それでは対するガンバの守備の基本プランです。ガンバは徹底したゾーンです。そして、件の4+4を、非常にコンパクトに保ち続けます。ボールサイドによって守備網を左右に移動します。なので、ボールサイドでは、後方からの攻め上がりを誘うルートがなく、ゆえにボールホルダーのパスコースもありません。このため浦和は、シャドウのポストを中盤に戻さざるを得ません。

浦和がコンサバティブだったのは、浦和自身の選択だと思います。ガンバの守りかたは既知のことだし、ましてつい二ヶ月ちょっと前に万博で対戦したばかりなので、攻撃のAプランが遮断されることは想定通りだったと思います。そこで浦和がとった、今日のAプランは、執拗なまでのサイドアタックでした。浦和は、ボールを持てて安定感のあるムトゥで基点を作ってガンバ守備網を下げ、内に絞る宇賀神と陽介を中盤に2枚並べる形でハブを作ります。そして守備網をムトゥサイドに片寄せさせておいて、タカを走らせます。そこに長いパスを一気につけます。

結果的に見ると、この作戦は失敗します。タカの仕掛けがクロスなのかカットインなのか判別できませんでしたけど、いずれガンバもこれを予想していたのでしょう。タカにボールは渡りますけど、かならず藤春がしっかりとついていて、結局タカがフリーで仕掛けることは一回もありませんでした。タカはいきおいを味方に、相手の守備姿勢が整う前に勝負することで活きるタイプのようです。もしかしたら、相対された時の独力突破には、まだ課題があるのかもしれません。試合を通じてタカにはチャンスがいっぱい回ってきました。良い位置にいて、しっかり味方の視野にして貰えてる証拠だと思います。でもその先で効果的な攻撃の仕事がついにできませんでした。今日のようなタイトな場でこそ得られる、良い経験になったかもしれませんね。

前後しますけど、浦和がコンサバティブな入りを選択しましたので、ガンバががんばることなく、ナチュラルにガンバがやりたいサッカーがはまります。非常に稀有なことのように思えます。もちろん浦和も浦和のサッカーに徹しました。ゲームビジョンという面では、互いに同じ志向でした。ただ結果を考えると、自分のサッカーに徹することに合理性があったのはガンバだったと言えると思います。

浦和はコンサバティブだったとは言え、もともと守備はリスクテイクが前提です。今日は随所に、とても分かりやすいシンメトリーがありました。守備の基本システムも同じです。ガンバが超コレクティブな守備指向であることは前述のとおりです。対する浦和は、超個人依存です。浦和の守備力の高さは、ひとえに3CBと勇樹の、1on1の技術強度とカバーリング能力で形作っています。攻撃がビルドアップスタイルなので、トランジションポイントにこだわる必要がなく、ゆえに守備網を必要としません。もちろん、いざ全力で守るという状況だとWBを下げて5バックにすることもありますけど、あくまでもオプションです。

健太さんの偉大さは、ガンバに守備網を作ったことだけでなく、ポゼッションの鬼のようなガンバをしてカウンターを主武器にすることを植え付けたことにあると思っています。もともとリーグでも群を抜いて、足もとの技術に長けた攻撃陣を豊富に持つチームですから、タイトな状況でのトラップとパスを苦にせず、さらにクオリティを高められます。中盤でヤットを軸に、宇佐美が基点になり、パトリック、大森、浩之をダイアゴナルに走らせ、一気に裏を目指します。ガンバの攻撃陣のポジション変更は、けしてダイナミックではありません。そのことで守備網を混乱させる意図はありません。むしろホンの一瞬、守備網の状況をよーく見ていて、守備網の意識の空白をついてにゅるっとスペースに入ってきます。そこに間髪いれず、ヤットや宇佐美からパスが出てきます。基本的な攻撃プランとしては多くのチームが採用していることですけど、この省エネで軽妙でハイセンスな攻撃ができるのは、間違いなくガンバだけだと思います。

浦和がマンマーク主体ということは、自ずとガンバにとって美味しいスペースがふんだんにあることを意味します。序盤のガンバは、宇佐美を中盤に下げて基点にし、バイタルエリアに浩之と大森、そして常に裏をパトリックに狙わせることで、カウンターでのビッグチャンスを数度作り出します。

ガンバの強みは、多重攻撃の形を作れることにもあります。パトリック+浩之が右を、宇佐美+大森が左を、外から内に迫るイメージで守備陣を内に寄せます。その間にジェソクと藤春を攻撃参加させ、内から外へと開き、あらためてクロスをゴール前に送ります。

もちろんこれらのことは浦和も承知の上だったでしょう。そして浦和の守備陣が1on1に耐えられるという計算だったと思います。そしてその期待に十分答えます。ガンバの最終兵器はもちろんパトリックなのですけど、浦和も守備の最終兵器の槙野の攻撃参加を封印してまで、パトリックを封じることに専念します。槙野自身は結局パトリックを完封したので、その点では少なくともイーブンだったと思います。

浦和ももちろん黙っていません。話が前後してわかりにくくなったかもしれませんけど、前述した右サイドアタックで守備網を押し下げ、カウンターの可能性を減らします。これでガンバをして守備モードに転じさせます。こうして、序盤の鍔迫り合いは、双方の予定通り、浦和が攻めガンバが守る構図に次第に入っていきます。前半は、緊張感あふれる展開のなか、スコアレスのまま終了。

後半も流れは変わりません。ただ、ガンバにはもうひとつの守備パターンがありました。フォアチェックです。奇異なことではなく、現代サッカーではオーソドックスな作戦です。浦和の起点が低く、かつ自分たちの守備網が浦和に先んじ整備されていると、パトリック、宇佐美、浩之、大森が内から外へとボールを追い出します。主目的は守備の方向付けなのですけど、攻撃陣に守備のクオリティが高く、独力で攻撃の状況を作り出せる選手が揃っているガンバですから、大いなる色気を秘めていることは間違いないです。

もうひとつ、目についたのは浦和のパスミスです。時折、長短のパスで精度を欠きました。とくにショートパスでは、とても繊細な選手間のポジショニング、なかでも中盤を浮遊する陽介の位置で、後方のパスが効果的だったりミスに見えたりします。今日は、もしかすると微妙に距離感覚に普段との違いが何か、あったのかもしれません。致命的な事態にならなければいいなと心配してました。そして、華麗なるガンバ族をして地道な作戦の積み重ねが、浦和のミスを誘発し、後半開始早々花を咲かせます。

47分。GKの戻しを周作が受け、前方の陽介の渡します。位置が低いので、陽介は周作にもう一度戻します。失点の要因のひとつは、この周作からはじまったプレー選択のあいまいさにあると思います。陽介に入ったとき今野が背後から迫っていました。陽介が周作に出した流れで、そのまま今野は周作に圧力をかけます。これが効きました。さしものの周作も那須にホスピタルパス。那須の前に宇佐美が立ってコースを切ります。これも効果的でした。那須に与えられたのは、前方ライン際の森脇だけ。那須のホスピタルパスを大森が狙っていました。カットした大森は、ボールを追いかけながらルックアップ。当然、ゴール前は今野がどフリーです。追いついた大森はダイレクトでゴール前に折り返します。右足トラップでペナルティエリアに入った今野は、周作の位置を見て、落ち着いて右足で流し込みました。浦和のプレー選択のあいまいさが起因したチャンスを、効果的なプレッシャーでカウンターに仕立て上げました。浦和0-1ガンバ。

ついについに試合が動きました。そしてミシャが動きます。スペシャル攻撃モードに移行です。今年の観戦が10試合目となる浦和ですけど、毎回新しい姿を魅せてくれます。今日のスペシャルモードも初めてみました。詳しく見てみましょう。

陽介が左右どちらかのCBのポジションに入ります。那須と勇樹はステイ。代わって梅崎とムトゥが中盤まで下がります。タカと宇賀神が忠成と横に並ぶ位置に入ります。そしてモリと槙野をWBの位置に上げます。シフトで言うとフラットな3-4-3。意図は三つ。最終的な狙いは、モリと槙野をフリーにして、右はクロス、左は宇賀神を絡めたカットインからシュートの形を作ることです。そのための第一として、最終ラインのどこからでもパスを出せるよう、フィードを持っている選手を3人並べます。中盤まで下がるシャドウの位置にも工夫があります。ヤットと今野のラインよりさらに深く下りてきます。ガンバはフラットなラインなので、ここまでくるとよほど宇佐美ががんばってカバーしない限りフリーで基点になれます。

ガンバの守備を最終的に堅固にしていたのは、丹羽と西野の両CBです。これに今野とヤットが加わる中央4枚の砦は対ゾーンの守備がとても堅く、それが浦和にペナルティエリアで浦和らしい高アジリティな連携をできなくさせていた要因です。スペシャルモードは、そこを対処します。タカと宇賀神がCBとSBの間に入ってきます。真ん中に忠成をはらせます。これでSBには内を、CBには外を意識させる、左右逆方向に作用するベクトルを作ります。こうしてモリと槙野がフリーになります。浦和のゴールの匂いが濃くなり、ガンバにとっては一番危険な時間帯となりました。同点は時間の問題だと思っていました。

そこでミシャが動きます。二枚同時代えです。梅崎に代えてズィライオをトップに、那須に代えてカピをボランチに投入します。勇樹が一枚下がってリベロ。右シャドウには忠成が入ります。ズィライオに関しては、合理的だと思います。梅崎はちょっと流れに乗り切れてなく、消えている時間もありました。それから、中央に安定感のある基点を作る意図もあったと思います。結果論ですけど、延長に入って打ち手がなかった浦和とカードを残していたガンバが、最終的な差を生んだ要素もあった気がするので、出来うるなら那須は残しておきたかったと思います。復帰したばかりなので無理だったのかもしれませんね。延長に入って、ムトゥとタカの足が限界を超えていたように見えました。同様にガンバの疲労感もすごく高かったので、俊幸を入れてひっかき回すことができたらと思います。

交代で少し役割が変わります。勇樹がリベロにずれ、カピは攻撃時に左CBの位置に入ります。忠成はムトゥほど下がらず、中盤でダイアゴナルなラインを作ります。どちらかと言うと右サイドの攻撃が活性化してたので、中盤の高い位置に忠成をはらせることで、今野をひきつけようとしたのかもしれません。

その影響があったかどうかわかりませんけど、右サイドをタカが中央に強引にカットインし、藤春とペナルティエリアで交錯したプレーが、それまで越えられなかった壁を破れるかもしれない空気を生みます。

そのタイミングで健太さんが動きます。宇佐美に代えて秋を同じくトップ下に投入します。純粋に宇佐美のコンディションを考慮したのだと思います。秋はトップ下でスターターになることも多いので、チームとしてのクオリティに影響はありません。この交代が影響されるわけではありませんが、直後のセットプレーで浦和の願いがようやく結実します。

72分。陽介の右CK。ガンバはストーンが3枚。ゴールエリアに藤春とパトリック。後方からの飛び込みに備えて浩之がペナルティエリア内にいます。レッズはペナルティエリア内に4つの島を作ります。中央の忠成と勇樹はジェソクと今野が見ています。そのもう一つゴール寄りにズィライオがいて丹羽が見ています。ニアに那須がいてヤットが見ています。ファアの槙野とモリは西野と大森が見ています。陽介の狙いはファア。藤春の頭を超えてモリに届きます。モリのヘッドはクロスバーに当たって高く跳ね上がります。イーブンボールに一番高くはやく到達したのはズィライオでした。執念でもぎとった同点ゴールです。浦和1-1ガンバ。

同点になってからのミシャの選択は、その是非の意見がわかれるような気がします。ミシャの選択はコンサバティブでした。戦前よりリスクを負わない選択を表明していた浦和ですから、同点になって基本プランに戻ったとも言えます。リーグ戦なら妥当な選択だと思います。でもノックアウトには勝負処があります。明らかにこの時間帯は、心身ともにガンバを凌駕できてましたから、一気に突き放すチャンスと見ることもできたと思います。ミシャはそれを選びませんでした。ミシャは勝負運がないと言われますけど、運じゃなく必然な部分もあるような気がしますし、むしろそっちのほうが原因として大きいんじゃないかと思います。エゴイスティックなほどミシャモデルに徹することがハマる時とそうでない時がある。とくに一発勝負の場では、いきおいを大切にすることも、もしかすると必要なのかもしれません。同点になってからの作戦は、モリと槙野を下げ、さらに勇樹とタイトに並べて中央に3枚の壁を作ります。カウンター対策だと思います。ただしWBの位置は高いままなので、必然的に左右に大きなスペースができます。秋は宇佐美よりも高い位置の中寄りでプレーする傾向にありますので、中央を堅める意図もあったと思います。

ミシャが動きます。宇賀神に代えて平忠を右WBに投入します。タカが左に回ります。宇賀神のコンディションを考慮したのだと思います。

一方ガンバは、矛盾するようですけどオリジナルの闘いかたを徹底的に崩しません。あえていうと、宇佐美が下がってから、パトリックを単独で走らせるスルーが増えます。最終的に120分間を終えてなお元気だったのはパトリックくらいでしたから、その無尽蔵なエネルギーで、終盤に向けてモリ、勇樹、槙野にジャブを叩いておこうという意図だと思います。もちろん独力突破からのシュートは十分有り得ます。それほどパトリックのスピードは抜きん出ていました。

そこで健太さんが動きます。浩之に代えて米倉を同じ右メイヤに投入します。パトリックが機能していたのを見て、シューターではなくクロッサーを当てようという意図だと思います。

当初モードに変わった浦和ですけど、ズィライオが深い位置で基点になることができて、シャドウとWBを押し上げ、以前イニシアチブを握り続けます。返す返すも惜しむらくは、結果的にシュート数で凌駕しているとおり、攻撃権を持てていたこの時間帯でガンバを突き放せなかったことです。もちろんガンバの徹底的に変わらない堅固な守備網のがんばりゆえではありますけど、一度そこを突き抜けることに成功した経験をしたわけですから、どこかでもう一度という想いは、今もします。正規の前後半はこのまま終了。延長に臨む浦和の円陣

延長前半の頭から健太さんが動きます。大森に代えて井手口をボランチに投入します。ヤットが一枚上がってトップ下に入ります。秋は左WGです。前線で基点ができてなかったので、高い位置でヤットに預け、パトリック、秋、米倉を走らせる意図だと思います。

シーズン中、今年のガンバは猫の目布陣でした。固定化されていたのは、ヤット、今野、丹羽、パトリック、東口くらい。それ以外は宇佐美ですらも競争ポジションでした。万博のトレーニングの日常は活き活きしていたでしょうね。ある程度の枠はあるにせよ、試合に出るチャンスがいっぱいあるわけですから。選手を代えても、あるいはポジションを入れ替えても、チームとしてのクオリティが下がらないことは、こうした長い時間をかけた取り組みの成果だと思います。

一方の浦和は、ご存知のとおり選手を固定化して連携の質を極限まで高める選択をしてきました。そのことの是非を言う資格はありませんけど、ドライに結果を見ると今年も年間王者を逃しました。フレッシュな夏前まではいいけど、研究される夏を越えると、怪我による離脱もあって、やはり今年も失速しました。せっかくバリエーションのある編成を持っているのだから、日々もう少し幅のある闘いかたができる取り組みを重ねてもいいんじゃないかと思います。

浦和は、すでにカードを使い切っているので、あとはピッチ上の選手でしのぐほかありません。前述しましたけど、ムトゥとタカは目に見えて疲労していました。浦和が攻めガンバが守り、時折カウンターを見せる流れは延長に入っても変わりません。ただ、ガンバも守備時の出足が止まりはじめ、受けの守備にならざるを得ない状況が多く見られるようになります。とは言え浦和もそこを突くだけの余力はもうなかったようです。延長前半もこのまま終了。

延長後半はもう死闘でした。唯一元気に見えるパトリックとズィライオだけが縦横に走り、もしかして何かを変えるのはこの二人のどちらかかなと思っていました。でも時間は過ぎ、そろそろPK戦も有り得るかなって気持ちになりかけた時、そう最終盤に事件が起こります。

事件は丹羽ちゃんから始まります。自陣で丹羽からパスを受けた井手口が平忠のプレスを受け、丹羽にホスピタルを返します。丹羽は西野に回そうとしますけど、ズィライオがコースを切ろうとします。丹羽は切り返しますけど、トラップが少し流れます。これを見たズィライオが圧力をかけに行きます。丹羽は組み立て直そうと東口に戻す選択をします。ここでびっくりぽんなことが起こります。何を思ったか丹羽ちゃんは、ご丁寧にルックアップして、有り得ないことにループで東口の頭を越えるシュートを狙います。は、冗談として、なぜ丹羽ちゃんが浮き球で東口に返したのか、謎は深まるばかり。浦和だけでなく、ガンバの選手、スタッフ、サポ全員が腰を抜かすほどのびっくりぽんだったでしょう。とはいえ、この丹羽ちゃんのびっくりぽんなミステリアスプレーが、張り詰めた、何か一瞬のズレすらも許さないように高テンションな埼スタの緊張感あふれる空気に、大きな鳴動を起こしました。ある意味、今日のヒーローは丹羽ちゃんです。そして約4分間の魔界の扉が開きました。

118分。丹羽のシュート?はポールに当たり跳ね返ります。東口はダイレクトに右サイドのジェソクに出します。ジェソクはセンターサークル付近のヤットに渡します。パスを受ける前に前線の状況を確認したヤットは、実にヤットらしいダイレクトで正確なパスを前線のパトリックに送ります。中央でパトリックがパスを受け、アタッキングサードに入ります。ガンバは右に米倉左に秋。対する浦和は平忠、モリ、槙野。3on3です。この時左サイドを藤春が長駆上がっています。パトリックは槙野を引きつけ米倉に出します。米倉はルックアップして状況を確認します。秋には平忠がついてます。パトリックは槙野。米倉は大外を上がる藤春をしっかり視野にしてました。タイミングをはかった米倉は、ファアに丁寧なクロスを送ります。藤春は右足ダイレクトでゴール右隅に叩き込みました。浦和1-2ガンバ。

もう後がない浦和はパワープレーに出ます。槙野を前線に残します。カピが左CBに入ります。

ガンバも試合を仕舞いにかかります。ついにシフトを変更します。5-4-1です。今野を左CBに入れ、ヤットがボランチに下がります。ガンバの5バックはほとんど観た記憶がないので急造かと思いましたけど、丹羽を中心に西野と今野がタイトに並び、距離感をしっかり維持していたので、準備していたのでしょう。そして、激闘の終止符は、やはりあの男たちが華麗かつパワフルに奏でました。

延長後半アディショナルタイム。井手口が陽介に倒されて得た、アタッキングサードやや手前、中央のFK。ぬかりなく前線の様子を見ていたヤットは、パトリックの様子を観察していました。パトリックは左足が痛そうなふりをして右寄りにぼーといます。この時米倉が右ライン側に出ようとしていて、気づいた陽介がタカにケアを指示します。タカが米倉を意識し、陽介がヤットに目線を送った瞬間、パトリックが突然裏に抜ける動きを見せます。ヤットがこれを見逃すはずがありません。パトリックと周作の中間に落ちるロブを送ります。先に追いついたのはパトリックの右足でした。浦和1-3ガンバ。

埼スタは、南スタンドを除いて音を無くします。感覚的には、浦和サポは、ガンバのチャントは聞こえてなかったことでしょう。自分ですらも、精神的な感覚が物理に影響して、ホントにシーンという静寂音が聞こえたような気がしました。浦和は、一切のちからを無くしました。試合終了。浦和1-3ガンバ。

あえて言うなれば、対局的なまでにシンメトリーだった浦和とガンバの違いは、今日ばかりは最終的にガンバにとって有利な流れを作ったと思います。その意味で、ガンバは勝つべくして勝ったし、浦和は負けるべくして負けました。

ただ、一発勝負の場での勝ち負けが、そのままシーズンの総合的な優劣を決めるものではありません。客観的に見れば、ガンバは唯一のやれる事がハマっただけとも言えます。チームとしての深みという意味では、浦和のほうが芳醇だと思います。でも、粛々と同じことを120分間実行し続けるディシプリンは賞賛に値すると思いますし、それを成し得たことは、大小の紆余曲折はあったにせよ、健太さんを中心にガンバがひとつになって一年を乗り切ったご褒美だと思います。決勝も頑張って欲しいと思います。

加賀さんを追う2015年のJリーグでの生活が終わりました。予定では、加賀さんオンリーの時間は2週間あったのだけど、半分で終わってしまいました。天皇杯を待ちますので、もとの二股に戻ります。とても難しいことだと思いますけど、元旦の味スタで、今年一番楽しみにしていた願いが成就することを夢見たいと思います。