ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

第95回天皇杯4回戦FC東京vs水戸ホーリーホック@味スタ20151111

2015-11-14 17:04:36 | サッカー

ポッキーの日でございます。チンアナゴの日でもあります。我々サッカーファンにとっては、恒例のキングカズの契約更新日でもあります。そして地味にチーズの日です。

ひさびさの2ヶ月ぶりのミッドウィークは、さすが11月です。すっかり夜は冷えますね。ミッドウィークの日はただでさえカメラで荷物が大きくなるのに、グランドコートをバッグに入れると、どう見てるスーツに不似合いです。まあ普段からトートなので、スーツに似合ってるか疑問ですけど(^^ゞ。

本日は天皇杯です。東京はシードで、4回戦からの登場になりました。相手は3回戦で好調鹿島との茨城ダービーをPK戦で制した、水戸ちゃんです。本日のYou'll Never Walk Alone♪

前半と後半に1点ずつとって、スコアにチンアナゴを並べる、粋でいなせな東京らしい勝利です。ベスト8に進出しました。

東京は、モリゲとまるとバーンズが代表で不在です。シフトはいつもの4-3-1-2。GKは達也。CBはカズと奈良。SBは徳永と宏介。3CHは今日はたまが右に入り、秀人、ヨネと並びます。今日のトップ下は翔哉。2トップは遼一と慶悟です。

水戸はカップ戦用のシフトと布陣を組んできました。シフトはおそらく今シーズン使っていないんじゃないかと思える、特異な5-3-2です。GKは笠原。3CBは右から細川、新里、宗。WBは右に石川左に田中。3ボランチは右から白井、岩尾、船谷。2トップは雄斗とルーベンです。

ミステルが考える布陣の軸と、競争ポジションが良くわかる、興味深い布陣になりました。言い換えると東京は基本プランとしてはベストメンバーで臨んだと言えます。

対する水戸は、天皇杯スペシャルです。鹿島戦を見てないので、どんな闘いかたをしたのかはわかりません。鹿島は4-2-3-1を基本シフトとしていますので、オリジナルの水戸のシフトでマッチアップが整うと思います。想像するに、またここ3戦の水戸の成績が連続ドローで、なおかつ得点1失点も1ということを加味すると、ようするに守備網を固める闘いかたが基本プランなのではないかと考えていました。

その意味で、今日の特異な5-3-2の選択は、たぶんに守備を意識しての判断だというのは想像するに難くはありません。問題は選択の主意、つまり東京のどこをどう抑えようとしたのか、にあります。東京は2トップですから、3バックにして一枚余らせる考えでしょう。これは最終局面で活かすポイントです。それから東京はサイドアタックを基調としてますので、徳永と宏介への対策としてWBを置いたのだと思います。ここまではそれほど特異ではありません。5バックではありますけど、細川と石川がスライドしただけですので、形は違えど、距離感と連携には大きな違和感はないと思います。発想がマンマークなので、守りかたとしても難易度はそれほど高くありませんので。

とても興味深かったのは、なので中央の3人です。並びが特異でした。守備時は、白井、岩尾、船谷をフラットに並べます。ちなみに攻撃時は、白井と船谷が上がって逆三角形の形になります。中央にフラットな3人の線を引いたということは、バイタルエリアをクローズドすることを思考したのだと推測できます。想定されるターゲットは、翔哉、たま、ヨネ。つまり、バイタルエリアの攻防、フラットな3CHが東京のアタックに通用するのかが、この試合の導入における、最大のテーマになりました。

答えは、あっけなく、そしてあっさりと出ます。東京が水戸の5+3の守備網を序盤からはやくも崩壊させます。原因は水戸の守備プランの矛盾にあります。最終ラインがマンマーク基調なのに対し、中盤がゾーン。もうお分かりだと思いますけど、バイタルエリアにこの矛盾の結果が表層します。

東京は、とても普段通りの、オリジナルの攻撃プランで臨みました。ぼくらにとっては、例えば小平では馴染みの光景です。大まかに言うと、トップ下を経由して前線に送る攻撃の流れです。トップ下がバイタルエリアを浮遊して攻撃ルートを作り、かつ基点になって、シンプルに縦に繋ぎます。ただ、この原則を試合でそのまま見せることは、実は案外と多くはありません。サッカーは相手がいるゲームですので、試合で観る光景は相対的な結果です。もちろん水戸はスカウティングを十分にしたと思うのですけど、試合での表層的な東京の攻撃プランに内在する、実はとってもシンプルな原則に、もしかすると踏み込めなかったのかもしれません。

東京は、遼一を真ん中に置いて新里を引きつけます。慶悟が最前線を左右に移動して、攻撃モードになると裏に抜ける動きを見せ、宗あるいは細川を引っ張ります。サイドでは、徳永と宏介が高く位置取り、石川と田中を引きつけます。つまり、水戸の最終ラインは、意識ベクトルが後方に伸びます。

さらに東京は、たまとヨネを中盤高めの位置にポジショニングさせます。これが水戸の矛盾を発動させる第二のきっかけになります。白井と船谷は、中央をケアするためにステイします。水戸の中盤がゾーンゆえ、白井と船谷の選択に引っ張られて岩尾もステイします。

決定的に水戸のスタートプランが水戸自身を自滅においやるのは、水戸がフォアチェックを選択したということです。ルーベンと雄斗が、東京の起点である最終ラインと秀人をチェックします。このチェックは、後方のために東京をディレイさせ、かつ守備方向を決めるだけの意図ではなく、ショートカウンターによる攻撃も含めたものでした。結果論ですけど、東京に対する水戸をして、このフォアチェックは少々色気を見せ過ぎたかなと思います。当然中盤はこの動きに連動しなければなりません。これで、中盤から前は前、後方は後ろという、異なる方向に力が作用することになってしまいます。

結果的に、バイタルエリアがガラ空きになります。ここを、遼一とふらふらと浮遊する翔哉が見過ごすはずがありません。誤解を恐れずに言うと、今日の水戸は儚いほどクリーンでした。もしかすると、ここが鹿島戦との最大の違いだったのかもしれません。およそ水戸の戦力では、かなりガッツリと肉弾戦に及ばないと現実的に東京を止めるのは難しいと思います。水戸にとっては切ないというか、現在J2で19位。J3入れ替え戦出場圏とは、残り2試合で勝ち点5差。しかも相手は、プレーオフ出場圏を争う札幌と、直接のライバル18位京都です。中二日の今週末に第41節ホーム最終戦が控えていることを考慮して、今日は主力を温存。さらにコンサバティブでクリーンな闘いを強いられたのだと思います。その意味では、東京は運が良かったとも言えます。

と言うわけで、東京がやりたい放題です。中央で作って左に展開し、宏介が必殺アーリークロスをゴール前に送るシーンが再三繰り返されます。そして、結果を残します。

14分。センターサークル付近で白井をチェックしたヨネがトランジションし、起点になります。カウンターの発動です。ヨネは前方、バイタルエリアでどフリーの遼一に渡します。例によってバイタルエリアはガラ空き。遼一はフォローしてきた翔哉にポストを落とします。翔哉には岩尾がついていましたけど、攻撃モードだったのか翔哉の動きについていけません。バイタルエリアの左には慶悟がこれまたどフリー。完全に東京が支配しています。翔哉の選択はドリブルです。実に翔哉らしいプレーチョイスです。翔哉は新里と細川をめがけでドリブルします。これでCB二人を引きつけます。水戸全体が下がり加減になりますので、石川も戻ります。このとき左サイドでは、宏介が上がってきていました。翔哉はさらに石川も引きつけ、宏介を完全にフリーにします。翔哉は丁寧に宏介に流します。トラップした宏介はルックアップ。この時中央では、ポストを落とした遼一が、宗の背後を回り込むようにターンして、ゴール前に進出していました。局面がアタッキングサードに移行します。ペナルティエリアに入って、新里が遼一に気づきますけど、宗は指示に反応しません。その瞬間をはかって、宏介がGKとCBの間に、必殺神技高速低空クロスを送ります。宗と新里の間から、難なく宗の前に出た遼一がどフリーで合わせました。東京1-0水戸。

もちろん宏介のクロスもパーフェクトなのですけど、水戸の守備のルーズさが顕著に現れたシーンでした。

水戸は抵抗を見せます。先制されたことを受け、オリジナルのプランに戻します。シフトを4-4-2にします。田中が左SBに下がり、CBの3人はそれぞれ右にずれ、細川が右SBに出ます。石川が右メイヤに上がります。左メイヤは船谷。ボランチは白井と岩尾です。左右のメイヤの役割分担が面白いです。船谷はバイタルエリアを内に絞り気味にいて、繋ぎを担います。SBが高く位置取り、基点となります。攻撃は雄斗をターゲットにしたポストをきっかけとして、SBが基点となって、前方のサイドに流れる雄斗、ルーベンに出してゴール前に折り返すか、あるいは中央の高い位置で基点を作ってSBを押し上げ、そこからクロスを狙うパターンのようです。

石川はシャドウストライカーを担います。雄斗とルーベンがかなり動きますので、中央が空きます。そこにタイミングを計って石川がダイアゴナルに上がっていきます。東京は、この石川の動きをケアし切れていませんでした。中央に突然顔を出す石川自身、あるいは石川を囮にして、遅れ気味に上がる船谷、田中、白井からもチャンスメークができていました。水戸がアグレッシブさを取り戻します。ただ、東京にとっては織り込み済み。先制して守備モードになるのは基本中の基本です。水戸はなかなかペナルティエリアに入ることができません。

ルーベンは守備ではフォアチェッカーとして、攻撃ではスペースメイカーとして序盤から運動量豊富に走り回っていました。前半の、フォアチェックで奈良からトランジションしてチャンスに繋げたプレーなど、クリティカルな部分にも関わっていました。シュートチャンスが少なかったことが残念ですけど、試合の流れには乗れていました。ウォームアップからずっとたまとルーベンがいつ近づくかなって見てたら、キックオフの時にちょうど並んで、一瞬目で挨拶してたようでした。

さて、ミステルが最初の手を打ちます。たまとヨネのポジションを入れ替えます。この意図を読み解くのは難解でした。今でも真意は分かりません。水戸の右サイドが活性化していたのですけど、水戸は左で作って右で仕掛けるパターンなので、ヨネで基点をケアする意図かもしれません。でも、それよりもたまをテストする意味のほうが大きかったんじゃないかと思います。先制するまでの、東京がイニシアチブを握っていた時間は、主に左加重だったので、たまは動き回っていたのだけどなかなか試合に絡むチャンスが回ってきませんでした。右WHは競争ポジションですから、拳人、羽生についでたまが加わるなら、ますますチームの底上げにつながると思うのです。

水戸が攻撃権を持つ時間が長くなりましたけど、例によって東京のプラン通り。東京が完全にオーガナイズする前半は、リードしたまま終了。

後半頭からミステルが動きます。ヨネとたまのポジションを元に戻します。

先に動いたのはミステルです。たまに代えて拳人を同じ右WHに投入します。勝負師というか、たまにとって厳しいメッセージのように感じました。明らかに、追加点を狙いに行く作戦だと思いますし、その後の守備のバランスと強度を考えると、拳人のほうが効果的と考えたのでしょう。最近の拳人の充実を考えると、見てるぼくらも自然に受け入れてしまいます。もっとたまが躍動する姿を観たいので、なかなかミステルのサッカーだとたまの個性が完全に昇華する機会は少ないと思いますけど、がんばってほしいです。

直後に西ヶ谷さんも動きます。石川に代えて武蔵をトップに投入します。雄斗は右メイヤに回ります。前半は石川が機能していたので、ちょっとびっくりぽんでした。石川のHPはそれほど多くはないということなのでしょう。さらに、前線にスピードマンを置くことで、ロングカウンターを狙う意図もあったと思います。水戸は武蔵にボールを集めます。

このカードの切り合い、攻め合いは、いきなりミステルに軍配が上がります。

57分。自陣で徳永が起点になります。センターサークルにヨネがフリーです。徳永はヨネに渡します。ヨネはドリブルを見せて、岩尾、船谷、雄斗を引きつけます。このため、バイタルエリアには、またもぽっかりと大きなスペースができます。この時前線は、中央に遼一がいて新里が見ています。ところが右は、慶悟、翔哉、拳人に対して宗一人。3on1の数的優位です。ヨネは当然右を使います。ヨネは遼一に縦パス。攻撃スイッチが押されます。東京に縦への推進力が発動します。遼一はダイレクトで右にはたきます。慶悟はスルー。その先に拳人がいました。宗が拳人の前に入りますけど、距離があります。ルックアップした拳人は、まだアタッキングサードの手前でしたけど、思い切ります。左足トラップで前に出し、右足を豪快に振り抜きました。ゴール左隅に突き刺さります。拳人は味スタ初ゴールがゴラッソになりました。東京2-0水戸。

これを受け、ミステルが動きます。おなじみの作戦です。シフトを4-4-2に移行します。拳人が右メイヤ慶悟が左です。水戸も同じ形ですから、マッチアップが揃います。

さらにミステルが動きます。翔哉に代えて河野を同じくトップに投入します。翔哉のコンディションを考慮したのだと思います。河野は温存すると思っていたので、ちょっとびっくりぽんでしたけど、これで明確に、翔哉が河野と競う地位まで昇ってきたことが分かりました。もしかすると、決戦となる最終戦と、可能性が高まっているその先、シーズン終盤に向け、河野と翔哉のクリアで激しく楽しい競争が、チームに上昇気流をもたらすような、そんな予感がします。

同時に西ヶ谷さんも動きます。ルーベンに代えて馬場を投入します。シフトを4-2-3-1に変更します。馬場は左メイヤ。トップ下に船谷が入ります。1トップは武蔵。船谷と馬場がダイナミックにポジションチェンジして、東京の堅い守備網を揺さぶります。このシフトと布陣の変更は、今日一番機能します。船谷、雄斗、馬場とボールを持てる選手が並んだので、前線で基点ができるようになります。水戸本来の、スモールサークルでショートパスを細かくつないでビルドアップするスタイルを見せられるようになります。

続けて西ヶ谷さんが動きます。雄斗に代えて池ヶ谷を同じく右メイヤに投入します。ポゼッションをさらに高めようという意図だと思います。水戸がイニシアチブを握る時間が長くなります。

アディショナルタイムに入って、ミステルが動きます。遼一に代えて容平を同じくトップに投入します。これは柏戦の秀人のフォアチェックと同じ意図だと思います。方法は異なりますけど、最後にワンプッシュして、水戸の攻勢に一矢を仕掛ける意図だと思います。ここが、シーズン最終盤に来てのミステル東京の新しい進化です。容平は、とても容平らしく前線を前後左右にダイナミックに動いて引っかきまわします。これが機能します。水戸はおそらく、ストレスフルだったことでしょう。攻撃したいのに、容平の動きで後ろに引っ張られるわけですから。容平らしさを加味した、ミステルの素晴らしい作戦だったと思います。

作戦通り、このまま試合終了。東京2-0水戸。拳人のシュワッチ

お互いに不完全燃焼だったと思いますけど、たまとルーベンは互いに一緒のピッチに立てて良かったと思います。試合後に、ようやく二人の笑顔を観ることができました。ユニフォームを交換したとか。

東京はベスト8に進出しました。たぶんに水戸の事情によるラックの要素が強い勝利ではありましたけれど、正念場の決戦が続くシーズン最終盤に向け、いいタタキができたと思います。

ベスト8の相手は広島。ちょっと先の12月26日です。その頃までにぼくらは、ミステル東京のどんなクライマックスを体感しているのでしょう。