ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

柳家花緑独演会@三鷹市芸術文化センター20140321

2014-03-23 12:42:26 | アート・文化

早咲きの桜が綺麗でございます。染井吉野のつぼみも膨らんできて、もう春です。

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ひさしぶりに落語です。ご近所で聴ける落語会。三鷹市芸術文化センターです。

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柳家花緑師匠の独演会です。d47でお聴きしてからすっかりファンでございます。

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開演前に主催のセンターのほうからアテンションがありました。落語の最中に小さな声で会話したり、ビニール袋の音をさせると周りに迷惑なのでとのこと。他所では聞かないアテンションなのでセンターさんの対応は面白かったんですけど、そもそも落語は喧騒のなかでやっていた芸ですから、クレームをつけた人はちょっと細か過ぎんじゃないって思いました。いいじゃん別に。落語は気軽にワイワイ聴こうよ。

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前座は、花緑師匠のお弟子さん、柳家緑助さんです。花緑の十番弟子の緑助のほうでお付き合いを。落語にはクマさん八っつぁんなんてのが出てきますけど、あたまに呼び名がついてて、ガラッパチの八なんて。クマ八とご隠居さんがやりあうって話がありまして。という流れから、「道灌」。

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一回、ご隠居さんが掛け軸を講釈する件で台詞を忘れちゃいました(^^ゞ。えーとえーとってなったけど、すぐに思い出しました。結構長い噺なんですけど、しっかり覚えてらっしゃいました。姿形も噺家さんっぽくてスッキリしているので、上手になるかもしれませんね。がんばってほしいです。

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さて、師匠の登場です。ピンクの着流しに紺色の羽織と袴です。弟子の発表会にお付き合いいただいてありがとうございます。今回が4回目の高座です。3回目が一番良かったです。稽古サボってやがったな。我々の職業は、こうやって高座に上がらせていただいてその回数でだんだん育つものです。私なんかも前座のとき、そりゃあ酷かったですよ。緑助くんは入門して1年。高校卒業してすぐ入門しまして、いま19です。浜松の出なんですけど、生まれてからずーと浜松にいたのに、東京に出てきて1年後に三鷹にいるなんてねえ。入門されるかたでも30代はまあ初高座でも落ち着いているもんですけど、彼、まだ19ですからね。袖から見ていてドキドキしました。もう出て行ってかわりにやっちゃおうかと思いました。あの隠居なんですか。ボケてるんですかね。でもね。真打になっても詰まっちゃうもんです。私も、あれは池袋でやったときガマの油をかけましてね。ガマの油の講釈の同じところで台詞が出てこないんです。頭からなんべんやり直してもだめ。しょうがないんで、もう一ぺん出直しましてね。お囃子もやってもらって。それで初天神やりましたw。なんだよ花緑は意気地がないねって思うでしょ?。そうなんですよ。あれは25、6のことだったですかね。落語っていうのは記憶するもんです。いろいろ言いますけどまずは記憶しないと始まんない。最初は朗読みたいなもんです。小三治師匠、落語協会の会長ですね、なんて、落語が朗読なら、俺はいまでも300くらいは話せるよって言ってます。記憶力選手権でも優勝しちゃいますね。慣れてくるとアドリブを使うんです。プロは、詰まっても違う言葉でつないでいるとそのうち思い出すんです。私のピアノの10年来の師匠、国府弘子さんが言ってたんですけど、師匠つっても10年でレッスンは2回しか受けてないんですけど、やっぱりミスするんだそうですね。ペンペロペーペーペーなんてやっててペーのところを弾き間違えたら、ペーを3べんくらいやるんだそうです。「私間違えたわよー」って気付いてもらうために。3べんくらいやったらお客さんが、「わかったから、もういいから」って頷いてくれるんだそうです。ミスは誰でもするもんですけど、リカバリーができてこそプロですね。私どもの職業は喋りだけですから、喋りでカバーしなきゃいけません。ミスすると表情で筒抜けなんですね。すぐわかっちゃう。眠いときは寝たいんですけどね。皆さんが寝たら私も寝られる。今日は昼夜です。私はどちらかというと後半に強いほうなんです。だから夜のほうがいいかもしれませんよ。今日は春分の日。ここにお集まりの皆さんは、お昼間はなにをされてたんでしょうね。寝てたかたもいらっしゃるでしょうし、用事を済ませてこられたかたもいらっしゃると思います。今日は昼夜三席ずつ。六席やります。大変ですよ。えー、三鷹市芸術文化センター。立派ですね。駅から半端に遠いという。皆さんで不便を共有しようっていう。歩いて15分から20分ですか。ご不自由なかただともっとかかりますね。ここまで来るのに疲れちゃう。寝てもいいですよ。寝てても起こさないですから。毎年三鷹でやらせていただいているんですけど、いつもお越しのかたも、今日初めていらしたかたもいらっしゃると思います。落語が初めてってかたもいらっしゃいますよね。さん喬とか喬太郎とか三三じゃなくって私でいいんですか?。あれもこれもってお聴きになるかたより、同じ噺家を聴くというかたのほうが多いようですね。ときどき例えば志の輔を聴いてるかたがちょっと河岸を変えてって私を聴きにこられて、おやなんか違うと首をかしげられたりするんです。落語の上手下手を仰るかたがいらっしゃいますけど、私に言わせれば落語なんて好き嫌いなんです。もちろん前座のころは上手下手がありますけど、真打になったらこれはもう好き嫌いです。今日おいでの皆さんは私のファンだと思っております。まったくどこまでが芸でどこまでが無駄話か、自分でもわからなかくなっています。初めてこられたかた、落語ってこんなに明るいところでやるんだってビックリされているかたもいらっしゃると思います。普通、演劇や歌なんて客席が暗いですよね。落語は明るいんですよ。私の顔を皆さんにさらけ出していますけど、皆さんの顔も逆に私に筒抜けですからね。私に見られているわけです。ときどき見つめ合っちゃったりして。よくいらしてるかたのお顔はだいたい覚えています。忘れろって言ったって無理ですからね。えー。今日はとても大きなテーマをやります。男と女です。この世で普遍的なことは、男は女にはかなわないということです。母なる大地なんて言いますけど、女性のほうが強いんです。だいたい女性はフェアじゃないですよね。誰もがお母さんから生まれるじゃないですか。お母さんの産道を通ってきますよね。そりゃあ、母にはかないませんよ。お父さんから生まれるって人なんていないですよね。もしここにいらしたら、落語なんてやめます。対談しちゃいます。そのほうが皆さんのためになりますから。これからお話するのは、そんな男女の問題作です。という流れから、「宮戸川」。

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師匠、一席終わっても降りずにそのまま続けます。この噺には後半がありまして、お花を半七はすごいことになるんです。二人は夫婦になるんですけど、お花さんは殺されちゃうんです。で、半七は仇討ちの旅に出るんですけど、たまたま同じ船に仇が乗り合わせるんです。いざ仇討ちってときにお店の小僧さんに起こされて、全部夢でしたってオチです。昔、夢は小僧の使いって言いましてね。それとかけているわけです。長い噺なんで、今日みたいに前半だけが独立した噺になることもあります。「お花半七馴れ初めの一席」なんて呼ばれたりします。旅はいいですね。昔の旅は歩いていたわけですから、大変でしょうね。旅は憧れだったんです。いまは、そうだ京都に行こうなんて新幹線でぴゅーって行けちゃいますけど、昔は不自由でした。歩く旅ですから、そこから文化が生まれるんですね。宿場町が出来て、旅行く人が江戸や上方の文化を伝えて、逆にその町の文化が江戸や上方に伝わって。盗賊も出るし病もありますから、旅は命懸けなんです。この噺は、江戸っ子が京都に行って遊ぼうって噺です。旦那と太鼓持ちが出てきます。男芸者。私たち噺家もそうですね。昔噺家は、酒席に呼ばれたりなんかしたら、ちょっとエッチな噺をしたりするんです。どんな噺かは言いませんよ。今日はお子さんもいらっしゃいますから。さっきのお花半七みたいに、男女がひとつ布団で寝たらアレがアレしてこうなるんです。ウチの祖父もやってたそうですね。ほっぺからお味噌汁が出てきそうな顔してねえ。という流れから、「愛宕山」。

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仲入りがありまして、もう一度師匠が上がります。衣装替えされてます。白い着流しに萌黄色の羽織です。CSに落語小僧って番組がありましてね。私もよく見るんですけど、おもしろいんです。子供に大人が落語を教えるんです。教えてるほうも素人。素人が素人に教えるっていう。これが結構勉強になるんです。もちろんプロならもっと上手に教えるっていうところもあるんですけど、教育って難しいっていうことを教えて貰えます。私は中学から入門して、22で真打になりました。戦後最年少、31人抜きなんて言われましてね。なんで22で真打になれたかって言いますと、秘密があるんです。私には当時の落語協会会長と太ーいパイプがあったんです。偽装工作をしたわけです。なんでこんなことを言うかっていうと、私は正直なんです。正直と素直って違いますね。正直は、はじめのうちコミュニケーションがゴツゴツします。正直はどうかすると思ったことを言いますからね。昔から正直者は変わり者って言います。だから正直はおもしろいです。そんな正直が何人か集まると、おかしなことになるんです。この噺も正直者の噺です。清兵衛という屑屋が出てきます。たそがれじゃないですよ。屑屋っていまでいうリサイクル業者ですね。という流れから、「井戸の茶碗」。

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端っこでしたけど最前列で観ました。師匠の表情もしっかりわかりました。師匠の噺は歯切れがよくって疾走感があってスッとします。大笑いできて気持ちよかったです。

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