今年はトンボが本を買わないといっているので、新刊が読めないのがさみしい。
そんな時、ジンちゃんが、「これ、ママさんにお勧め!」といって見せてくれた本です。
初めて読む桐野夏生。
63歳で夫の隆之が突然逝ってしまった。残された妻の敏子は59歳の平凡な主婦。
小津安次郎の映画の主婦を思い出してしまったが、それほど古い感じの中流階級の敏子。それほど平平凡凡と生きてきたであろう敏子が、夫の死後発覚した愛人に驚き戸惑う。さぁこれからどうするの。
しどろもどろの敏子の優柔不断さにイライラするも、それでも前向きに生きて行こうとする姿が描かれていて、うん、そうこなくちゃと自然に応援しているのだ。
夫に先立たれたのは私も同じ、そんなこと頭に描きながら読んでいった。
敏子は夫の死によって、なにも知らなかった自分に気づき、今まで置かれていた立場を自分の心に説明することが出来ず、ひどく混乱するのだ。
それはこれから先の生活上の不安もさることながらそれより、夫の生前中から既に起きていた様々な家族の問題を、知らなかったというより、避けてきたことにあるのだ。
私もこの主人公と同じ経験をしていてよくわかるのだけど、主がいるということは、世間の嫌な風も受け止めてくれ、ワンクッションおいて、感じることができた。
温かい胸にすっぽりと埋まっていれば安心して生きて行けた。一人になるとそういうことも含めてすべて自分で立ち向かわねばならない。いざその立場になると、立ち向かう気力も術も薄れているということ、そして自分はなんて無力で つまらない人間のだと思うのだ。
敏子は家族が恙無く暮らしていれば、なにも問題はないと思っていた。が突然夫に死なれて、恙無くという言葉が、本当の孤独を隠していたということに気づくのだ。
しかし、これではいけない、しっかりしなければと、次第に自分の言葉で自分の足でちゃんと歩く姿が描かれていて、やっと安心させられる。
たった8ヶ月の間に、いろいろな経験も、問題も経験し、最後は少し騙されて、簡単に人を信じてはいけないとも学習する敏子でした。
ジンちゃん、なかなか面白かったです。有難うございました。
晴れ 10℃
今度は本流の小説の中で面白さは、一番といわれている「柔らかな頬」を持っていきます。
初めて読んだ作家ですが、すんなり入り込めました。
是非 またよろしくです。