アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

ブリ、ボラ、スズキ… マグロも出世します!

2024年07月26日 | Weblog
 スーパーの鮮魚売り場で、「メジ」を発見。数人の買い物客が集まっていました。
「メジって何?」と、いう声が上がり、お客さんが盛り上がっておりました。そこへよせばいいのに、私まで口を挟んでしまいました。
「メジはマグロの子。マグロも出世魚なんですよ!」
 客達は、「この爺様、何を言い出すやら…」「何~んも知らないんだねぇ。出世魚は、ブリとボラでしょ!」という視線。折角、無料で知識を教えてあげているのに。客の態度というか反応がよろしくない。

「成長に伴って呼び名が変わる」というところだけをとると、マグロも立派な出世魚なのです。
「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)」という書物があります。
元禄10年(1697年)に刊行された本。日本の食物全般について、品名を挙げて、「性質」「食法」などを詳しく説明してあります。「食鑑中の白眉」といわれている素晴らしいものです。
 その「本朝食鑑」のマグロの記述は・・・
「…二、三尺を『目鹿(めじか)』、四、五尺を『真黒(まくろ)』、七、八尺以上を『鮪(しび)』と呼ぶ…」と、書かれています。元禄時代からすでに出世魚として知られていたことが分かります。

 現在は、「ヨコワ」→「メジ(北日本ではゴンタとも)」→「中坊(または小マグロ)」→「マグロ」という名前の変遷を辿ります。

 縄文時代の貝塚からマグロの骨が出土していますから、日本人発生当初からマグロを食べていたことが解ります。古事記や万葉集にも、「シビ」の名で登場しています。古語辞典に、「しび『鮪』…マグロの大きなもの」と出ています。
 我が家では、マグロはヅケにしていただきます。「冷凍ならともかく、高価なものをヅケにするのはもったいない」というご意見もあるようですが、ヅケにすると旨みは一層上がります。古人の智慧であるヅケは、単に保存の意味ではなく、味が良くなるものでもあったのです。味覚ですから、当然、個人の見解ですがね。「ヅケは不味い」とおっしゃる方がおられても、何ら問題です。

「マグロ」という呼び名は日本全国どこへ行っても「マグロだろう」と、思いきや、そうじゃありません。古くから日本人の身近にあった魚だけに、その呼び名の多さも日本一ではないかと思います。いや、正しく日本一でしょう。
 列挙すれば、時間がかかりすぎますのでおもしろい呼び名を抽出しますと…
 ウメゾメ(梅染?)、ウラマワリガツオ(裏回り鰹?鰹の仲間と思われていた?)、オオシビ、オオマグロ、カタマ(蒲田行進曲!)、カンバ(大阪で獲れるマグロ?「カンバ大阪」なんちゃって!)、クロ(犬じゃないんだから)、ゴトウ(後藤さんがの命名か?)、ゴンタ(たぶん漢字で書くと権太)、ニンダ(忍だ)、ハツ(心臓か!)、マゴロ(マグロの訛りか?)、ムツ(六つ?)、ヤツ(八つ?)、ヨツ(四つ?)・・・。 

 若いマグロの呼び名は、カキノタネ(カ、カキノタネはマグロだった?)、コビン(迷探偵?あれはコナンだね)、マメジ(豆痔?痛そう)、メジ、メジカ、ヨコワ…。(メジカも書いておきましたからね)

 いやーっ!マグロには呼び名が多いです。「だからなんなんだ」って?深い意味などありません。私が従業員でもないのにスーパーの鮮魚売り場を和ませようと、「マグロ出世魚説」を開陳しました。それなのに、端っから疑うお客さんばかりで…この場で憂さ晴らしをさせていただきました。