おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「それでも、警官は微笑う」 日明恩

2008年03月31日 | た行の作家
「それでも、警官は微笑う」 日明恩著 講談社文庫

 日明さん、メチャメチャ、カッコイイですぅ!! 初めて読みましたが、一気に、惚れました。昨今のケーサツ小説の書き手としては、佐々木譲、今野敏が私の“お気に入り”であり、緻密さにおいても、文章の上手さにおいても、その二人に比肩する人は出ないでしょうって勝手に思っていました。しかししかし、これは、明らかに、佐々木・今野レベルのケーサツ小説です。出だしはやや苦戦しましたが、70ページを過ぎたあたりから、もう、やめられないとまらない状態。途中で、日明恩ってどんな人なんだろう??と思い、経歴を見てみてびっくり。だって「日本女子大学卒」とあります。つまり、日明恩(たちもり・めぐみと読むそうです)は女性!? そんなことは微塵も感じられない筋立てに、ディテールの描写。しかも、潔い文章。女性作家で、パステルカラーの表紙に、文章までパステルカラー(っぽい印象)で「つらいけど、でも、頑張るの。私、負けないっ」みたいな話を書いている人はいっぱいいますが、こういうカッコイイ文章書く人って、あんまりいませんよね。すごい、好きです!!
 
その上、この小説にはベイエリア署の安積とか、新宿鮫とか…有名ケーサツ小説の主人公たちが友情出演(正確には「上司が安積さんだったらよかったのに」とか「自分は鮫島タイプではないから…」という感じで言及)しているのですが-これって、なかなか、勇気の要ることですよね。レベルが天と地ほども違っていたら、絶対に、こんな引用はできるはずがありません。というか…日明恩は、明らかに、自分の小説が同等以上のレベルであることを自覚して引用していると思うのです。決して、自信過剰ではなく、正しい、自覚なのです。そこがまた、潔く、カッコイイ!

 ストーリーは…一人の容疑者を池袋署の強行犯係と厚労省の麻取が取り合うところからスタート。役所感のセクショナリズムや、警察内部の階級社会の描写もとてもリアリティあり。しかも、準主役の潮崎くんのキャラも立っていて、これって、絶対、2時間ドラマにしたくなっちゃうプロデューサーがいるのではないかと思います。多少、「そんな都合のいい偶然って重なります?」と言いたくなるようなところもなくはないけれど…それをいったら、そもそも、ミステリー小説なんて成立しなくなっちゃいますからね。あと、終盤、犯人が逮捕される前から、岸壁でペラペラしゃべりまくるのは、ちょっと、ベタかなぁと思いました。まるで、火サス。だいたい、人気の無い海岸とか、断崖絶壁の上とかで、犯行に至る経緯や手口を語るって不自然。でも、そういう、重箱の隅のような話は置いておいて、とにかく、この小説、イケてます。超オススメです。