おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「サウス・バウンド」 奥田英朗

2008年03月09日 | あ行の作家
「サウス・バウンド」 奥田英朗著 角川書店 (08/03/09読了)

 ああ、面白かった! 元・過激派の父に振り回される一家のハチャメチャ生活物語。子どもが主役のストーリーって、あまりに好きになれない(というか、歳が離れすぎていると共感できない…)のですが、これは、違和感なく読めました。ストーリーテラーは息子二郎クンなのですが、二郎だけの物語ではなく、元過激派の物語であり、妻さくらの物語でもあり、姉洋子の物語でもあって、子どもが主役であることを忘れてしまうような厚みがありました。

 豊川悦司&元宝塚女優(顔はわかるけど名前が思い出せない)で映画化されていましたね。その時は、何のキョーミもなかったのですが…今、思うと、豊川悦司って、絶対、ハマリ役!! 傍若無人なアナーキストって雰囲気がよく出ています。でも、いくら、アナーキストとはいえ、現実世界では、ここまでハチャメチャはありえないよなぁ-というぐらいハチャメチャ。子どもが小学校に通うことにまでイチャモンつけるのはやり過ぎのような気もするけれど…でも、“平均的”から外れるのが恐くて、堅苦しい思いをしながら平均であろうとする私たちの、密かな願望を代行してくれているのかもしれません。

 それにしても、奥田英朗って、面白い人です。なんか、作風が定まらないというか…色々な引き出しのある人なんですね。「空中ブランコ」や「インザプール」を書いた人と同一人物とは思えません。でも、やっぱり、私的にナンバーワンは「空中ブランコ」です。変人・伊良部に遭遇した時のショーゲキを超えるものはなかなかないでしょうね。