おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「むかしのはなし」 三浦しをん

2008年03月28日 | ま行の作家
「むかしのはなし」 三浦しをん著 光文社文庫 (08/03/28読了)

 危うく今年2冊目の途中棄権をするところでした。頑張って最後まで、読みましたが…しかし、私にとっては、全く、意味不明。もしかしたら、面白い話なのかもしれませんが、素人には抽象画や前衛舞踊の良さなんて簡単にはわかりませんよね。なんとなく、そういう理解不能のものを見せられたような-そんな気分なのです。

 7つの短編の冒頭には、それぞれに、「かぐや姫」や「天女の羽衣」など日本の昔話が掲げられています。まず、第一段階として、昔話と短編の関係がしっくりとは理解できないのです。下敷きにしているのであろうと確信が持てるほど共通点があるわけでもないし…。そして、第二段階として、7つの短編の関係も理解できないのです。どうも、それぞれの話には関連があると推察されるのですが、その関連が、ストンと胸には落ちてこない。巻末の解説には、「読むための理論に照応する強度を備えた作品」「それら批評理論さえもメタ物語化し包含する運動に支えられた、物語のための物語なのである」とか書いてありました。ストーリーが意味不明なら、解説はもっと意味不明。

 って言うか、フィクションにとって本当に大切なことは、「読むための理論に照応する強度を備えて」いることではなくて、読んで、素直に面白いことなんじゃないでしょうか?
この物語には、「仏果を得ず」や「風が強く吹いている」で味わった面白さが、致命的に欠けていました。