おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「邪魔」上・下 奥田英朗

2008年03月03日 | あ行の作家
「邪魔」上・下 奥田英朗著 講談社文庫 (08/03/02読了)
 
 今日は「上巻」だけで終わりにするつもりだったのです。しかし、完璧に、ハマッてしまいました。誘惑に負けて、「下巻の出だしのところだけ読もっかなぁ」と自分に言い訳しながら読み始めたものの、一章読むごとに「あと、一章だけ」と言い訳を重ねて、ついに読了。これまで「空中ブランコ」や「マドンナ」などの短編集を読み、「天才的短編作家」と勝手に称号を与えていました。だから、逆に、長編には大して期待はしていなかったのです。実際、冒頭からチーマー3人組のオヤジ狩りの話が展開していくところは、ちょっと退屈で「ガキんちょが主人公の物語なんてツマンナソウ」とやや冷めた気分でした。

 ところが、上巻の三分の一を過ぎた辺りから、俄然、面白くなってきました。平たく言えば、東京都下にある自動車部品メーカーの支社の放火騒ぎから、犯人が逮捕されるまでの物語。追い詰める刑事は主役級ではあるのですが、唯一の主役というわけでもなく…準主役が入れ替わり立ち代り登場し、同じ物語を、別の視点で何度もレビューしながら進んでいくような感じでした。しかし、決して、退屈というわけではありません。最後まで、ワクワク感が止まりませんでした。

 しかし、唯一、残念なのは、もしかして、登場人物の誰にも、明確な救いがもたらされていないということ。我侭な私はベタなハッピーエンドにはケチを付けたくなるものの、でも、救いがない結末っていうのもやりきれないのです。というか「で、恭子はどうなったの?」「2人の子どもはどうするの?」「九野は再婚するの?」-と疑問がたくさん残ったまま、忽然と終わってしまって、ちょっと、肩透かしくらった気分。でも、それは、作者が、ちょっとぐらいハッピーな結末を勝手に妄想する裁量を読者に与えてくれたものと-と勝手に判断することにします。

 次は、ちょっと、柔らかモノを読みたい気分。読んでいる間中、テンション上がった状態のままで、やや疲れました。