おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「幕末あどれさん」 松井今朝子

2008年03月12日 | ま行の作家
「幕末あどれさん」 松井今朝子著 PHP文庫 (08/03/11読了)
 
 読み応えありました。600ページ余の分厚い1冊。「一気に読めました!」と言えるほど軽くはないのですが、でも、ぐいぐいと物語の中に惹きこまれていって、気がついてみたら読み終えていたという感じです。

 「アドレサン」はフランス語で若者という意味だそうです(大学の第二外国語はフランス語だったけど、全く、記憶にない言葉…。)まさに、タイトル通りの幕末の青春群像劇。武家の次男に生まれたがために、家督を継ぐこともできず、武士としての誇りと忠誠心の持っていきどころがなくてもがく2人の“あどれさん”。一人は歌舞伎の作家に弟子入りし、町人同然の生活を送る。もう一人は陸軍に志願。何の接点もない道を歩む二人が、大政奉還、江戸幕府の終結という政治体制の大激動によって引き寄せられていくのです。正直なところ、幕末モノには何の興味もなくて一冊も読んだことはないし、高校の日本史の授業も実質・昼寝時間扱いだったので、幕末に関する知識はゼロ。でも、史実というよりも、歴史の波に翻弄される普通の若者たちにスポットを当てているので、それほど苦戦せずに読むことができました。それぞれの人生は、決して、ハッピーな方向に進んでいったわけではないけれど、でも、物語の最後の最後、ささやかな救いがあってよかった。

 ちなみに、松井さんの拍さんシリーズ(「一の富」などの並木拍子郎モノ)も、歌舞伎の作者に弟子入りするお武家さんを主人公にしていますが、こちらは、幕末あどれさんとは全く赴きを異にする軽妙な文章。疲れた頭をほぐしたい時におススメです。
 
 幕末あどれさん-ドラマ化したいと思っている人いるだろうなぁ…。2時間枠では足りないので、年末の「2日連続3時間」みたいなところですかね。2人のあどれさん-織田裕二以外の配役でお願いします!