< 俳句と温泉 >
草笛の 音より澄みし 空の蒼
恥ずかしながら、高校生のころにわたしが初めて作った俳句である。とりあえず
作りましたというような、なんとも情景の浮かばぬ味わいの無い句だ。宿題だった
かもしれない。「草笛の 音より清し 空の青」と、担任の先生に変えられて学校
の文集に載せられた。
路傍(みちのべ)に 光あつめて 此土(しど)の華
守り守りて 咲かむとするか
よせばいいのに調子に乗って、わけのわからない短歌みたいなものも、初めて作
ったりしたのだった。
半年ほど凝って、かなりな量の句や歌をノートや教科書の余白に作ったりした
が、あまりにもジジイ臭いなと気づきパッタリやめてしまった。書いたものはすべ
て散逸したが、さすがに最初に作ったものは忘れないものである。
熊本は日奈久温泉の入り口で、思いがけず、放浪漂泊の俳人「種田山頭火」の彫
像をみつけた。
分厚い眼鏡、菅笠に法衣、杖、頭陀袋に地下足袋の行乞の風体である。
なにか、とても懐かしかった。
山頭火(さんとうか)を初めて知ったのは高校生のころで、家にあった何冊かの
背表紙に「山頭火」と書かれており、なんて読むのだろうかと、手にとって読んで
みた。
うしろ姿のしぐれてゆくか
まっすぐな道でさみしい
分け入っても分け入っても青い山
へえ、こんな形式にとらわれない自由な俳句もあるんだ。しかも、きわめて簡明
な言葉を選んでいる。切り取られた情景が浮かぶ。
うーん、凄い。感心して、心底唸ってしまったものだ。
この三句は、そのとき頭に刻み込まれて忘れられない。
こんな遠い温泉地で再会するなんて思わなかったが、そういえば、熊本は山頭火
の第二の故郷であった。第一の故郷は山口県だ。
山頭火は、酒好きの温泉好きである。
温泉を書いた山頭火の句を探してみた。
いちにち風にふかれて湯のわくところ
湧いてあふれる中にねている
たしかに、温泉好きであったらしい。なれば、同好の士、いや師であろう。
ここ日奈久には、現存するらしい木賃宿に三泊ほどしたようである。
山頭火翁を偲んで、わたしもさっそく温泉にはいることにした。
日奈久の奥まったところにある、「幸丘」というすこぶる歴史のありそうな旅館
に決めた。元湯という文字にもググッと惹かれた。立ち寄り入浴、500円。日奈久
温泉は、弱アルカリ単純泉ということだが旅館の入り口を開けたら、プ~ンと硫黄
の匂いがした。
タイル張りの古い湯殿は、ひとりには贅沢すぎる。元湯だからだろうか、大好き
な硫黄の匂いのする濃いお湯が、あふれてタイルの上を撫でるように広々と流れて
いる。
身体を沈めると、ザザ~と大量のお湯がタイルの淵に向け殺到する。ああ贅沢の
限り。
「九州に来て、よかった。ううー、ほんと、生き返るぜえ」
九州第一日目の昨日は、久留米の薄い、たよりない温泉だったのだ。
あまりに、いいお湯のためにあがるタイミングが難しい。難しいのがまた嬉し
い。
そうだ。いまの気分を山頭火翁の句を借りていえば、こうなる。
ありがたや熱い湯のあふるるにまかせ
日奈久温泉、来てよかった。
草笛の 音より澄みし 空の蒼
恥ずかしながら、高校生のころにわたしが初めて作った俳句である。とりあえず
作りましたというような、なんとも情景の浮かばぬ味わいの無い句だ。宿題だった
かもしれない。「草笛の 音より清し 空の青」と、担任の先生に変えられて学校
の文集に載せられた。
路傍(みちのべ)に 光あつめて 此土(しど)の華
守り守りて 咲かむとするか
よせばいいのに調子に乗って、わけのわからない短歌みたいなものも、初めて作
ったりしたのだった。
半年ほど凝って、かなりな量の句や歌をノートや教科書の余白に作ったりした
が、あまりにもジジイ臭いなと気づきパッタリやめてしまった。書いたものはすべ
て散逸したが、さすがに最初に作ったものは忘れないものである。
熊本は日奈久温泉の入り口で、思いがけず、放浪漂泊の俳人「種田山頭火」の彫
像をみつけた。
分厚い眼鏡、菅笠に法衣、杖、頭陀袋に地下足袋の行乞の風体である。
なにか、とても懐かしかった。
山頭火(さんとうか)を初めて知ったのは高校生のころで、家にあった何冊かの
背表紙に「山頭火」と書かれており、なんて読むのだろうかと、手にとって読んで
みた。
うしろ姿のしぐれてゆくか
まっすぐな道でさみしい
分け入っても分け入っても青い山
へえ、こんな形式にとらわれない自由な俳句もあるんだ。しかも、きわめて簡明
な言葉を選んでいる。切り取られた情景が浮かぶ。
うーん、凄い。感心して、心底唸ってしまったものだ。
この三句は、そのとき頭に刻み込まれて忘れられない。
こんな遠い温泉地で再会するなんて思わなかったが、そういえば、熊本は山頭火
の第二の故郷であった。第一の故郷は山口県だ。
山頭火は、酒好きの温泉好きである。
温泉を書いた山頭火の句を探してみた。
いちにち風にふかれて湯のわくところ
湧いてあふれる中にねている
たしかに、温泉好きであったらしい。なれば、同好の士、いや師であろう。
ここ日奈久には、現存するらしい木賃宿に三泊ほどしたようである。
山頭火翁を偲んで、わたしもさっそく温泉にはいることにした。
日奈久の奥まったところにある、「幸丘」というすこぶる歴史のありそうな旅館
に決めた。元湯という文字にもググッと惹かれた。立ち寄り入浴、500円。日奈久
温泉は、弱アルカリ単純泉ということだが旅館の入り口を開けたら、プ~ンと硫黄
の匂いがした。
タイル張りの古い湯殿は、ひとりには贅沢すぎる。元湯だからだろうか、大好き
な硫黄の匂いのする濃いお湯が、あふれてタイルの上を撫でるように広々と流れて
いる。
身体を沈めると、ザザ~と大量のお湯がタイルの淵に向け殺到する。ああ贅沢の
限り。
「九州に来て、よかった。ううー、ほんと、生き返るぜえ」
九州第一日目の昨日は、久留米の薄い、たよりない温泉だったのだ。
あまりに、いいお湯のためにあがるタイミングが難しい。難しいのがまた嬉し
い。
そうだ。いまの気分を山頭火翁の句を借りていえば、こうなる。
ありがたや熱い湯のあふるるにまかせ
日奈久温泉、来てよかった。
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