温泉クンの旅日記

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続・二日市温泉 福岡・筑紫野

2012-02-05 | 温泉エッセイ
  <続・二日市温泉>

 西鉄の二日市は、福岡県のなかでも誠に便利なところに位置している。



 出張であれば、博多のオフィス街の中心である天神まで二十分、久留米まで十五分しか掛からない。
 観光となれば、天満宮や美味しい<梅ヶ枝餅>の大宰府までものの五分、<舟遊び>が楽しめる水郷の柳川も三十分ほどの距離だ。
 しかも嬉しいことに千三百年前の奈良時代開湯の、万葉集にも記されているほどの由緒ある温泉もあり、二日市は「博多の奥座敷」ともいわれている。



 二日市温泉の旅館のひとつである「大丸別荘」は昭和天皇、中国の最高指導者であった江沢民、国民的歌手の美空ひばりらにも縁があるという、いかにも格式ある宿である。
 なぜかわたしも一度だけ泊ったことがあるので、とても懐かしい。そういえば<大丸別荘>だが、この次には「一人ではなく」訪れると決めていたのだった。だからまあ、今回はいいか。

 わたしも今夜の宿「大観荘」にチェックインして荷物を部屋に置く。低料金だが、部屋は広めであった。
 身軽になると、まずは共同浴場に向かうことにした。
 共同浴場は「博多湯」、「御前湯」の二軒があり、日帰りでも温泉を楽しめる。
 二軒の浴場は道を挟んで向かいあっていた。



 さてどちらにしようか迷ったが、建物周りの雰囲気で「御前湯」のほうを選んだ。浴室はまずまずよかったのだが、たぶん温泉は残念ながら循環だろう。
 出てから気がついたのだが、ここを訪れた夏目漱石の歌碑があった。
     温泉(ゆ)のまちや 踊るとみえてさんざめく



「博多湯」に入りなおそうかと一瞬思ったが、眠りが足りない身体である。体力を温存しておくことにしていったん宿へ戻る。
 浴衣に着替えて楽になると、いったんすこし昼寝をすることに決めた。
 眠りに落ちやすくするために、宿の内風呂でもうすこしだけ疲れることに。



 湯は優しく、ほぼ徹夜で車を走らせ続けた身体をじんわりとほぐしてくれる。
 ついでだから、もうひとつの岩風呂へも入っちゃう。



 部屋に戻って、軽く一杯ひっかけて二時間ほど仮眠した。

 高血圧らしく二時間ほどで目がパッチリと覚めガバッと起きて、またも着替えると夕方のまだ明るい温泉街をそぞろ歩く。
 温泉街にある酒場の営業開始まではもうすこし時間があるようで、駅の方は歩いてみる。
 途中で、なんとも趣のある店を発見した。



 つかの間逡巡するが、がらりとガラス戸を開けて店にはいる。なかに、客はだれもいない。壁際の本棚には漫画がぎっしりと並んでいた。
 テーブル席に座り、奥から出てきた年配の女性に常温で酒を頼む。
 すぐに、酒の入ったちろりと、コップが届いた。



(ここは食べるのがメインで、ずっと酒を呑む雰囲気ではない・・・な)

 若主人みたいなひとに、お代わりとお新香を追加する。この店は、母子で切り盛りしているのだろうか。
 壁のメニューに書かれた値段は驚くほど良心的なものだ。三十種類くらいあるメニューで五百円を超えるものは四つしかなかった。
 メニューのなかから無難そうな冷麦を選び、ついでにもう一杯お代わりすることにした。いかん、昼がうどんだからかぶってしまったな。冷麦だが、メニューの横に掛け軸のようなものがあり「とても美味しい 当店の 釜上げ冷し麦 をどうぞ」と書いてあった。

 ようやく若い客がはいってきて、ほっとする。地元らしいその青年は漫画本を選びながらカレーライスを注文した。



 到着した冷麦の洋がらしと麺の量の多さにびっくりしていると、ついで運ばれていく青年の頼んだカレーの盛りの良さも相当なものだった。たしか大盛を頼んではいなかったはずだ。安くてしかも腹がいっぱいになる料理を提供している店なのである。

(さて、明日は日田にちょっと寄って、その次は苦手な吊り橋に挑戦か・・・)

 なるほど美味しいよく冷えた冷麦を半分ほど食べたところで、さらに酒を追加する。漫画を読みながら食事をしている客がいるので、なんとなくこの店の雰囲気に馴染んできた。
 それに昼寝とはいえ熟睡したようで、だいぶ体力が回復してきたようである。

  →「ウエストのうどん」の記事はこちら
  →「大吊橋に挑戦」の記事はこちら

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