温泉クンの旅日記

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東京駅、天上の晩餐(1)

2017-03-15 | 食べある記
  <東京駅、天上の晩餐(1)>

 今回だけ特別に<IWGP風>の文章で書いてみることにしたよ。

 場違いで居たたまれなかった経験ってあるかい。その日のおれがそうだったんだ。
 依頼されたトラブルをZボーイズの手も借りずにあっさりシュートしたら、依頼人が報酬はいくらかと訊くから固辞すると、よほど借りをつくりたくないのかせめて食事くらい奢らせてくれという。それならまあいつかそのうちにと曖昧に答えたのだが、先週メールで待ち合わせ場所を指定してきたのだった。

 寄合から帰ってきたおふくろに店番頼むと、前掛けをはずしウィンドブレーカー羽織ると店を飛び出し丸ノ内線に飛びのった。まだ待ち合わせ時間には余裕があったけどおれは人を待たせない主義だからな。



 百年前の姿に復元(再建)された、赤瓦三階建ての豪壮華麗な洋式建築の丸の内側東京駅。
 おれには縁がなさそうな、その前に聳えたつ摩天楼の左側の丸ビルが待ち合わせ場所だ。



 三十五階はさすがに景色がいいが、高所恐怖症なおれにはちょっと微妙だ。



「お呼び立てして申し訳ありません。こちらです」
 今日は私服でない依頼人。英国製だろう高価そうな服装。履いている靴の片方で、おれの身につけているすべてをまかなってもたっぷりお釣りがきそうだ。



(モリタ屋・・・か)



 一瞬、安心した庶民的な名前も一歩入って大違い、さりげなく見回すと客は紳士淑女ばかりで下町ふだん着のおれの心臓がちょいと心拍数があがった。
「コートをお預かりします」
 預けるようなシロモノじゃないんだけど、逆らう気力もおきない。

 案内されたテーブルは皇居に面した角側でこの店で一番いい席のようだ。依頼人は常連かもしれない。
 おれが持ってきたバッグを窓際に丁寧に置き、しかも調理で汚れないように白い布で覆ったのにはおどろいた。

 値踏みするような鋭い視線を感じて、みると隣の席のカップルの綾瀬はるか似の女性からだった。わかってるって、どうせおれは高級店の特等席にはまるで似合わない、場末の安い焼肉屋だとか吉牛のカウンター席がどんぴしゃの客だけどな。



 天上の晩餐は、旨そうな前菜と華奢なフルートグラスのスパークリングワインの乾杯から始まった。


   ― 続く ―



    →「米沢、米沢牛特撰ロースランチ」の記事はこちら
    →「平塚駅前、魔境のラーメン屋」の記事はこちら

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