1
朝ご飯は食パンをトーストしてもらった、トースターで。ジャムと蜂蜜を塗ってもらった。1枚だけ。と、茹で卵1個。冬瓜と韮の花穂の入った味噌汁も。我が家の畑で獲れたメロンを冷やしてあったのを、数切れ。おいしかった。
2
お昼は素麺を茹でてもらった。茹で麺を氷水に浮かべた。麺汁に焼き胡麻を加えたお椀に掬って、つるつるつると音を立てて啜った。暑い日は冷やした麺に限る。おいしかった。
(今夜は薩摩芋の蔓のキンピラ。鰯の煮付けの残り。食後の果物の、畑の西瓜数切れもつくだろう)
3
有り難い。おいしかった、おいしかったと言って食事を頂けることを感謝する。食べられる健康を感謝する。体調を壊していれば、喰いたいという気も起こらない。食ってもおいしくない。
4
食は基本だ。老人だから少しでいい。ガツガツしないでいい。医者も言う、「腹八分ですよ、いいですか」とアドバイスする。血糖値が高いので、ご馳走は食えない。たらふくは食えない。これでいい。
5
お爺さんの楽しみは、しかし、食うことだ。「今夜のおかずは何?」と聞く。幼稚園生なみだ、まさしく。お爺さんの楽しみの60%~70%くらいだ。貴重だ。快便の楽しみが10%。快眠の楽しみが10%。残りは10%しかない。
6
静かな山里に住む80歳尾お爺さんの、残りの楽しみは10%。楽だ。あんまり要求しなくてすんでいる。(要求したところで、実現率は極めて極めて極めて薄いから、手控えすることが多い) だがこれでいい。