長篠落武者日記

長篠の落武者となった城オタクによるブログです。

この中に一人、嘘をついている人がいます。

2013年08月23日 | 落城戦記
この中に一人、妻子に嘘をついて参加している人がいます!


桜の木の下には死体が埋まっている、と、言ったのは梶井基次郎。
そんな綺麗な話ではありません。

城を巡る旅「城旅」をやってるコアメンバーで、年に数回遠方へ泊付き城旅を行っています。
今回は肥前遠征。

城旅の前々日、メールが来ました。
何か、と、思い読んでみると、
「・・・我が隊はスーツで向かうかもしれぬ。・・・」(原文どおり)
との文言が。

「スーツ?」

このクソ暑いお盆の真っ只中に名古屋から佐賀へ行くのに、スーツ?
普段、クールビズでほとんど出番のないスーツ?
謎は深まるばかり。

ただ、文面から推測するに、家族を欺き内密に城旅に出かけようとしている様子。
しかし、そんな危険を冒してまで何故参加するのか?いや、そんな危険を冒すほどの旅じゃないだろう。
他の者は、皆そう思った。

とはいえ、それぞれの家庭には、それぞれの事情がある。
深く詮索しないこととした。

そして当日。
彼は普通の服装で現れた。

『あ、なんだかんだで家族の許しを得たんだな。』
皆、そう思った。

しかし、そうではなかった。
彼は言った。

「実家に寄って着替えてから来た。」
「え?でも、妻にはどうやっていったのだ?出張で2泊3日だと言ったのか?」
「いや、今日は研修で講師をするので準備がいるから早く出るといって出てきた。」
「???今日の夜はどうするんだ?しかも、明日以降はどう言って来たんだ?」
「明日からは元上司の信州にある別荘に誘われて泊まるといってきた。お盆で渋滞が嫌だから真夜中に出立するため職場から皆で行くといってきた。」
「嘘くせぇ。本当に奥さん騙されてるのか。本当はどんな嘘言うのか面白がって聞いてるだけじゃねぇか?」
「いや、うちの妻は信じている。」

我々は、そんな嘘を信じる人がいるのか半信半疑だった。

「そういう嘘って、一つ矛盾点が出ると全部崩壊するよね。」
「大丈夫だ。矛盾を感じるようなタイプではない。」

本当かよ、と、思いながらもまぁ、バレて修羅場になったらそれはそれで面白いよね、ということで、旅立った。
吉野ヶ里遺跡


肥前名護屋城


唐津城、佐賀城


大砲に吹き飛ばされる人


と、2泊3日城三昧を堪能した我々だった。これらの詳細な模様は別の日にご報告します。
旅も終わり、祭りの後の寂しさに浸っているとき、一人だけ緊迫感を漂わせている男がいた。

妻子を欺いて旅に出かけてきた彼だった。

彼は今、肥前ではなく信州にいることになっている。
初日の金曜日は仕事にでかけ、そして、土曜日と日曜日は元上司の信州開田高原にある別荘へ、昔の職場仲間と遊びに行っているのだった。

彼はその妄想旅行の組み立てを行っていたのだった。
iPadを見ながら呟く。
「うーん、名古屋着が22:00だとすると、渋滞してたから・・・って、なんでお盆の最後なのに、ほとんど高速渋滞してないの!」


「今から名古屋まで2時間半。と、いうことは、まだ、開田高原にいるんだよね。」
と、聞くと
「そうだなぁ・・・。中央道ではなく下道19号を使ったことにする。」
と、いいだす。

「そんなん、普通ありえんだろう。大の大人が車に乗って、高速使わんなんてありえんぞ。」
「いや、高速代が勿体無かった、と、いう。うちの妻は浪費を嫌うから、通用する。」
「そんな問題なのか・・・?」
「うむ。うーん、このあたりなかなか観光スポットがない。とりあえず御岳登ったことにする。上司でどうしても好きな人がいて、断れなかったといえば良い。」
「夏だって御岳はさぶいぞ。長袖とか防寒着とか一切持ってないじゃん。いくらなんでもそれは嘘だとバレるぞ。」

「いや、うちの妻は信じる。」
彼は言い切った。

「今日は、ここの蕎麦屋で飯食ったことにしよう。ここはその昔立ち寄って食べ放題だった。だから5枚ざるそば喰ったことにしよう。うちの妻は倹約家だから、食べ放題の蕎麦屋に今度連れて行ってやる、と言えば大喜びするはずだ。」
「5枚っ?!そんなに喰えるか?!」
「・・・、3枚にしとく。」
「3枚じゃ普通に喰えるぞ。」
「よ、4枚・・・。その後、ここの温泉に立ち寄ったことにしよう。ここの温泉はいくらだ・・・。なんと、HPに値段が書いてない!いくらなんだ。600円か400円か?」
「別にいくらだっていいじゃん。適当な金額言っとけば。」
「だめだ、そういうところはうるさいんだ。後で連れてった時、金額が違うと困る!」

我々はあっけに取られた。
嘘にリアリティを求めているのかもしれないが、そんな細かいところを言う必要ないじゃん・・・。
しかも、
「この施設はJAF割が使えるのかな。」
とか調べだす。

どうやら、奥さんはお金に関しては相当シビアなようで、そういったところにディテールを求めることで乗り切ろうとしているらしい。が、他のメンバーはむしろ墓穴を掘るのではないかと思った。
むしろ、彼の嘘話を聞けば聞くほど笑えて仕方がない。

「て、いうか、ワシこれブログに書いても、作り話だと信じてもらえないかもしれない。」
私は言った。

結果的にJAF割が適用されて500円で入浴できるらしい。
それで彼は満足していた。

しばらく新幹線に乗っていると
「そろそろ恵那SAに到着したころだ。一度家に電話を入れる。」
「メールの方が安全じゃないか?アナウンス入ったら終わりだぞ。」
「電話しないとうるさいのだ。今、駅を出たし、しばらく新幹線のアナウンスも入るまい。」
と、彼は言った。

彼の妄想旅行では、残り時間から逆算して、今恵那SAに到着したらしい。
『今恵那SAで・・・。』とか言い出すのだろう。
が、もし電話に「今、新大阪を出て・・・。」などのアナウンスが流れたら全てが終わる。
デッキには席にあぶれた客がたむろっており、話し声だった聞こえよう。
しかし、彼はアナウンスが入らなくなるタイミングを見計らってデッキへ歩いていった。
その彼の後姿を見ながら『アナウンスが入れば面白いのに。』と思ったのは言うまでもない。

そして、多分彼が電話をしているだろうタイミングに、突然車内アナウンスが流れ出した。
「この列車は、今、新大阪を出て・・・。」

マジか!?
この神的なタイミングで流れるか!
我々は思わず手を叩いて笑った。

万事休す。
彼の運命やいかに。

彼は戻ってきた。
「ばれたか?」
と、聞くと、なんと残念なことに、その時確かに電話をかけたのだが、奥さんは出なかった。そして、すぐ折り返しの電話が掛かってきたが、アナウンスが終わるまで出なかった。そして、アナウンスが終わったところで、改めて電話をして、事なきを得たのだった。

「残念・・・。」
我々は心底残念がった。
運の強い奴め。

そして、3人が旅の疲労度を顔に表している中、一人だけ緊張の面持ちで帰宅していく男がいた。
その後の彼がどうなったのか。

それは確認していない。

さて、次からは吉野ヶ里からご報告してまいります。

2 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-08-24 03:52:19
知ってるって。仕事じゃないの。
多分 (うらにわ)
2013-08-24 18:33:28
そうだと思います。

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