5日間に渡る関西方面での学校公演で、子どもたちの純粋で探求心にあふれた様子を見て…喜びに満ちた今週でしたが、夜遅めに帰宅してすぐに準備をして、今日は伊豆の国市の子ども創作能の公演でした!
朝6時、子ども能に毎回多大な貢献をしてくださっている笛のTさんとともに東京を出発。。それでも多少渋滞につかまりまって10時頃には今回の公演会場の沼津御用邸に到着しました。
沼津御用邸では何度も結婚式のお手伝いをさせて頂いたり、ぬえにはなじみの深い会場です。今回は「ジャパン・アート・フェスティバルin沼津」の一環として開かれている「第42回沼津御用邸記念公園 菊華展」に関連する和のステージイベントへの出演でした。
まあ、まずはステージの立派なこと! 毎年草月流華道の宗家が組み上げられるそうで、今回も現宗家の勅使河原茜さんの手による青竹を用いた巨大なオブジェのようなステージとなっていました。
子ども創作能の出演は午後の回で、今回はなんと2回公演です。本人は運動が苦手だそうで、それでも持ち前の声量を活かしてずっと地謡をリードしてきてくれたサラが、意を決して挑んだ主役の頼朝。先月、久しぶりに復帰を果たして、最高学年の6年生になっていた故に、さらに住んでいる地区の催しだったために急ごしらえに主役を勤めたユウが演じる準主役の山木兼隆。どちらもお役を勤めるには覚悟と努力が必要だったと思いますが、立派に、見事に演じきってくれました。


また今回は6月に参加したばかりの1年生の仕舞『玄象』があったり、さらにその中から何人かは源平それぞれの郎党役で切組を演じたり、盛りだくさんでもあり、そのために子どもたちも苦しんだ故の、成果が現れた舞台だったと思います。
6月に、いきなり参加者が倍増した 伊豆の国市子ども創作能ではありますが、正直、なかなか団結。。というか、そこまでもいかない、まとまりにさえ到達できない日々がありました。ぬえも何度か子どもたちに怒鳴って叱りつけたし。要は責任感が持てるか、というところなのですが、一人の身勝手が全体を瓦解させることだってあります。これをどう教えるかは、13年間子ども創作能の指導を続ける ぬえにも王道はありませんね。でも、ようやく今回、全員がまとまって 一つの舞台を作り上げる機運が醸成されたと思います。平家方の子どもたちが第1回公演で間違った謡を、2回目の公演では(ぬえが指摘を忘れていたにもかかわらず)自分たちで反省して修正してきました。そもそも、学校公演などで忙しいこの季節、子どもたちへの ぬえの稽古も今回は直前の稽古はかなわず、1週間前に稽古したのが最後だったのに。


今回はそれをふまえて…しかし終演後のミーティングでもあえて子どもたちに満点はあげずに、スタートに立ったばかりだ、と申し渡しました。厳しいようですけれども、大人数が団結して一つの大きな成果を挙げる、今回はその喜びが見えてきたばかりだと思うのです。今回は自分が主役でなくても、自分に求められている役割をきちんと理解して、最上のものを実現できて、はじめて舞台として大きな括りの全体が成立する、その喜びを見いだせれば十分に満足できるはず。保護者も含めて、それが見えてきたところだと思うんですよね。ブログでは「子どもたち」と書いておりますけれども、ぬえは彼らを「大人」として扱っています。
この意味で今回は、もう上演にもすっかり慣れた古参?の子どもたちと新人さんたちが、ようやく垣根なく同じ立場に立てたのではないかと思います。これなら ぬえもひと安心。
出来たから、それなら、と ぬえが上げてみる演技のハードルの高さ。それでも彼らは死にものぐるいで さらによじ登って来ますよ。あ、出来るか。それなら次はもう少し難しくするよ? 瞬時に曇る子どもたちの顔。…それでも嫌気が差して辞めた子は、過去13年間で皆無なんですよね。やり遂げた達成感。それに対する万雷の拍手と賛辞。…でも、人のために演じる喜びがわかってもらえれば、彼らはもう大人なのです。
先ほど諸手を挙げて誉めてあげなかった ぬえですが、いま、ここで褒め称えてあげましょう。よくやったね、みんな。最高の舞台だったよ!

